映画の一刻 ~日常とシネマの旅~ 第13便『ナイトクローラー』2015.10.31sat – 11.27fri @シネマ5bis

大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5
メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。
一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。
個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。

そして何より空間が素晴らしい。
そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。

今回の旅は、『ナイトクローラー』
どうぞ、お楽しみください!

大西明美さんへのインタビュー記事はこちら。

 

第十三便『ナイトクローラー』

 

いつもの「映画の一刻」は日常と映画(異空間)の間で書いているのですが、今回はテレビ(日常)の裏側の方。
意外に映画館の暗闇が似合う、傑作です。

ちなみに、テレビは好きですか?
ワイドショーは、毎日見ますか?
毎日毎日、何かしら事件が起きて、テレビ画面から映画のような映像が映し出されています。
毎日、仕事から帰ってくるとテレビをつける。
事故や殺人のニュースが入ってくる。世間はどんな出来事が起こっているのか、ニュースくらいは横目で見とこうかしら、と思いながらカバンをおいて部屋着に着替え夕飯の準備をしたりする。

そんな感じで何気無く、私たちの日常が平穏な仮面をかぶって通り過ぎる。

ーーーーーー

男は暗闇の中、金網を切っている。
それを警備員にみつかり、警備員を殴り倒して、ぐるりと続く金網を大量に切り取って盗み、板金工場のようなところの事務所に売りさばきに行く。
値踏みされながら渋々、金を得る。
その時、工場に経営者に「僕は勤勉で志が高い。僕を雇わないか。」と売り込むが「コソ泥は雇わない」と即答される。その言葉に変な笑みを浮かべたまま立ち去る。この男が主人公ルイス。

ルイスは帰り道、交通事故に出くわす。そこへ急停車した車からカメラを持って負傷者に近寄る男たちを目にする。そう、彼らが事件や事故の報道スクープ専門の映像パパラッチ〈ナイトクローラー〉だ。映像を撮ってテレビ局に売ると金になると聞いたルイスは早速、自転車を盗んで、警察無線を傍受する機器とカメラを手に入れる。

暗い部屋、テレビとパソコンだけが青白い光を放ってルイスの顔を照らし出している。
不気味だ。
夜、遅い放送の報道番組でさっきの事故現場の映像がスクープとして流れている。
ルイスはパソコンを操作し、事故や事件の情報をいち早く入手する方法など、いろいろなノウハウをネットから知識として得ていく。彼が口にする言葉は“もっともらしい正解”のように、表面的に響く。ネットからそのまま引っ張ってきたような正解。

そう、彼が見ている現実は、私とはまるで違う次元にある。
ルイスの気持ちは全く理解できない。
痩せすぎてギロギロした目玉が闇の中に光る。気持ち悪い。
私だったら絶対、こんな奴と食事なんて一緒にしたくない。
得体の知れない不気味さが、映画の中盤からどんどん膨らんでゆく。
惨たらしい映像が、高値で取引されて行く。
テレビ局の女プロデューサーとの取引が過激になってゆく。。。

ーーー

あー、ダメだ。ついていけない。
そこまでして。
人としてどうなんだ。
このルイスという男、どこを目指して駆け上がろうとしているのか。
全く共感できない。

ーーー

映画はどんどん深みにはまる。
見ている私も、共感できないと言いつつ、もう画面から目が離せなくなっている。
映画『ナイトクローラー』を見たら、教えてほしい。

このルイスは成功に向かっているのか、破滅に向かっているのかを…。

この男を生み出してゆく現代社会が、今の私たちが暮らす世界だということを実感させられる。
そして、ワイドショーを見て「こんな悲惨な事件が起きて、世間はどうなってるんだろう」とぼんやり思っている私たち、ひとりひとりが実はその映像を見たがっている。情報という名の、行き過ぎてしまうギリギリまでを見たがっているのだという現実に引き戻される。

私は、この映画の主人公に共感できないのではなく、共感しないように無意識に蓋をしているのではないかということに気がついて茫然とさせられる映画だった。。。悔しいけど、すごい映画だ。

 

『ナイトクローラー』
監督|ダン・ギルロイ
出演|ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン
配給|ギャガ
http://nightcrawler.gaga.ne.jp

【上映期間】
2015.10.31(土) – 10.27(金)

【上映時間】*11月7日(土)より上映時間変更
11:35〜1:41  13:55〜16:01  18:25〜20:31  20:45〜22:51

【会場】
シネマ5bis
大分市府内町3丁目7−7
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp

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