5月31日にJ:COM ホルトホール大分 小ホールにて上演される、劇団5454(ランドリー) 第12回公演『トランスイマー』– 眠りに棲みつく研究者 –の作・演出 春陽漁介くんにインタビューしました!
なぜまた大分なのか、『トランスイマー』について、作品の作り方、恋愛について、
そして大分のみなさんへのメッセージ、たくさん語っていただきました!
大分公演は5月31日(木) 14時– 19時− の2ステージです。
お見逃しなく!
春陽漁介 『トランスイマー』大分公演直前インタビュー!!
Yadorigi編集長一尾(以下、一尾):昨年に続き今年も大分での公演ということですが、どうしてまた大分で?
劇団5454 作・演出 春陽漁介(以下、春陽):去年の初公演は、主演が大分出身の元劇団員・工藤佑樹丸だったので、言わば凱旋公演。工藤のための記念公演みたいな感じだったんですよ。でも、どんな理由であれ、どの地であれ、1回きりの公演では意味ないなと思っていたので、できればそれを今年来年以降に繋げていきたいと思っていました。工藤がいなくなって集客方法など宿題はあったのですが、それでもやろうと思えたのは去年の大分公演で大分のお客様が純粋に演劇を楽しんでくださったのが本当に嬉しかったから。そういう客席を学生の時に体感して演劇にハマったはずなのに、もうずっとなかったな、この喜びずっとなかったなって。改めて演劇を観に来てもらう意味を全身で強く感じました。
一尾:東京・大阪でいっぱいになるのとはやっぱり違うんですか?
春陽:そうですね。違いましたね。東京で満員になるのはもちろん嬉しいです。でも、東京は演劇が多いじゃないですか?他と比較もできるし、これがどういう作品なのか?どういうテクニックなのか?技術面も見られるし。総体的に舞台芸術としてどうなのか?絶対に評価されるんですよ。
一尾:純粋に面白いとかじゃなくて、演出がどうのこうの、、
春陽:そうです、そうです。劇作の能力がどうだ、役者のうまさがどうだ、とか。
一尾:評論したがる人も観に来るし。
春陽:もちろん、そういう人にも認めてもらわなきゃ東京でやっていけないんですけど。演劇を選んだ理由は、目の前のお客様と一緒にこの空間を楽しみたいっていうのが大前提だったはずだし、それが新喜劇とかじゃなくドラマを持っている演劇を僕らがやってる意味は、このテーマに対して僕らも考えて作ってきました、お客様も劇場で楽しみながら一緒に考えて持ち帰ってくださいねっていう事ですから。大阪もそういう感覚はあるんですけど、どこよりも大分で感じたっていうのが今回もしっかりと作りたいなって思った一番大きなところですね。
一尾:実は春陽君も大分にルーツを持っていると聞いたんですが?
春陽:曽祖父が大分出身と聞いてます。一応大分の血があるんです。笑。だからなのかなぁ、大分とのご縁は凄く感じています。大分で去年やって、今年もやって、来年の劇作家協会大分大会の仕事をしてます。大分大会やるんだ?参加しよう、じゃなくて、何か仕事あるかなってたまたま話したら、いま大分大会が動いてるからやれば?って事でしたし。
一尾:ドーム広場にも思い出が?
春陽:そうですね。初めて来て一番印象に残ったのがドーム広場。96969(クロックロック。ノンバーバルのパフォーマンスチーム)でパフォーマンスをしに来たんです。演劇とは違う路上パフォーマンスで主要都市を回っていろんな人に観せたいって、その時は具体的に思ってた訳じゃないですけど、今改めて思えば観に来てもらう時代は終わりつつあり、観せに行く時代だとずっと感じていたんだろうなって。だからこそいろんな場所で路上パフォーマンスをやって演劇もいろんな人に観てもらえたらなってトライして、辿り着いたのがここ(ドーム広場)だった。笑。初心に戻れます。
一尾:今回の『トランスイマー』はどのような物語なんですか?心理学、ユング、集合的無意識とか難しそうな、、
春陽:『トランスイマー』は端的に言っちゃうと、ちょっと夢見がちで卑屈な女の子のラブコメなんです。なので別に難しい話じゃないんです。僕、人に出会った時に深入りするのが苦手で。コミュ症とかじゃなく。人と繋がるってとても幸せなことじゃないですか。親友になるとか。でもそれと同時にその人と話が合わなくなってしまう、うまくいかなくなってしまう不安が同時にやってくるんですよ。人と繋がる幸福と不安が同時に。
一尾:付き合った瞬間に別れる時のことを考えるみたいな?
春陽:そうです!付き合った瞬間、幸せの絶頂の時に別れる不安に襲われるっていう。そういう女の子の話で、なんとなく幸せと同時にやってくるのは幸福感だけじゃないっていうのが人間誰しもあると思っていて、それがテーマになっているかと。劇団5454は常に身近なものを題材にしてます。旗揚げ公演では、日常に転がる依存性をテーマに話を作りました。初めて洗濯をする30近くの男が回る洗濯機を見てると気持ち良くなってやめられなくなるという話。第2回公演は嘘。べつに人を騙そうと思ってつく嘘じゃなくて、人に合わせるために使う嘘の話だったり。
できるかぎり、全ての人が経験したり想像できるものにしたいです。『トランスイマー』に関しては、もう誰にとっても身近である眠り「夢」っていうもの。それは旗揚げの時から身近なテーマだったというか、ネタ帳にあったんですよ。でも、夢の世界って人間にとって究極に身近なのに究極に曖昧。誰も答えを持っていない世界なのでそれを具現化する、2時間の作品にするっていうことはすごくハードルが高いと感じていました。なかなか形にできず、3年くらい前に初めて『トランスイマー』の公演をしたんですよ。
一尾:今回は再演になるんですよね。
春陽:そうなんです。初演の時に出会ったのがユングの集合的無意識っていう心理学だったんです。夢っていうものを興味深く見ていった時に、哲学とか心理学とかいろいろ調べて、自分の感覚、自分が一番ワクワクするものを書けば、きっとお客様もワクワクしてくれるだろうと。ユングの集合的無意識は「あ、そういう感覚あるな」と、人と繋がる瞬間っていうのが夢の中では繰り広げられていると思っていて、それを土台にして世界観を作ってみたんですよ。
初演の時は、ユングの感覚と夢の世界を繋げましたよっていうドラマだったんです。繋げてみました、どうですか?っていう演劇だったんです。それってドラマはなくて、こういう物語あったらどうですか?みたいな、もしもこういう世界があったら?っていう。お客様の実体験には落とし込めなかった。それを今回は曖昧な世界を出来る限り具現化した。そこで起こるドラマにお客様が巻き込まれていく、共感していく、お客様も夢か現実かわからない世界にトランスしていく。その夢の世界観っていうものの淡さ、水中のような淡さ。そんな水の中をお客様と一緒に泳げたらいいなという思いで作りました。
一尾:夢のプールっていう発想はどこから?
春陽:どういう感覚が近いのかな?と思って、眠りに入る前は自分の感覚は自分のものじゃないですか?けど、夢の中で人の意識が混ざり合った時に、自分が持ってる記憶なのか、相手が持ってる記憶なのかわからないっていう感覚が凄く面白かったんですよ。なんで自分はこれをしゃべってるんだろう?なんでこの人は俺の事を知ってるんだろう?っていう夢を見ることがすごく多くて。それを具現化したらどこに近いかなって思った時にプールのコースロープを上から見たらちゃんとレーンが別れてるのに潜った瞬間に境界線がわからなくなるっていう、あの世界観がすごくマッチしていた。泳ぐっていう感覚、夢の中のゆらぎみたいなものは水中にも近いなって。だからプールになりましたね。今回、美術もプールのイメージなんです。
一尾:美術も初演の時とは違うんですか?
春陽:全然違います。プールの底や壁にあるラインとかがイメージになっていたりとか、舞台のど真ん中に水槽みたいなガラスの箱があるんですよ。それを外から覗き見てるだったり、そこに閉じこもってるっていうのが、プールの中にさらに小さな水槽を作って。照明もこだわって。プールの底で行われてる意識の話なんですよ。だから結構、美術もプールっていうものにはしっかりとこだわって作ってます。
一尾:前回みたいにセットを自分たちで動かしたりは?
春陽:ユニットの動かしはありますけど、中の形は変わってないのに、いったいここはどこなんだ?ってお客様が、、
一尾:考えながら?
春陽:そう。舞台は抽象なんですけど、常にそこの場所が誰の場所なのか?って疑心を抱き続けて、つまりここどこ?っていう逆にトランスしてくるというか。どこが本当かわからなくなる感覚が欲しいなって思って。だからお客様の思考が動いてもらうのが一番いいなって思います。
一尾:自分の体験からという事ですが、春陽君の恋愛観を教えてもらえますか?例えば好きな人ができたら?
春陽:すごい想像するんですよ、状況とか会話とか。学生の頃なんかは自分でも妄想癖が人より行き過ぎてるなとは感じていて。寝る前にデートの想像をして楽しんで、そのまま夢の中でデートしてるとかよくありましたし。実際、本当に付き合ってデートした時にもうテンプレが出来上がってる時があるんですよ。会話もシミュレーション通りでポンポンできるし。だからなんとなくロマンチックな印象になるじゃないですか?ちょっとクサいような事を想像しててそれがスムーズにできる男って。ちょっとクサいというかイタいというか。笑。あとは夢の中で会話した事なのか、実際に会話した事なのかわかんない瞬間が時々あって。これ言ったっけ?みたいな。
一尾:『トランスイマー』でもそんな展開が?
春陽:今回の話はそういう自分の不安感から見てしまった夢っていうものを現実世界でも信じて進んでいってしまうような描写もいくつもあって、現実なのか夢なのか、境界がわからなくなるというのがこのドラマのひとつ大事なことなんです。そういうところが自分の感覚と繋がってはいるんですけど、それを感じた事がない人もきっといると思うんですよ。その感覚を俺が体験したからいいんだ、ではなく、その体験を舞台上で具現化するためにはどうすればいいかを考えながら丁寧に描きたいなと思いますね。
一尾:前回の『好き』ももろに恋愛モノでしたが、作る作品は恋愛モノが多いんですか?
春陽:いいえ。過去、全くないわけじゃないんですけど、恋愛を題材のど真ん中に置いてる作品はほとんどないですね。恋愛を使わないでドラマを書ける方がカッコいいと思ってましたし。ドラマはだいたい恋愛モノじゃないですか。恋愛をいかにするかっていう。ハリウッドもこんなにカッコいい映画作ってんのに、結局夫婦の恋愛か!みたいな。けど、そういうことにこだわってる場合じゃないなっていうのもあって。
恋愛が多いなとか恋愛また使っちゃったなとか考えないで、もし主人公を描く上で人が好きな方がそのテーマが掘り下げられるんだったら別にいいじゃん!みたいな。恋愛をさせたくて恋愛をしてるんじゃなく、テーマ重視なんです。前回も「好き」っていう言葉を投げかけられないと始まらないから、もちろん恋愛をすべきですし、今回も自分の幸せを掴むっていうものはやっぱり恋愛にうとかった女の子が恋愛をするってことが一番スムーズでしたし、そこに不安感や自分への疑心を感じるのも恋愛だなと思って。だからテーマを描く上で恋愛が一番しっくりきたんです。
一尾:恋愛モノを描くと自分の恋愛感が垣間見えるじゃないですか、それって恥ずかしくないですか?
春陽:そうなんです、だからきっとずっとやりたくなかったんですけど。笑
一尾:笑
春陽:やっとそういうのからちょっとずつ抜け出せてるような気がして。全部自分から生まれているものだし、責任にしたいし、かといって自分とは関係ないものだからこそ書けるものもあるだろうし。それこそ夢の世界じゃないですけど、自分の意識なのか人の意識なのかっていうのをあんまり考えないで書いていた方がすごく自由だなと思って。これは自分の言葉だから丁寧に書こう、これはあの人からもらった言葉だから自分なりの言葉に直してから書こう、じゃなくて。なんかスーっとそこに浮かんでるものを掴んでくような感覚で書いてるのが『トランスイマー』で。
自分が考えてる事って自分のみで作ったものじゃないじゃないですか。誰からもらったかわからなくて、自分で考えたような気がしてるだけで。自分のでもあり、自分のでもないし、あの人のであり、あの人のものではないし。自分自身が誰のものなのかわからないっていうことをすごく感じることもあるので、あんまり恥ずかしさがなくなってきましたね。「プライベートが垣間見えますね」って言われたら、あぁこんなふうに見えてるんだなって面白いですし、「意外ですね」って言われたら、やっぱりそういうふうに見えるんだな、とか。
一尾:作品を作る時はいつも日常の一片から膨らましていくんですか?最初からこんな物語を作ろう!っていうのは?
春陽:ないですねぇ。そういう作家さんももちろんいると思うんですけど全くないですね。今回ももちろん夢への興味からなんですけど、再演をやるにあたって描きたかった人は、そこら辺で独り言しゃべってるおじさん。ああいう人達って何なんだろう?って。生きてるのに同じ空間にいない人ってこの世に結構いる気がするんです。彼らがいつも興味深くて。もしかしたらあれって起きながらにして夢の世界、無意識の世界と繋がってるんじゃないかな?って想像した時に、あの人達って僕らみたいに夢と現実が眠りを境にして別れてないニュータイプなんじゃないか?みたいな。すごく無敵な感じがするというか、何が見えてるんだろうなって。それをベースにキャラクターを作ったりもしてて。だから日常で見たおじさんが何者なんだろう?っていうことと、夢の世界が繋がりそうだな、とか。
『時喰』っていう話は「時間を食う」っていう言葉から作った作品で。僕、二度手間が超嫌いだから、これ言ったじゃん!とかのストレスが尋常じゃなくて、笑。自分のこのストレス何なんだろう?二度手間、時間を食われるのが嫌いな男。「時間を食う」って言葉がすごく面白かった。じゃあ物理的に時間を食べられたらどうなるんだろう?っていう、ちょっと本格SFにも挑戦してみたかったのもあって。それも最終的に、、僕ああいうおじさんが好きなのかもしれない。笑。あの人達は時間に閉じ込められた人間であるっていう想像もしたんですよ。時間を食われて今どこに自分がいるかわからないんじゃないか、って。
一尾:時間を超越してそうだけど、、
春陽:ブロック宇宙論っていうのがあって、僕らは脳内で時間を過去から未来に流してるけど、自分の時間、生まれてから死ぬまでの時間は全部平面上にある、と。でスポットライトみたいにパッパって光が当たって見ている。だから過去をふと思い出す時、この1秒後には小学生のときの自分が本当の時間軸なのかもしれないっていう、ちょっとよくわかんないんですけど。なんとなく過去から未来に僕らがうまく整理できる時間軸っていうものは歪んでるかもしれないよ?ってことを言われて、歪んでないやつ誰だろ?って思ったら、あそこにいる!みたいな。時間も僕らにとって身近じゃないですか?
一尾:人間が決めた定義であって曖昧なものだけどね。
春陽:でも誰もが持ってる概念。そういうものをちょっと歪ませてみて、歪ませた正体、答えを作りたい、とか。だから日常に当たり前にあるものの視点を変化させた時に大切なものが見えてくるような作りをいつもしたい。物語がボンって出てくる事は全くなくて、「あ、そー言えば時間ちょー大切だわ」「好きって言葉が使えなくなったらどうしよう」とか、夢で記憶の整理ってよく言うけど、その記憶の整理が正しくなかったら?整理が下手だったら?って、なんとなくそういう仮定とされてるものを掘り下げてくとすごく生きやすくもなるし生きづらくもなるし。生きやすくなるにはどうしたらいいんだろう?ってその堂々巡りが好きで、なのでそういうふうにいつも物語が始まってますね。
一尾:では最後に大分の方へメッセージをお願いします。
春陽:今回、夢とか記憶の話なんですけど、今ってAIとかネットに依存する文化も多いですよね。脳内の世界の方が、意識の世界の方が強くなっていくような、体は使わないで脳内だけで生きていける例えもいっぱいあって。それが自分の現実で起こっている幸せと不安っていうものに耐えられなくなった女の子が脳でうまく整理できる場所に逃げ込んでいくような話とリンクするところがあるんじゃないかと。テーマはあるけど、ファンタジーで王子様に出会って恋愛をしてうまくいくのかしら?って不安になるだけの、なんでもない物語というか、3秒で話し終わるような話かもしれないんですけど、やっぱりそこに日常にある睡眠だとか夢だとかいろんなキャラクターたちをランドリーなりの描き方で(どこがランドリーらしさって自分たちでもよくわからないですけど)きっと他では見れない切り取り方ができてる瞬間がいっぱいあるはずですので、それをぜひ見つけに来ていただけたら嬉しいです。
これからも大分公演を続けていきたいですし、来年は、これも再演ですが、ランドリーの代表作『ト音(トオン)』を持ってきたいと思ってるんです。男の子の脳内で起こりえる話で、ちょっと異次元、異空間な話ではあるんですけど、誰にとっても身近なものでもあるし、とてもエンタメですので、笑いながら見られて、最後にドキッとする、皆さん大好きなどんでん返しがある作品です。大分の皆さんには今後もずっと観に来てもらい続けなきゃいけません。今回の作品をまずお見逃しなくお願いします。「また来て!」と言っていただけるよう劇団員スタッフ一同、頑張ります。ホルトホール大分でお待ちしています!
劇団5454(ランドリー)第12回公演
『トランスイマー』- 眠りに棲みつく研究者 –
【開催日】
2018.05.31 thu
【時間】
14:00 – /19:00 –
受付開始は開演45分前から 開場は開演30分前から
【会場】
J:COM ホルトホール大分 1階 小ホール
〒870-0839 大分県大分市金池南一丁目5番1号
【TICKET】
全席自由
【一般】前売り:3500円 当日:3800円
《割引・各券種すべて前売りのみ》
【グループ】3000円(3名様以上まとめてのご予約)
【学生】2500円(当日受付にて学生証提示)
◆学生チケットは、公演当日、受付にて学生証確認の上、お渡しとなります。必ずご持参ください。
◆応援しているキャストがいらっしゃいましたら、備考欄(特記事項)にぜひご記入ください。
◆開演時間を過ぎますとご入場頂tけない場合もございます。お時間には余裕を持ってご来場下さい。
◆チケットを紛失した際に仮券を発行致しますが、本券をお持ちのお客様がいらした場合、本券が優先になります。
◆未就学児の入場はご遠慮下さい。
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