カモシカと青空 第十四話「本屋がなくなったら、困るじゃないか」11時間ぐびぐび会議 by カモシカ書店

2014年5月、大分市中央町に誕生したカモシカ書店
古本を中心としながら新刊も取り扱い、カフェとしても気軽に利用できる癒しの場。
手作りケーキやこだわりのコーヒー、水曜日のネコというフルーティースパイシーな珍しいビールもお楽しみ頂けます。
定期的に本だけに留まらない知的好奇心を刺激するイベントを開催。

そんなカモシカ書店の店主、岩尾晋作くんのコラム第十四話です。
オムニバス的に一冊の本を紹介していく人生の短編集。
どうぞ、お楽しみください!

岩尾晋作くんへのインタビュー記事はこちら。

なお、紹介されている本は実際にカモシカ書店で購入することができます。
※すでに売切れや非売品の場合もありますので、ご来店前にカモシカ書店へお問い合わせください。

 

第十四話「本屋がなくなったら、困るじゃないか」11時間ぐびぐび会議

「2days,4girls.」という小説があるが、これは2日間で4人の女性と関係を持つお話である。
私がやっていたのは「2weeks,4books」というもので語感は似ているが、言うまでもなく全く違う行為だ。
20代にしか伸ばせないものがある、とはよく言うが私もそう信じていて、とくに男の20代はスキルも経験も名前も金もないので世の中でのポジショニングが難しく、いろんなことに苦悩しながら自分の成長を信じるしかないのである。

前にカモ空で書いたシネアミ時代(23歳ぐらい。渋谷のミニシアターで働いていたとき)を私の青春の頂点とすると、そのあとのジュンク堂時代は私の修行時代で最も苦しく、そして充実していたように振り返ることができる。

当時私は中目黒の「COW BOOKS」に憧れていてそこで働きたかったので働かせてくれと4回ぐらい電話している。
オーナーの松浦弥太郎さんにトークショーのあと、おもむろに働かせてほしいと書いた手紙を渡したこともある。
正式に募集があって、履歴書を力みまくって送って、「今回は採用を見送ることに、、、」という携帯の留守電を聞いたときのショックは今でもよく覚えている。

あとは出版社の仕事をしたかったのでこれもいくつか履歴書を送り、新潮社だけ書類選考が通り、その後筆記試験にも受かり、面接に行ったときはもうガチガチに緊張していた。そして一次面接で落ちた。(はっきり覚えていないが、たしかそうだった)

そんなこんなを経てジュンク堂が拾ってくれたわけだが、私としては不本意とまでは言わなくとも、次善に甘んじる感はあった。
しかも仕事は思い切り裏方で、アルバイトが多く、次々と人が辞めていくような、辞めていく前提で動いているきらいさえある部署だった。

当初私は自分の境遇にとても不満で、不安で、惨めで、昼休みのたびに泣きそうで、昼食の後はいつもニーチェを読むことで、
生の苦痛を受け入れよう、耐え忍んで苦痛を創造の力に変えよう、と本当にほんとうに必死だった。

尊敬できる上司や同僚に出会おうと、他部署の人とコミュニケーションを取ることを心掛けた。
空いている時間に喫茶部門の仕事も手伝わせてもらえるように申し出た。
今では考えられないが、飲み会や集まりも積極的に参加してビールを注いで回ったものだ。

少しずつ自分や人や人生の扉を開いて回ると必ず道は現れるものである。
私はちゃんと今でも続く友情のある友人と上司に出会い、何人かの恋人にも出会い、業界の人とも繋がった。
自慢だが私の部署からこんなに枝葉を広げた人は少なくとも新宿店にはいなかったと言える。

当時自分で発見していちばん驚いたことは、ひと月というのは30日と考えるより、2日×15回と考えるほうが緊張感がある、というものだ。
昨日、今日、ちょっと怠けてしまったとしよう。
それを15回繰り返してしまうだけで、ひと月を無駄に過ごしてしまうということである。
だから私は上記の「2weeks,4books」というルールを自分に課した。

まあいいや。
どうでもいい話をしてしまった。
独立したい人には少しは参考になるかもしれないが、そういう人はこんなの読まなくても自分でどんどんやるもんね。

以上前置きが長くなったが、今回は『「本屋がなくなったら、困るじゃないか」11時間ぐびぐび会議』という本について書きたい。
これは出版・書店業界の業界本でもあるが、それ以上に好きなことして食っていきたい変人たちの狂気の饗宴であるとも言える。
みんな食うことに必死であるのと同じぐらいに、本と本屋が存続することに必死なのだ。
真剣な人たちの、必死で、ユーモアたっぷりの、血走ったまなじりを、それぞれの言葉から読み取るのは人生の喜びである。
人は、そのために死ねるもののために生きるのだ。
そのシンプルな原則を日常で感じ取ることは結構難しい。
だから読んでほしい、市場縮小の負け戦に、負け戦だからこその緻密な戦略と挑戦と、希望を見出そうとする人間どもの美しさを。

岩尾も本書に書きました。
どうぞよろしくお願いいたします。

「本屋がなくなったら、困るじゃないか」
11時間ぐびぐび会議
1,800円+税

 

 

ー カモシカ書店 ー

古本 新刊 喫茶

【営業時間】
11:00 – 22:00

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月曜日

【住所】
大分県大分市中央町2-8-1 2F

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【お問い合わせ】
電 話:097-574-7738
メール:info@kamoshikabooks.com

1件のフィードバック

  1. 本屋業界、大変なんですね。
    取次システムの無駄を打開できないしがらみがはまりませんでしたが、どのような業界でも同様の怠惰があるのでしょうね。工藤さんの「面倒くさがらないでやろうよ」の言葉が印象的でした。

    ★心に残った言葉
    街の求心力
    ★行ってみたい本屋さん
    ウィー東城店
    長崎書店
    ★幼少期のルーツから人物像をもっと知りたい方
    工藤秀之さん
    ★買おうと思った本
    村上さんのところ
    ★お話してみたい方
    佐藤友則さん
    序盤「図書カードで一冊ずつ購入」やたら親近感を覚えるなぁと思っていて、中盤ウィー東城店の形態にニヤニヤし、「例え不幸せになったって人に嫌われたって本を読まないよりは本を読む人生の方がずっと良い」の話をもっと深掘りしてくれないかな、と思っていた終盤に佐藤さん「本のある人生と本のない人生のどちらがいいかの話が印象的」「本から始めることがキー。街づくりにおいても中心になることができる」何か泣けてきました。

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