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カクシンハンじゃじゃ馬ならし大分公演特別連載『じゃじゃ馬たちは今夜もねむらせない』第一回

6月25日(土) 第一回「僕が玖珠ここのえで演劇をする理由」
 
 
第1回
「僕が玖珠ここのえで演劇をする理由」
 
 
僕は、一九八三年七月十一日、大分で生まれたらしい。らしいというのは、あまりに転々としていて、故郷がどこかわからなくなっていたから。大分での取材でも記者に笑われた。でも本当だから、しょうがない。
 
両親が玖珠で生まれた。それは知っていた。父と母は、玖珠で出会い、恋に落ちた。そして、ロミオとジュリエットのように東京へ駆け落ちし、僕をドコカで産んだ。
 
二人は多くの男女がそうであるように、別れて、別々の人生を送った。
 
母に引き取られた僕は、もう一人の新しい父にすくすくと育てられ、母の教えのもとたくさんの本を読んだ。引越しに次ぐ、引越し。世界を転々と過ごした。
 
大海原を漂う一滴の水のように、あっちへこっちへふらふらと連れて行かれ、その中でありふれた生活をし、勉強もし、恋に落ちたり、音楽を聞いたり、そして大学に行き、東京で演劇と出会った。
 
演劇創作に明け暮れていると、ルーツが知りたくなった。原点。生まれ。ルーツのない人間はいない。
 
玖珠には、祖母がいる。よもぎを摘み、トキハで買い物する祖母。かつては祖父もいた。釣りが趣味で、温泉を掘り当てた。その玖珠で、父と改めてゆっくりと話し、大分で生まれたことが判明した。
 
僕が生まれたのは東京ではなかった。駆け落ちした二人は、僕を生むために大分に戻っていたのだ。
 
紛れもなく玖珠が僕の故郷で、僕のルーツは大分県の玖珠だった。
 
今、僕は、東京でバッキバキのシェイクスピアを上演する若手カンパニーを主宰し、演出している。飛ぶ鳥を落とす勢いらしい。らしいというのは、まだ走り出したばかりで僕自身、どうなるかなんてわからないから。都会での演劇は、挑戦することで舞台が躍動する。集団が挑戦するエネルギーで、多様な価値観がクラッシュし、演劇が「力」を発揮する。来年一月には東京芸術劇場で『マクベス』を上演する。他にもたくさんの演出をする予定だ。
しかし一方で、故郷で、東京とは違った演劇創作をしてみたくなった。
 
その欲求は必然だと思う。
 
五年前、ヨーロッパを放浪していた時、最も鮮烈だったのは、ロンドンナショナル・シアターの上演でも、パリのバスティーユのモダンバレーでも、シャウビューネの現代演劇でも、アムステルダムの都会的な前衛オペラでもなかった。(もちろんその輝かしい作品たちは、優れて先鋭的でオモシロかったのだが!)
 
僕の心のすべてを支配したのは、シチリア島のタオルミーナにあった古代ギリシャの野外劇場だ───背後には海が広がり、天が大地を見下ろし、そこには劇場が、僕らの世界を吸い込むような圧倒的な雄々しさで、存在していた。
 
演劇の起源(ルーツ)は言うまでもなくギリシャだ。その影響のもとシチリアに建設されたギリシャ劇場は、紛れもなく、もう一つのセカイそのものだった。
 
そんな都市とは違った演劇の「力」を、僕は探求する必要があるし、その情熱は抑えられない。そしてそれはきっとこの先、演劇をするということの大事な鍵(キー)になるだろうと考えている。
 
いきなりタオルミーナのようなギリシャ劇場はできない。なにしろ僕はまだルーツを見つけたばかりだ。故郷である玖珠で、ギリシャ劇場のようなルーツに深く関わる演劇をやり続けることこそが、演劇の本質に触れることなのではないかと考えている。
 
初めの第一歩。これからも僕は進めていく気でいる。困難もあるだろう。初めの一歩はささやかだが、その一歩は大きい。
 
その一歩を見逃さないでほしい。
 
僕は、渋谷のフレッシュネスバーガーでThe Strokesを聞きながら、そんなことを考えて、この原稿を書いている。ルーツである玖珠は遠い。僕は帰りがけにRadioheadの新作アルバムを買うだろう。
 
僕のルーツは一体なんなんだ?
 
 
旅は始まったばかり。
 
 
                              text カクシンハン主宰 木村龍之介
 
 
 
 木村龍之介
 
 
1983年大分県生まれ、両親が玖珠郡出身で、兵庫県宝塚育ち。演出家。
東京大学で文学を学びながら俳優、演出部として創作の一端を担う。2012年にカクシンハンを立ち上げ、自身の創作活動へ。古典を大胆に解釈し、多様な演劇の手法を取り入れた演出で現代と古典のクラッシュ(衝突)を生み、同時代のエンターテーメントとして戯曲に新たな息吹を吹き込む。
 
 
 
 
 
 
 

- カクシンハンPOCKET03『じゃじゃ馬ならし』大分(玖珠ここのえ)公演 -

【開催日】

2016.07.29 fri - 07.31 sun

【時間】

07.29 fri

13:00 - 15:00 「小・中・高生のための楽しい演劇教室」

20:00 -     「カクシンハンPOCKET03『じゃじゃ馬ならし』」

07.30 sat

13:00 - 15:00 「小・中・高生のための楽しい演劇教室」

17:00 -     「カクシンハンPOCKET03『じゃじゃ馬ならし』」

07.31 sun

13:00 -     「カクシンハンPOCKET03『じゃじゃ馬ならし』」

17:00 -     「カクシンハンPOCKET03『じゃじゃ馬ならし』」

【会場】

玖珠町立わらべの館

〒879-4403 大分県玖珠郡玖珠町大字森868-2

電話 0973-72-6012

大分自動車道 玖珠インターから車で5分(国道387号線)

JR豊後森駅から車で7分

国道210号線と国道387号線の交差点から車で10分

【料金】

前売り料金:大人2,500円/学生1,000円

発売開始:6月29日(水)

【チケットについて】

<前売りチケット販売店>

スガタ文具店、住本商店、大根屋書店、都久屋書店、日野書店

シャインホテルくす、食事処春日、九重のここのパン屋、カモシカ書店

<ネット販売>

https://www.quartet-online.net/ticket/kakushinhan

<電話予約・お問い合わせ>

0973-76-3755(カクシンハン公演春日事務局)

070-6634-2593(劇団制作)

【キャスト】

演 出:木村龍之介

出演者:真以美、穂高、岩崎MARK雄大、阿久津紘平、大津留彬弘(以上、カクシンハン)、杉本政志(劇団AUN)、神保良介

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