CATEGORY : ALL HITO KOTO MONO

RSS

日本語 / English

Web Magazine Yadorigi

再訪の対談。小野正嗣と岩尾晋作の場合。

《 カモシカと青空「再訪のとき」》《 再訪のひと「ルーシー」》《ケンチク部「大分県立美術館OPAM編」》に続く、「大分メディアコレジオ」関連企画、最後を締めくくるのは、

「再訪のとき」の著者、小野正嗣とカモシカ書店店主、岩尾晋作のスペシャル対談です。

2015年8月18日(火)、大分合同新聞朝刊にて発表された「再訪のとき」を受けての《 カモシカと青空「再訪のとき」》さらにそれを受けた小野正嗣はどう感じたのか?

岩尾晋作の様々な謎は明らかになるのか?

仕事への取り組み方や学生時代の話まで色んなことを語ってくれました。

サービス精神からつい喋り過ぎちゃうお茶目な一面も?

あの場にいた人達だけへのリップサービスということで割愛させて頂きます。

それでは

小野正嗣 × 岩尾晋作 スペシャル対談をお楽しみください!

Yadorigi編集長 一尾(以下、一尾)
:岩尾くんの書評(カモシカと青空)は読まれましたか?
 
小野正嗣(以下、小野)
:読みました、読みました。ありがとうございました。丁寧に。
 
岩尾晋作(以下、岩尾)
:いえいえ。
 
一尾:それを受けてどんな印象を受けましたか?
 
小野:僕も書評とか沢山書いてきたんですけど、書評を書くって難しいと思うんですよね。作品の中に書かれてある受け止め方っていうのは読み手によって違うわけじゃないですか。自分が感じたものを他人に伝わるように表現するっていう大変さがあって。単に書いてあるもののパラフレーズになるのではなくて、自分なりの視点とか、立場、切り口に基づいて作品の本質だと思われるところを表現するっていうんですかね。僕もそういうところを心掛けているので、誠実にっていうと上からに聞こえるかもしれませんが、真摯に作品を読んでくれて書いてくださったんだなっと思いました。ありがとうございました。
 
岩尾:いーえ。超苦戦しました。
 
小野:前半でね、ここが問題なんじゃないか?っていうのを指摘してくださって、そこを受けてこういう考え方が可能なんだよっていうふうに書いてくれていましたね。
 
岩尾:本当に読んでくれてますよ、これ!笑
 
一尾:笑
 
小野:前半に書かれてあることも正しいって思ったんですね。そういう読み方って出来ると思ったんです。大分市のPRとしての文章になりかねないっていう危惧ですね。非常にするどいなって、僕が言っちゃいけないんですけど。笑
 
岩尾・一尾:笑
 
小野:なかなか見事だなって思うのは、書評の構成ですね。前半では、作品について批判的な観点からいくつか要素を上げさせてもらうが、単にそれだけではない読み方が出来るっていうことを後半で書いてくれましたよね。作中の言葉を引用して、里親のお母さんの言葉を引用して、このお母さんは里子である主人公に対して「人は名前で呼ばなくちゃいけないよ。」って言ってるけど、実は作中には具体的に町とか駅とかホテルの名は書いてないよと指摘されていました。それから、やはり作中の「本当のことを書く必要はない」という大学の先生の言葉を引用しながら、「戯れる」と表現されていたと思いますが、この小説は、単なるPRになっておらず、もう少し違った読み方が可能であって、そこを読む側は楽しむことが出来ると書かれてありましたね。あの短い小説をそこまで丁寧に読んでくださっていた。そこは凄いエネルギーが、労力がかかることだと思います。僕が喋り過ぎているようだったら適当に切ってください。笑
 
一尾:笑。大丈夫ですけど、岩尾くんがずっと半笑いで、、
 
岩尾:いやぁすみません。忙しそうですね。
 
一尾:どうした!?岩尾くん、勢いがないやん?
 
岩尾:小野さん、謎解き行きましょうか!?(再訪のときで)指示された言葉はいくつくらいあるんですか?
 
小野:えっ、誰に?
 
岩尾:この言葉を使うようにっていう依頼はありました?
 
小野:ないない。
 
岩尾:全くないんですか?
 
小野:全くないですね、そこが非常に良かったですね。まずPRっていうのも全く意図はしてなかったですね。実際に大分駅を利用した時に驚いたんですけど、駅前で本当に物産展やってたんですよ。
 
岩尾:しょっちゅうやってますね。
 
小野:この光景ってとても面白いなって思って。それは書きたいなと。
 
岩尾:その時は駅ビルに泊まってたんですか?
 
小野:その時じゃないかもしれない。1月以降はしょっちゅう帰ってたので。駅ビルに泊まったのは6月かな。物産展に遭遇したのはそれよりあとですね。でも、そういうのをやってるんだっていうのと、駅前がすごく開けていたことに驚いた。あと駅ビルの上からの眺めがとても印象的でした。結局、僕は大分市をあんまり知らないんですよ。蒲江なので。内側からの視点から大分市は書けない。田島さん(BEPPU PROJECT)に案内してもらって。大分市内と大分市周辺を案内してもらったけど、そういうのを全部書くのは厳しい。新聞に載るっていうので枚数も限られてるし。
 
岩尾:一番最初、何て言われて仕事が来るんですか?
 
小野:仕事が来たのはPort Bだもんね? 高山明さん(PortB)という芸術家の方とご縁がありまして。大分でやるから、小野さん大分出身だから一緒にやろうよ、と声をかけてもらった。どういう形になるかわからないけれども一緒にやろうよ、と言われて。じゃあやりましょう! そのことは決まっていたから、賞は関係ないんです。そもそも高山明さん、林立騎さんとトイレンナーレには参加する予定だったんです。それで話し合いをしてる中で僕が小説を書いて、それをメディアで展開する作品にしようっていうことになった。で、小説を書かなければらないのに、大分市のことを何も知らない。大分市は通過する場所だったので。
 
一尾:玲子は小野さんの追体験をしてる?
 
小野:いま言ったように、大分市に住んでる人間の視点で書くのは厳しいだろうと思ったんですね。だから他所からきた人が大分市について知るという構成になった。せっかく僕も芸術祭に参加するのだから、主人公も芸術祭を観に来た人にしたらいいのではと思ったんです。でも、それがトイレンナーレとは書いてないですよ。芸術祭を観に来た人っていう形で書くと、それに関係するような場所も観れるだろうと。田島さんに案内してもらって大分市で僕自身が観たものとか、そこから得られた感想なり知見なり、そういうものを活用できると思ったんですよね。
 
岩尾:大分市について書くことは決まってたんですか?
 
小野:大分が日本における西洋音楽発祥の地だとか西洋演劇発祥の地であるとか、そういうことを踏まえて書いてほしいということでした。だから現代を舞台にする必要は全くなかったんですよ。少し古い時代を舞台にして書いてもいいわけです。Port Bがいろいろとリサーチしてくださって、林さん達から歴史関連の資料も戴きました。だけど、やっぱり舞台は現代になった。高山さんが観客参加型っていうのをずっとされてきたので、そういう枠組みの中に人物が入っていく書き方すると面白いんじゃないかなって思ったんです。だから「大分のことを書いてくれ」とか誰からも言われてないです。
 
岩尾:遊歩公園は歩かれたんですか?
 
小野:歩きました。雨の中ね。いろんなオブジェを観て、面白いなって。こんなとこ知らなかった!と思って。
 
岩尾:むしろ最初から全くご存じなかったんですか?
 
小野:全然。だから楽しかった。すごく楽しかった。
 
岩尾:じゃあ大分駅に久々に来て、「あぁ変わったな」って言うよりも、「あぁこんなとこだったかな」っていう感じですか?
 
小野:そう。だから初めてですよね。わー、おもしろーと思って。
 
岩尾:私もこの辺で生まれ育ったから、佐伯で高校時代を送って大学で東京じゃないですか?全くイメージ出来ないんですけど。私この辺で暮らしてて毎月毎月福岡に行ってたんですよ。都会に憧れて。本当に毎月毎月バスに乗って。っていう感じでこの辺にいらしてたりしなかったんですね。トキハ行こうとか。
 
小野:ないない。来たことない。
 
岩尾・一尾:笑
 
岩尾:本当ですか?
 
小野:来たことない。
 
一尾:佐伯からどこか行こうとは思わなかったんですか?
 
小野:思わないですね。高校のときは佐伯と蒲江の往復。
 
岩尾・一尾:笑
 
一尾:例えば服買いに行こう、とか。
 
小野:服買わないですもん、ジャージ着とけばいいから。
 
岩尾:何して遊ぶんですか?夏休みとか。
 
小野:自然はいっぱいありますからね。みんなと海行ったりとかね。友達と自転車漕いで遠いとこまで行ったりね。結構、楽しかったですよ。
 
岩尾:東京に住み始めてビックリしませんでした?
 
小野:パリ行った時よりも東京に行った時の方が驚きましたね。今思うと、佐伯も色々あるんですよ、一応。蒲江は面白かったなと思いますよね。蒲江の話とかすると東京の友達が喜ぶんですよね。で、わざわざ遊びに来てくれたりして。楽しい思い出があります。
 
一尾:一番オススメのスポットは?
 
岩尾:深島!
 
小野:元猿海岸なんかね、いいですよ。いま夏だからサーファーがたくさん来てますよ。
 
一尾:サーフィン出来るんですか? 佐伯で。
 
小野:えっとね、蒲江で出来ますよ。結構、良い波が来るらしいです。ぜひ! 僕はやらないんですけど。そんんわけで、この辺(大分市街地)は全然知らなかったんですよ。でも観光者の視点は重要だなっていつも思いますね。田島さんは土地の来歴もよくご存知で、色んな場所に連れて行ってもらい説明してもらった。その話を聞きながら、掘れば色んな場所に色んなことがあるんだな、と。それがあまりにも豊富すぎて、短編小説の文量ではとても書けないなっていう感じでした。
 
岩尾:改めて知ってどうでした?
 
小野:いや、面白いなって。
 
岩尾:移住したいな、とかないですか?
 
小野:大分市は別に住みたいとは思わないですね。蒲江かな。なんで大分市に住みたいと思わないかって言うと、大分はもうすでに豊かだから、人が居ないとこに行った方がいいじゃないかって。蒲江は本当に人が居なくて。笑。住むんだったら蒲江に行かないと悪いかなって。僕の知っている蒲江の人たちのなかにもいま大分とか佐伯に住んでる人は多いんですよ。僕の同級生なんかもね、県庁とかに就職すると、やっぱりお家は大分市になっちゃう。僕の実家のある集落はここも空き家、あそこも空き家、みたいになってる。戻ってくる方もいらっしゃるんですけどね、定年退職後に。だから全然、若返らない。笑
 
岩尾:この間、蒲江に行った時に車のもみじマークばっかで、みんな遅いんですよ!高齢化きてるわぁって。
 
小野:大分市では見えづらいですよね。
 
岩尾:見えづらい問題ですよね。佐伯市の方まで行っても、、根木青紅堂書店とか行くんですけど。やっぱ同じようにもみじマークだらけなんですよ。色んなお店はあるけど深刻やなぁって。
 
小野:岩尾さんは大分を文化的に活性化させたいという気持ちがあって帰って来られたんですか?
 
岩尾:半分はあります。
 
小野:今まで大分に無かったような書店を作り、イベントをやってみようってことですか?
 
岩尾:出来ることをやろうと思いました。これは何か私の中で中央線なんです。中央線の移設みたいなことをやってて。私がずっと西荻に住んでたから。まだ大分に根付いてるのか、根付いてないのか。1年とちょっとですから、よくわからない。大分っぽいところって言われると、あんまねぇなぁって自分でも思うんですよ。だから、わからんです。
 
一尾:大分っぽさがそもそも、、
 
岩尾:定義出来ないよね。
 
小野:カモシカ書店がある場所!みたいになったらいいんじゃないですか?
 
一尾:現に小野さんもここに連れて来られてるし。
 
小野:そうですよね、NHK大分の人に連れて来られましたね。笑。
 
岩尾・一尾:笑
 
岩尾:今、お住まいは東京ですか?
 
小野:大学で教えてますからね。立教大学です。
 
岩尾:池袋近辺にお住まいなんですか?
 
小野:僕は世田谷に住んでます。前の大学が明治学院大学で、その前は東大の駒場で助手をやってたこともあり、世田谷が便利だったんですよね。
 
岩尾:都心暮らし。
 
小野:都心じゃないよ。
 
岩尾:蒲江・パリ・東京以外でお住まいになったとこは?
 
小野:パリよりもオルレアンっていうところの方が長い。パリから電車で1時間くらい。フランスは8年弱いたんですけど。パリが3年弱くらいでオルレアンが5年弱くらいですか。それから東京に戻って来て。就職出来たのが東京の大学だった。そういう理由で東京に住んでいる。別の大学に就職してたら、違う都市に行ってたと思いますけどね。
 
一尾:今は教授として教えながら作家活動を?
 
小野:そうですね、はい。准教授なんですけどね。正直に言わないと。経歴詐称になっちゃうから。笑
 
岩尾・一尾:笑
 
小野:もともと研究者になりたい、と思って大学院まで行って。そういう意味では運が良かったですよね。人文系はいま規模縮小されて大変なんですよ。
 
一尾:素人的な質問なんですけど、芥川賞作家になったからといって本を書く依頼がどんどん来る訳でもないんですか?
 
小野:そういうことはないですね。僕は新人でもないから。編集者の人達との付き合いももともとあり、そういう人達との関係は全く変わらないですよね。ただ、芥川賞の場合は、今まで付き合ってた人以外から依頼が来ることが多いです。講演の依頼がすごく多くなりました。たぶん大学の先生として喋る仕事をやってるから講演が来やすいんでしょうね。これは明らかに受賞して以来増えましたね。書くこと自体の依頼は全く変わらないです。
 
岩尾:講演って例えば大分県立図書館で何について話すんですか?
 
小野:「『ふるさとを書く』ということ」でした。僕は蒲江をモデルにした作品をずっと書いてきたので、それを書くというのはどういうことなのか?っていう話をしてほしいといことでした。ふるさとを東京やフランスなど外に出たことによって発見したことがあったので、ふるさとを離れることの重要性と可能性について話しました。
 
岩尾:蒲江は内側からも外側からも。
 
小野:蒲江は、今は住んでる訳じゃないので、帰るたびに見違えるほど変わってるとこもありますし。だから半分は内側、半分は外側にいるって感じですね。
 
一尾:定期的に蒲江には帰ってるんですか?
 
小野:そうですね。もともと定期的に帰ってます。結婚して子どもが生まれても家族で。いい田舎だから、蒲江は。自然もあって魚釣りとかやったり、親切なおじさんとが船に乗せてくれたりするし。東京にいたらなかなかそういう体験出来ないじゃないですか?
 
一尾:岩尾くんがもし小野さんに講演の仕事を頼むなら何について話してほしい?
 
岩尾:フィーリングで話してもらうのが一番良いと思うので、、釣りの話とか。
 
小野:僕はあんまね、釣り好きじゃないんです。
 
岩尾・一尾:笑
 
小野:小さい時から魚ばっかり食ってるから。もう釣りをするのは嫌なの。子どもが「釣り行きたい!」って言っても、おれは嫌なんだけどって言ったりして。小さいとき散々やったからもういいよ!ってね。
 
一尾:そのために帰って来てるんじゃないんですか?笑
 
小野:だけど俺はいいから!って。笑。近所の人と行きなさい!みたいな。それでも結局は一緒に行ってやってるんですけどね。で、全然釣れないの。笑。今回のトイレンナーレで書くのは、たしかに芥川賞受賞後第一作だけど、書いてる側としてはそんなことはどうでもいいんですよ。頼まれた順番に書いてるだけだから。
 
一尾:タイミング的にたまたま、、
 
小野:なっちゃったんですね。
 
一尾:芥川賞受賞後第一作目は特別だったりしないんですか?
 
小野:どの作品も仕事も、皆さんそうだと思うんですけど真剣にやりますし、どれも大切ですね。今回は締め切りが決まっていて大変だった。小説については、僕はあまりそういう仕事しないんですよ。大学の仕事もあるので。いついつまでにって言われても大学の業務がありますからって。
 
岩尾:毎日、書かれます?
 
小野:毎日は書けないですね、今はあまりにもバタバタで。
 
岩尾:コンスタントに小説を書いてくのって楽しいですか?
 
小野:物によりけりですよね。あと局面によりけりですよね。自分が書こうと思ってる物は、だいたい上手く書けませんね。より上手く書けない時とまぁまぁ上手く書けない時とがありますからね。その時々で時間の流れ方の感じも違いますが、時間はとにかく限られてるじゃないですか。僕の場合、大学の仕事もあって、授業の準備もしなくちゃいけない。テキトーな授業をやるわけにもいかないですから。やっぱりそこに時間を費やされてしまうから、小説だけができるまとまった時間はなかなかないですね。
 
一尾:誰に書くかは意識するんですか?
 
小野:それもないですね。
 
 
岩尾:どう書くかは?
 
小野:どう書くかは常に考えます。どのように書くかは重要ですけど、誰に向かって書くかは考えないですね。僕のいる大学の専修では、エッセイとか詩、小説を書く授業もあるんです。卒業制作で小説やエッセイも書ける。卒業制作の審査のときに、何人かの学生が言っていたことが面白かった。彼らはクラスの友達とか先生の反応を考えながら書いたって言うんですよね。読者が誰かを具体的に想定していること自体に逆に驚きました。書かれたものは、色んな人に読まれることが前提としてあるわけじゃないですか。読者はむしろ不特定で見えないものものですよね。
 
一尾:「再訪のとき」に出てくる言葉そのままなんですね。そういう考えって子どもの頃に書いてた感想文とか作文のときから一緒ですか?
 
小野:誰かに褒められたいと思って書く訳じゃないですからね。そうでしょ? とにかく真剣に書くってことが重要じゃないですか? それが良いか、悪いかって、別に貶されたって書いた物の価値が落ちる訳じゃないし、褒められたって価値が上がる訳じゃない。結果として良いと言われたら「ありがとうございます」って思いますが、本当にそれが良いかどうかわからないですよね。褒めてくれる人もいれば、くそみそに言う人もいる。でも、どっちが正しいかわからないじゃないですか? くそみそに言ってる人が正しいこともあり得る訳だから。表現に関わってるあらゆる人達は作ったものを、小説だったら読者に、演劇だったら観客に委ねることしか出来ないんですよね。逆にすごく褒められたりすると、いいのかなって思いますよね。笑。本当かな、みたいな。
 
岩尾・一尾:笑
 
小野:ちょっと買い被られてるんじゃないの?みたいな。
 
一尾:国語の点数とかは良かったんですか?
 
小野:国語ですか? いや、普通じゃないですか? 今日、エフエム大分に出演してスタジオの外に出たら、高校の時の国語の先生に会ってビックリしました。笑
 
岩尾・一尾:笑
 
岩尾:出待ちですね!
 
小野:たまたまパークプレイスに買い物に来てたんですって。こういうことってあるんですよね。よりによって国語の先生ですよ。
 
岩尾:喜んでました?
 
小野:喜ばれてました。「小野くん、元気か?」って。「先生も元気ですかー?」って。懐かしかったですよ。高校の時に国語の成績がとくに良かったとは思わないですけどね。普通だったと思いますよ。
 
岩尾:学校は普通に行かれてた?
 
小野:普通に行ってました。だってバスに乗ったら必ず連れて行かれる。
 
岩尾・一尾:笑
 
小野:スクールバスみたいなもんですよ。病院に行く老人か高校に行く高校生しか乗ってないですからね。
 
岩尾:サボるとこないですよね? 蒲江だと。
 
小野:バスの中はいいんですよ、寝れるしね。爆睡ですよ。そういえば、むかし大学でお世話になった先生が言ってたんですけど「この大学のスタンダードみたいなものがあるとしたら、君はそこから限りなく遠い」って。たぶん下の方に遠いと思うんだけど。「でも、遠い方が面白いんだ」って。つまり距離が離れたら離れるほど出会った時の衝撃が大きいんですよ。だから面白い物が生まれる可能性がある。スタンダードだとされている物から隔たりがある方がね、面白い事が出来る可能性があるってことをおっしゃってくれたのを覚えてますね。でもきっと、本当は、こいつアホだなーといつも呆れられていたと思いますよ。笑
 
岩尾・一尾:笑
 
一尾:そろそろ温まってきたので本題に入りましょう。「再訪のとき」を書いてみてどうでしたか?
 
小野:今回の小説は、大分市を知ってる人が読むのと、全く大分市を知らない人が読むのとでは見え方が違いますよね。大分合同新聞は、大分県全域で読まれている新聞だけど、大分県は多様ですからね。この小説から見えてくる景色は、蒲江に住んでいる人と大分市に暮らす人とはかなり違うと思うんですよね。でもそれがいいんじゃないかなって。作中で人物たちが話す方言についても、僕は大分市の方言ってわからないから、田島さんたちにネイティブチェックしてもらったんです。一応、方言辞典を読んで、大分市の方ではこういう風に喋るらしいって確認したりもしました。蒲江は全然違いますからね、言葉が。大分市では友達のことを「とぎ」とは言わないみたいですし。
 
一尾:いつも書く題材はどのようにして決めるんですか?
 
小野:ふだんは、ただ自分が書きたいものを書くんです。で、書き終わったものを編集者に読んでもらってやりとりする中で、さらに手を加えていく。だから今回のように、大分が日本における西洋演劇発祥の地であるとか西洋音楽発祥の地であるとかいったことを踏まえながら、つまり主題を与えられて、小説を書くということはやったことがなかったので。取り組みとしてはたいへん苦労しましたね。大分市については知らないことだらけでした。PRするわけじゃないけれど、面白い発見の連続でしたね。恥ずかしながら、上田保さんの話とかね。知らなかったんですよ。
 
一尾:マリーンパレス、高崎山、、
 
小野:大分市長だった人ですよね。
 
岩尾:クリスチャンで、、
 
小野:で、色んな所に彫刻を置いた。すごいな!って思って。物語的な人だなって。興味あるけど、今回はそういうことを書く場所ではないなあ、と。だけど本当に面白い人ですね。
 
岩尾:すげぇ知りたいと思いました。
 
小野:ですよね。上田保さんについての本も面白かったです。
 
一尾:30日の集中講座では、そういう観点からお話しされるんですか?
 
小野:僕は文学論を話さなくちゃいけない。ちょうど昨日、全国の私立大学図書館協会で文学について講演してきたところなんですけど、同じような話になってしまうかも。でも文学について語るとき、毎回違うことを言ってたら、逆におかしいですよね?笑
 
岩尾・一尾:笑
 
小野:ですよね。笑。だから同じ話になるしかないじゃないですか。自分が本当に思ってることを言うしかないから。そういう話を30分でします。岩波書店の『ヒューマニティーズ 文学』に書いたような話が中心になると思います。書くときは読者を考えないけど、授業とか講演はやっぱり、ちゃんと顔を見て、どういう顔ぶれの人がいるかっていうことを考えてやらなくちゃいけない。お年寄りが多いときの話と学生向けのときっていうのは、やり方が変わりますよね。
 
一尾:8月30日(日)15時からの集中講座も楽しみにしてます。今日はありがとうございました。
 
小野・岩尾:ありがとうございました。