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カクシンハンが大分に! & カクシンハン版「ヘンリー六世 三部作」「リチャード三世」レビュー

「カクシンハン」の名を知ったのは、演劇仲間であり友人からの情報であった。
何だかとにかく、ひたすらに印象強くて、いつか観てみたいなあ~と思っていたらその時は意外に早く来た。
 
え、そんなにタップリなの?逃す手はないよね!と。
 
ところが吉報は続くもので、なんと大分公演の発表もされた!
 
7月(7〜8月 カクシンハン『POCKET じゃじゃ馬ならし』(仮) 東京・大阪・大分3都市ツアー)
まで待てば大分で観ることができるのか~と思いつつも、我慢はできず、東京へと向かった。
タップリどころか約70分×3作+2時間40分の作品は、脳の領域を超えて身体に染み渡り、いまだに滲みながらはみ出している。仁侠映画を見た後その気になって映画館から出てくる人みたく、演じてもいないのにまんまと『シェイクスピア・ハイ』になってしまった。
 
 
 
 
ぐっと入りやすいビジュアルの感想から。
クールでスタイリッシュという表現がぴったりの衣裳。ステキすぎて着たい!気持ちを煽られる映像美術。「リチャード三世」のオープニングでは子宮内から外を見ている赤子の記憶を感じ、いやでもこれから始まる物語の禍々しさを予感させられた。
シンプルなだけに、自在なセット。素材や空間の使い方が面白い。
必要な部分を満たし、いらないものは全て削いだといったかんじ。
 
さて、シェイクスピア劇を観る時に妙に構えてしまうのは、個人的には大きく2つの理由がある。
1つ目は、独特の詩情が盛り込まれた長い台詞を「聞く」ことに苦労する面だ。しかしカクシンハン版は、ありがちなリフレイン調の抑揚(これをリズミカルと勘違いしている役者も多い)がなく、台詞として成立しているどころか、リアルな言葉としてなんと聞きやすかったことか。確かな理解と技術がそうさせるのだろう。どれほど稽古すればここまで演じることが出来るのだろうか。
 
 
 
 
2つ目は、西洋史の素地がないと時代性や風俗、しきたりや宗教から意図される動き・仕草が理解できないところ。これは日本の伝統芸能でも同じだろう。
しかしこれもまた、演出の木村氏がグイグイと現代人に理解できるよう引き寄せながら、時にコミカルな演出を加え、ぐっと身近なものにさせてくれた。
『知らなくとも愉しませる観せかた』を心得たこの演出は、「魅せる」役者でなければ、こうは応えられないだろう。舞台の上が充実しているからこそ許される遊び。
 
実際、高校時代の世界史で100年戦争から薔薇時代あたりのテストで100点満点中8点の記録をたたき出し、担当教諭から職員室に呼び出されたわたしが内容を理解し、愉しめたのだから間違いない。ああ、学生時代にこの舞台があれば、きっともっといい点が取れたはずだ。
 
近くの席だった男性はドラマー・ユージさんの友人であったようで、初めのほうは少し置いていかれたように舞台を眺めていたが、1部が終わる前にはぐっと集中し始め、帰り際に「歴史のことは分かんなかったけど、話はスゲー面白かったわ!」と言っていた。
 
シェイクスピア、良かったね!!
 
 
 
                                      text 久原淳子
 
 
 
 
 
 
1983年大分県生まれ、両親が玖珠郡出身で、兵庫県宝塚育ち。演出家。
東京大学で文学を学びながら俳優、演出部として創作の一端を担う。2012年にカクシンハンを立ち上げ、自身の創作活動へ。古典を大胆に解釈し、多様な演劇の手法を取り入れた演出で現代と古典のクラッシュ(衝突)を生み、同時代のエンターテーメントとして戯曲に新たな息吹を吹き込む。
 
 
 
 
シアターカンパニー・カクシンハン第9回公演
『カクシンハン版 リチャード三世』+POCKET HISTORY 『ヘンリー六世 三部作』
2016年5月6日(金)~31日(火) シアター風姿花伝
 
作:W・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
演出:木村龍之介
出演:河内大和/真以美/のぐち和美/岩崎MARK雄大/穂高/阿久津紘平/浜ゆうこ/大津留彬弘/井上哲 (以上カクシンハン)
神保良介/鈴木智久(スタジオライフ)★ダブルキャスト/白倉裕二★ダブルキャスト/葛たか喜代☆ダブルキャスト/奥山美代子(文学座)☆ダブルキャスト
近藤修大/山口祥平/田部圭祐/福島和也/長田大史/桜木綾/千葉りか子
ユージ・レルレ・カワグチ(パーカッション演奏)
 
作:W・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
演出:木村龍之介
出演:河内大和/真以美/のぐち和美/岩崎MARK雄大/穂高/阿久津紘平/浜ゆうこ/大津留彬弘/井上哲 (以上カクシンハン)
時田光洋/神保良介/近藤修大/山口祥平/葛たか喜代
ユージ・レルレ・カワグチ(パーカッション演奏)
 
予告編動画[カクシンハン版リチャード三世]
 
 
— シェイクスピアの処女作とも言われている、全編で10時間に渡る百年戦争の終盤から薔薇戦争を描いた戯曲 —
中世イギリスに書かれたシェイクスピアの物語を(その多くは題材をそれより更に前の時代からとっていますが)、松岡和子さんによる翻訳台本を基に、「シェイクスピアが現代日本にいて、観客に『自分たちのことのように』この物語を身近に実感してもらえるよう舞台化するとしたら、どうするか」という発想から、シェイクスピアに詳しい方から、ハリウッド映画しか見たことないよ、というような方まで、様々な生き方をしてきた現代人が、共通して魂でシェイクスピアの物語を楽しめるように、大胆に戯曲を解釈し、スタイリッシュでクールな現代的シェイクスピア劇を生み出しています。
 
 
◆あらすじ◆
リチャードは、生まれた時から歯が生え揃い、片腕は枯木のように捻じ曲がり、両足は左右不揃い、背中には小山のようなコブをこさえられた…
この世で生きることを地獄と見なし、王冠を目指すことを天国とする、信じるものは己の力のみ。
王位奪取のために手段を選ばないリチャードは、実の兄を陥れ、殺した男の妻を口説き、幼な子を惨殺させ、利用し尽くした臣下はゴミのように捨てる…
爽快なまでの「悪」を貫く、シェイクスピアの生みだしたトリックスター。
疾走する「悪」の先に待ち受けていたものは……