Pickup対談。近藤晃子×吉川緑の場合。

現在アートプラザで開催されているPickup Artist Exhibition vol.3。

参加作家である近藤晃子さん(現代アート作家)と展覧会のコーディネーターである吉川緑さんによる対談。

高校時代から友達の2人ならではの本音トーク。これまで、そしてこれからを語り尽くします!

 

Yadorigi編集長一尾(以下、一尾):2人は凄く仲いいけど同い年?

吉川緑(以下、吉川):いや、近藤さんの方が1個上で大分高校に行ってたんですけど、私が高校生になる年から大分高校の特進に美術コースが出来るから、そこに行きたいと思って行ったんですけど。近藤さんは既に別のコースで1年過ごしていて美術を勉強したいからってことで美術コースに転科してきて。でも7人だったんですよ。だから一緒に授業受けちゃおうってなって。

近藤晃子(以下、近藤):そうそう、だから仲良くなったのは授業で美術コースに入ってから。

吉川:で、そこがとっても濃い環境で。いろんな人がいて。刺激的だった3年間。

近藤:卒業する時は普通科のコースに在籍しているっていう形だったので卒業アルバムには1枚しか写真が載ってないっていう。

吉川・一尾:あははは

近藤:1年の時の垢抜けない山の上でご飯食べてる写真が1枚。。笑

吉川・一尾:あははは

近藤:なんでこれチョイスしたんだろうって。

一尾:確かに。笑

近藤:普通科と特進があって、美術コースは省かれ気味で、私も卒業アルバムには1枚も載ってない。笑

吉川・一尾:あははは

吉川:研修旅行の写真も?

近藤:たぶん。。

一尾:研修旅行とかもあるの?

吉川:毎年、修学旅行がない代わりに厳しい美術予備校に放り込まれるんですよ。

近藤:冬期講習に参加して、みんな受験バリバリのシーズンだからピリピリした感じで。

近藤・吉川:初日は泣くよね。

一尾:あははは

近藤:高1の時はまだ受験にそんなに集中するより、単純に楽しむ事をやると思うんですけど、1年の頃からガッツリ受験のための絵を描き始めるから。それで予備校の冬期講習入ると何か楽しくなくなっちゃうじゃないかなって。笑

吉川:私も何も道具を揃えてないのに油画科に行ったから、その場で揃えたんですよ。油画ってもの凄く難しいんですけど、もう何にもわかんなくって。で、もうそこで無理矢理描いて。凄い経験でした。

近藤:それは辛かったね。しかも一人しか居なかったもんね。

吉川:デザインが圧倒的に人気なんですよ。仕事に繋がるから。でもそうしても油画がしたくって。

近藤:しかも建物も違うから。

吉川:一人でやってた。。

近藤・一尾:あははは

吉川:近藤さんは卒業しても、、

近藤:卒業してニ浪したんだよね。

一尾:近藤さんは何科に行ってたの?

近藤:デザイン科。最初は漫画家になりたかった。

吉川:そうだ!笑

近藤:中1くらいの時は漫画家になりたくてオタク街道まっしぐらで、でも中1の時に漫画家さんにインタビューする企画があって。授業の一環で。漫画家の人に電話でインタビューしたら,なんか現実的な話をされて、夢をぶち壊されて。

吉川・一尾:あははは

近藤:漫画家面白くないのかなって。

一尾:インタビューしたのは自分が好きな漫画を描いてた人?

近藤:いや、そう言う訳ではなくて。連絡が取れる漫画家さん。

吉川:最初やっぱり入口って漫画が多い。私の友達が漫画を描いていて。その時はオタクっていう言葉もよく知らなかったんですけど、絵で食べていけるって漫画かぁって思って。見よう見まねで友達のお手伝いとかしてた時期があって。でも現実を知るとちょっともう、、

近藤・吉川:面倒くさい。笑

一尾:あははは

近藤:絵描いて、ストーリーも考えて、コマ割して、、

吉川:量がギュッて詰まってるから。スクリーントーンとかもあって、、

近藤:Gペンで描かなくちゃいけなくて、、

近藤・吉川:ボールペンでいいじゃんって。笑

近藤:それよりも漫画の表紙を描くのが好きだったんですよ。一枚絵が好きで年賀状描くのも好きで。お母さんに年賀状描ける仕事ないかな?って聞いた時にイラストレーターとか広告代理店じゃないって言われて。それになりたい!どこ行ったらいいの?って言ったら多摩美で名指しで言われて赤本買って来られて、じゃあ私、多摩美に行くって言って。

吉川:それはいつ?

近藤:中2か、中3くらいの時で、本当は地元の高校に行こうとしてて、何でかって言うと美術に特化してた訳じゃないけど弓道部に入りたくて。

吉川・一尾:あははは

近藤:で、入ろうとしたんですけど公立の高校で受験落ちちゃって。滑り止めで受けてた大分高校行かないだろうと思ってたら、そこに入って。

吉川・一尾:あははは

近藤:受験で落ちる事があるんだって、そこで初めて知って。笑

吉川・一尾:あははは

近藤:河原でこう(膝を抱えてボーっとする)。笑

吉川・一尾:あははは

近藤:どうしようと思って。

吉川:それ聞いたな、前に。笑

近藤:友達に「先帰っていいよ」って。

吉川:何回聞いても面白いそれ。

一尾:今だから笑えるけどね。

近藤:でも大学を受験する時も2回落ちたから、「あ、私は不合格の星の下に生まれたんだ」みたいな気持ちになったんですけど、なんとか毎回補欠には入ってて行けるかもしれないっていう希望があったんで浪人はしてたんだけど。で、多摩美に合格ってもらえたのが情報デザイン学科でそこに多摩美ならいいやって。浪人中にいろんなもの観て広告代理店っていうよりも立体的なものを作りたいと思ったりして、その時に布に興味持ち始めてテキスタイルデザインもいいなとか。

吉川: 最初はチュール?

近藤:そうチュールっていうチュチュとかに使われる素材を使い出して、クラシックバレエを15年間やってたので、その布が面白いなって思って、素材の面白さっていうのを表現したくて布を中心に作品を作り始めました。

吉川:私はずっと知ってるので、まさか今回のような作品になるとは思っていなくて、浪人してる時はもう本当に思い悩んでいた時だったので、あまり会ってなくて連絡も取ってなくて。私も私であの時は大変で、、

一尾:また連絡取り合うようになったのは?

吉川:私が東京に1週間行ったんですよ。

近藤:家に泊まりに来たんだよね。

一尾:突然、連絡あって「東京行くから泊めて」って?笑

近藤・吉川:あははは

吉川:とりあえず頭がパンクするくらい美術館に行きたくて9カ所かな、一人で結構行ったんですよ。でも宿がないと思って。近ちゃんが居るって思って、連絡して。

近藤:「はい、近藤ホテルです」みたいな。笑

吉川・一尾:あははは

近藤:そっか、それキッカケだ。

吉川:で、それから年に1、2回会っていて、そしたら去年会った時にこういう作品作ってるんだっていう話をしてもらって。

一尾:その時はもう今回のような作品?

近藤・吉川:そうそう。

近藤:卒業制作がボタンにフェルトを付ける作品で、それがいろんな場所で展示させて頂く声を掛けてもらえたから、みーちゃんに話して。

吉川:で、ちょうど私が参加型っていうのをしてみたいと思っていたので、「こういうのがしたいんだよね。」って言って実現したんですよ。大分に帰省してる時にアートプラザに一緒に来て、館長の椎葉さんを紹介して、トントン拍子で決まったんだよね。

一尾:作品は最初から参加型だったの?

近藤:参加型の作品を最初に作ったのがキッチンって言う作品なんですけど、これは大学のオープンキャンパスの時にした展示でキッチンみたいなブースを作って、来てくれた人に即興で作品を作って。出逢った人にどういう形とか色が好きとか聞きながら作って、持って帰ってもらう。持って帰って作品を見た時にこういう話をしたな、こういう時間だったなっていうのを見て思い出してもらいたいって思って。この時、作品を観に来る人ってどういう人なんだろうって想像したけどわからないじゃないですか。それって寂しいなって思ってみたりもして。

観る人、来る人のためを想って作品を作りたいって思って。料理も食べてもらう人を思い浮かべながら作りますよね。そういうような思いでキッチンというタイトルでしましたね。この時はヘアゴムとかブレスレットとか身に着けれるものを作りましたね。この時に使った素材がチュールなんですけど、女子に人気でした。元々はフランスのチュールっていう地方で作られてるレース編みの物なんですけど、今は化学繊維で作られてます。凄いチクチクして。笑

吉川・一尾:あははは

吉川:私もちょっとだけバレエしてたことがあるんですけど凄いチクチクするんですよ!

近藤:モアレっていう現象、色々を重ねた時に色が濁るじゃないですか?でもこれはメッシュ状の空いてるところから後ろの色が見えるから濁らないんですよ、色が凄い綺麗に混ざって面白いなって。しかもチュールってチュチュとかウエディングのヴェールとかでしか使われてなかったから、もっと身近に身に着けれる物にしたいなって。この前に空間造形みたいな事もチュールを使ってしてたんですけど、その時に綺麗な作品っていうだけでいいの?綺麗って言われるだけで満足なの?って言われて。違うなぁって思って、それから今回のような参加型になったんです。で卒業制作の時もまだチュールに捕われていてチュール地獄にハマってた時期。。

吉川・一尾:あははは

近藤:糸を使わずに半田ごてで溶かして接着するっていう手法でやってたんですけど、それだけじゃ立ち行かなくなってきて。チュールは1回置いといて、フェルトにシフトチェンジしたんです。一学年上のにフェルト使う先輩が居たから、あんまり使いたくないなって。笑

一尾:あるよね、そういうの。笑

近藤:人が使ってる素材は何か嫌だなって思ったんですけど、一番身近な素材で切った時に布の中でも解れにくいっていうのが強みと思って。キッチンの時は作品を持って帰ってもらったんですけど、私に何も残らないって思って。

吉川・一尾:あははは

近藤:寂しいって思っちゃって。残してもらおうと思って。空間を共有した人たちが場を作っていくっていう形になったです。その空間のイメージが田舎のシステムみたいな。

一尾:システム?

近藤:無人直売所とか。信用だけで成り立ってるシステム。そういうようなアートが出来たらなって。アートが日常の場所にあって誰か来てはそこで何かをして帰っていくっていう。共有した人が家とかもそうですけど誰かが付けた傷が何百年って残ったりするじゃないですか。そんな感じで人が何かをした作用で形が変化していく、良くも悪くも。ものがいいなって思って。

吉川:前に話していた都会に居る理由とかよく話に上りますが。

近藤:それはでも大分で展示してわかった事かも。

吉川:6月のアートマーケットでピックアップアーティストとして一人選出させてもらった時に大分で展示するのが初めてだったので、手探りで2人で考えてたんですけど。彼女が佐伯大好きで。佐伯の川に一緒に泳ぎに行ったんですけど。

吉川・一尾:あははは

吉川:佐伯に帰ってる時は本当に楽しくて、満たされて、アートを作ろうっていう気が起きないって。

近藤:自然に勝る物はないって思って。自然みたいな物が作りたいって思ってたんですけど、神様かみたいな感じですけど、教授にもそれ言ったら、無理だよって言われて。

吉川・一尾:あははは

近藤:やっぱりそっかって。笑。自然に憧れて形も凄い綺麗だし、うん、凄いなって思う。それがやっぱり身の回りにあるじゃないですか?実家に帰ると。見上げれば星が在って。

吉川:でもあえて東京でコンクリートジャングルの中に居る事で本当に自然を欲する気持ちがムクムクと沸き上がって来るっていう。

近藤:その自然に触れられない欲求不満を作品の制作意欲に注ぐみたいな感じが。だから作品も自然の造形を意識して作ってます。こういう場所を作ると人が囲うんですよね。自分がこうなってほしいって思った事が本当に形になると凄い嬉しかったですね。2012年にATELIER MUJIっていうギャラリーがあって普段は無印の商品開発理念を伝えるための展示をしてるんですけど、キュレーターさんが若手のアーティストにもやってもらいたいって事でネットで卒業制作の作品を観てくれてメールをくれて。クリスマスシーズンの1ヶ月やらせてもらったんです。この時もフェルトをボタンに付ける参加型の作品をしていて中央に大きい箱を置いて子どもたちがいろんな形のフェルトを取り出してボタンに付けて遊んでもらうっていう事をしました。

吉川:この時に今までの入場者数塗り替えたんだよね。

一尾:凄い!

近藤:子どもが凄い食いついてて「何あれー!?」って。いつもやっぱりこういう事してる場所じゃないから。

一尾:商業施設とかでも凄い人気になりそうだけど、アトリエとかギャラリーじゃないとダメっていうこだわりは何かあるの?

近藤:やっぱり作品だけじゃなくて作品を囲う空間も大事だなって思って。観に来るテンションとかもあると思うので。

吉川:テーマパーク的な位置あるじゃないですか?アート作品としてどういうところで分けたりしてますか?

近藤:そうだな。ぞんざいに扱われたらショックだし。

吉川・一尾:あははは

近藤:このフェルト、お客さんが1つ1つ作ってくれた物なので。

一尾:へー、そうなんだ!

近藤:ボタンに付けてるフェルトも1つの作品だと考えてもらいたいです。だからバーンとかやられたら悲しいので。そういうテンションじゃなくて、作品を作りに来てる意識でやってもらいたい。

吉川:今後はどういう風にしていきたいとかある?

近藤:野外で展示してみたい。もっと街に繰り出して。あと自然ともコラボしてみたい。木とかに。ツリーハウス作るのが夢だから。自然がいっぱいある中で人間が破壊するだけじゃなくて自然と共存してる美しい姿みたいなのを作れればいいなって。

一尾:具体的に今一番ここでしたいっていう場所はある?

近藤:探し中。。なんか怒られそうだし。

吉川・一尾:あははは

近藤:私が一番、大プッシュしてるのは佐伯の藤河内渓谷。笑

吉川:あははは

一尾:2人で行ったとこ?

近藤:じゃないんですけど。危険なんです。

一尾:作る側も、行く側も?笑

近藤・吉川:命がけ。笑

近藤:でもそこは手を入れてはいけないかなって。「そのままの君が好き」みたいな。笑

吉川・一尾:あははは

近藤:これからどういう風なかたちになるかわからないですけど、自然とコラボレーションはしてみたいです。でも街中でもしてみたいんですよ。仕事帰り疲れてる時にパッと見て元気になれるような。通りすがりのサラリーマンも参加しつつ。いろんなとこでやって、いろんな人に参加してもらいたい。

近藤晃子 Kondo Akiko

大分佐伯市出身

2012年 多摩美術大学情報デザイン学科 情報芸術コース卒業

主な展覧会

2012年 みんなでつくる森展(無印良品有楽町店ATELIER MUJI)。夢現代∞美術展(島根県浜田市世界こども美術館)。ぼくらの巣をつくろう(和歌山県紀美野町立小川小学校)。

2013年 アートマーケットvol.16(大分/アートプラザ)ピックアップアーティスト。

現在は東京を拠点として、主に布や空間を使った観客参加型の作品を制作している。

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