OITable -大人のママゴト-「醤油のコト」 木村真琴

フードアナリスト木村真琴さんの新企画!

《OITable -大人のママゴト-》
〜 大人になって気づく大分の食と美味しいものとの出会い 〜

フードアナリストとは食に関して、歴史のこと、テーブルマナーのこと、デザイニングのこと、食べること、作り方のこと、栄養についてのこと、食物のこと、コーディネートのことも全部ひっくるめて、トータル的かつ多角的な方向から発信できる資格を持った方のことを差します。

木村さんは現在、大分市中央町にあるカモシカ書店のカフェメニューを担当しており、雑穀を使ったメニューやフルーツと野菜を組み合わせたヘルシーで美味しいスイーツを提供してくれています。
また、佐伯市産まれのウニ醤油のレシピ監修を担当するなど、フードアナリストとして大分の食に関する仕事で活躍しています。

木村真琴さんへのインタビュー記事はこちら。

第一弾は「醤油のコト」

普段、何気なく使っている醤油ですが、その歴史や種類についてはあまり知らないもの。
フードアナリスト木村真琴さんが独自の視点と取材で「醤油のコト」を語ってくれます。
最後に醤油を使ったお料理のレシピも紹介してますので、ぜひ参考に作ってみてください!

 

「醤油のコト」

 

醤油をひとなめすると、甘さ辛さ酸み旨み、そして300種類近くの香り成分が折り重なった複雑かつ絶妙な味わいが口の中に広がります。懐かしい幸福感さえほんのり感じるのも、日本人ならではの感覚かもしれません。
日本の食文化には欠かせない昔から親しまれているお醤油は、大豆×小麦×麹菌で醸される発酵食品であり、その土地の風土環境が大きく影響します。故に育った土地のお醤油が一番だという人も多いのではないでしょうか。実際に私も地元千葉県のキッコーマンやヤマサの醤油を使うと自分の味が出せるというか母の味に近づく気がするのです。
そこで、ここ大分県とお醤油の食文化を簡単ですが、ひも解いてみたいと思います。

【大分のお醤油事情】
大分県はフンドーキン醤油や富士甚醤油など大手の醤油味噌企業が集まる西日本を代表するお醤油の生産地であり【表1】、醤油史については江戸時代までさかのぼります。

西暦1600年の関ヶ原の合戦後、岐阜県美濃郡上八幡から豊後国臼杵藩臼杵城主として移封された稲葉貞道が、城下町の整備をする為に美濃から各種職人を来臼させ、味噌・醤油の製造に着手したことから大分の醤油の歴史は始まりました。
臼杵で味噌・醤油文化が発達したのは、この背景があるようです。
そして、現在残っている県内の蔵元さんで長い歴史を持つのはその美濃からの職人が築いた可児醤油さんになります【表2】。

現在、大分県内で醤油加工をしている業者さんは50軒ほどあり、実際に「もろみ」を持って醸造しているのは5軒程度。なかでも大分の醤油文化の特徴として挙げられるのが、数十軒の蔵元さんが連名で出資している2箇所の協同組合運営の工場が稼働している点です。
醤油造りは生きている菌を扱う繊細な作業であり、麹菌が程よく育つよう温度管理・湿度管理など一日たりとも目の離せない作業です。そこで発酵・熟成までの繊細な行程を綿密に造られた室(地元の協同組合等の工場)で一度に行い、その後、甘みを加えたり、さらに寝かせたりと各社独自の製法で各々のオリジナル製品を製作する手法が全国的に多くみられる製造方法のひとつでもあるようです。

大豆・小麦・菌のみで作られる醤油の製法はどんなに近代文化が発達し、工場として大きくなったとしてもその三つ巴で造られる伝統的製法は変わらず、各地方の風土気候に合わせて醸造しています。
大分県にかぼす醤油や椎茸醤油など、郷土の食材を活かしたアレンジ醤油(醤油加工品)が多いのは臼杵に存在する大きな醤油工場群との地域に根付いた連係プレイが大きいのかもしれません。

もうひとつ、特徴的な点は何はともあれ甘露な醤油。

大分県民に親しまれている甘いお醤油は九州の独自の文化であり、様々な添加物が加わってコクのある甘露な醤油加工品となっています。

なぜ九州で甘露な醤油が好まれるようになったのか?

・甘みの少ない焼酎に甘露な醤油で作る惣菜が合う
・長崎から砂糖の入手が簡易に出来るため、近隣の諸大名達が甘露な醤油を好んで食べていた
・九州近海で採れる魚に甘露な醤油が合う

などなど諸説ありますが、発祥は定かではないようです。
甘露な醤油は九州〜日本海側のみで発展しており、普通に純粋な濃口醤油で育ってきた私は初めて食べた刺身醤油の甘露さに驚きました!
数年前までは添加物の入らない普通のお醤油を大分県内のスーパーで探すのは至難の業でしたが、最近では県内大手のメーカーさんが普通に卸すようになったのも昨今の健康ブームから県内での需要が増えたからでしょう。

【醤油の種類】
醤油とは大豆と小麦粉を種麹で発酵させ、諸味を圧搾したものが一般的名称の「醤油」として扱われており、JAS法(日本農林規格協会)で製造方法・原料・特徴から「濃口醤油」「淡口醤油」「さいしこみ醤油」「白醤油」として基本的に分類が定められていますが、穀物を塩で漬ける「醤(ひしお)」として視点を変えると【表3】の様に分けられます。
もともと狩猟民族であった我々日本人は魚・獣類を塩で保存食とすることを主としており、穀醤(醤油)の歴史は浅い。お漬物なども古来の分類としては醤油と同じ分類に入ります。

海に囲まれ、程よい湿度と寒暖のある四季があるなど菌の育ちやすい環境が功を奏して醤油は日本の土地に根付きました。そして日本人にしか備わらないと言われている「旨味」の感性を生かし、私たち日本人は食をあらゆる方向から楽しむ知恵を持ち、現在では全国各地津々浦々、様々な醤油が存在します。
その中でも大分県は地産地消を実践する、全ての「醤」が揃っています。
そこで私が日常的に使っている大分県の「醤(醤油)」をご参考までにピックアップします。

左から
【魚醤】鮎魚醤 (まるはら:日田市)
【肉醤】にくしょう(まるはら:日田市)
【穀醤】五源醤油(麻生醤油:玖珠郡)
【しょうゆ加工品】しいたけ醤油(大分県椎茸農業協同組合:大分市)、かぼす醤油(ユワキヤ醤油:大分市)、うに醤油 UNI GOLD(Gran Primavera:佐伯市)、カトレア醤油(フジヨシ醤油:別府市)

ちなみに…
グランプリマベーラさんのウニ醤油のレシピ集の監修・フードアレンジは、わたくし木村がさせて頂いております。東急ハンズさんなど県内外の販売店で見かけた際は、ウニ醤油と共にお手に取っていただけると幸いです。

簡単でしたが大分の醤油(醤)のお話でした。

某大手コンビニエンスストアの総菜やスイーツは全国5カ所ある工場(関東・北海道・関西・ 静岡・九州)で製造されており、静岡では“たまり醤油”、関東では“濃口醤油”、関西では“薄口醤油”、九州では“混合濃口醤油”を使用し、それぞれの地域で醤油や出汁を変えて作っているそうです。
醤油はまさに私たちの生活と風土に最も根付いている郷土の味覚であり、日本人には欠かせない発酵食品。地元のお醤油であれ、はたまた加工したお醤油であれ、自分の味覚に合ったお醤油に出会うと更に楽しい食ライフが送れるかもしれませんね♪

【参考資料・サイト】
臼杵市史(上・中・下) / 大分の伝統料理(大分合同新聞社) / 大分の民俗(大分県民具研究会) / 醤油本(玄光社)高橋万太郎、黒島慶子 著 / お醤油手帖(河出書房新社)杉村啓 著 / しょうゆ情報センター(https://www.soysauce.or.jp/)

 

大人のママゴト》鮑腸(ほうちょう)の作り方

鮑腸とは?
見た目はうどんのようで、一本の麺の長さが二メートル以上あり、その昔「はしごにのぼって食べる」という逸話があったほど。
この長い長ーい麺を、地元で採れたものだけを使って作られたこだわりのダシの甘みに、カボスのさわやかな酸味、ショウガのほどよい辛さがマッチしたつゆにつけていただく。
「ほうちょう」の名の由来は諸説あるが、戦国時代、アワビ(鮑)が不漁だった時に、大友宗麟の家来が小麦粉をこねてアワビの腸に似せたものを作ったら、アワビ好きの宗麟がとても喜んだ―というのが最も有力。
引用:戸次鮑腸保存会

 

【材料】
〈 麺 〉
薄力粉 200g
強力粉 100g
塩 小さじ1
ぬるま湯 カップ2杯位

〈 つけ汁 〉
醤油(こいくち醤油) 1/2カップ
みりん 1/2カップ
水 2カップ
鰹節 ひとつかみ
季節のお野菜
かぼす

【作り方】
〈 麺 〉
1、粉と塩を混ぜ、ぬるま湯を加えながら耳たぶくらいの柔らかさになるまでよくこね、ぬれ布巾をかけて5分ねかせる。

 

2、1をちぎり、小さな棒状にし、バット等に並べて濡れ布巾をかけて30~40分ねかせる。

 

3、2を人差し指と中指と親指でしごき、次に両手に持ちながら、うどんとパスタの中間くらいの太さにこよる。2メートル位の長さまで伸ばす。

 

4、たっぷり沸かしたお湯に1本ずつ入れて、湯がく。浮いてきたら上げて水で締める。

 

〈 つけ汁 〉
1、水をひと煮立ちさせて鰹節を入れる。

2、醤油とみりんを入れてひと煮立ちさせ、鰹節を取り出し15秒ほど中火で醤油とみりんをなじませる。

3、あたたかいお汁で食べる場合はそのまま、つけ汁にする場合はボウルなどに移し、氷水等で冷やす。

※大分県はこいくち醤油ではなく、甘露な醤油を使用する地域性ですので味が足りない場合は、ご家庭の甘露な醤油を使用するか、2の工程で砂糖を大さじ0.5~1杯を加えてみてください。

 

【盛り付け】

シイタケや青菜(白菜やほうれん草)やかまぼこを飾り、汁と一緒にいただく。
かぼす汁を加えるのがミソです。

今回はクルーズトレインななつ星で扱われている事で話題の麻生醤油さん(玖珠郡)の「五源醤油(こいくち醤油)」を使いました。

ちなみに右にある写真はその醤油を絞った後の醤油粕です。お醤油味のおから、と言うところでしょうか。
今回、麻生醤油さんのご厚意で貴重な醤油粕を分けていただきました。

カモシカ書店にて、この醤油粕を使ったスイーツやデリメニューを醤油粕が無くなるまでお出ししたいと思います。
滅多に見ることが出来ない貴重な醤油粕、見るだけでも是非いらしてください!

 

〈 木村真琴 Kimura Makoto 〉
日本健康医療学会 健康医療コーディネーター
日本ホリステックビューティー協会ホリスティックビューティーアドバイザー
日本フードアナリスト協会 フードアナリスト
日本雑穀協会 雑穀エキスパート認定者
日本野菜ソムリエ協会 ジュニア野菜ソムリエ
日本抗加齢医学会 会員
食と健康推進協会 農医連携ユニット 所属
おおいた食育人材バンク 登録講師

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