「紙」と聞いて何が最初に思い浮かびます?
生活に温度を与えてくれる雑貨屋さん「SPICA」、フォーが美味しい「スパイス食堂クーポノス」が並ぶ永石通りにまた新たな息吹が。
朝見神社の鳥居のほど近くにある株式会社 樋口紙器工業所。
ここの三代目である樋口太希がパートナー児玉春佳と共に作り上げる新たな紙のプロダクトは歴史ある機械から生み出されるモダンなアクセサリーたち。
昨年に紙のプロダクトブランド<ilocami (イロカミ)>を立ち上げ、オンラインショップと知り合いの美容室で販売していましたが、現在は全国に販路を広げるため展示会の出店に向けての資金集めと新作の商品製作に勤しむ毎日。
「紙」の存在価値の向上と新たな発見をしてもらいたいと意気込む二人だが、資金集めに四苦八苦し、クラウドファンディングで資金調達中です。
https://camp-fire.jp/projects/view/17820
400,000円を目標に掲げていますが、まだ239,000円(18日16:00現在)。
タイムリミットまであと一週間を切りました。
<ilocami>立ち上げのきっかけや紙への想い、プロダクト、これからの<ilocami>のことを二人に聞いてきました!
二言目には「不器用ですから。」と聞こえてくるような二人。
今時なモノを作っているのに、やっぱり中身は職人さんなんですね。
真面目さが伝わってきます。
もし二人のことを応援したい!と思ってくれた方や素直に商品が欲しい!と思ってくれた方がいたらクラウドファンディングにて力になってあげてください!
「紙」といえば、やっぱりティッシュかなぁ。
これから大量に必要になります。笑
<ilocami>インタビュー
Yadorigi編集長 一尾(以下、一尾):東京でアパレルの仕事をしていた樋口太希さんと、建築の設計をしていた児玉春佳さん。2人が出会って“ilocami”を始めたきっかけは?
樋口太希(以下、樋口):実は彼女なんですけど。笑。最初に出会った時から二人とも“ものづくり”がすごく好きで。自分もここ樋口紙器工業所っていう父の会社に勤めだして。うちは丸型のパッケージを作っている会社なんですけど、パッケージに限らず紙でもっと付加価値の高いプロダクトができるんじゃないかという想いで、一番最初に“COPACO(コパコ)”っていうブランドを立ち上げました。“COPACO”は紙を使った生活雑貨を打ち出していくブランドなんですが、その第一弾商品として“T-CLOCK”という紙の時計を作りました。このT-CLOCKは大分で出会ったデザイナーさんにデザインしてもらったんですけど、もっと自分自身のイメージをダイレクトに表現できるブランドが欲しいと思っていた時に彼女と出会って。
児玉春佳(以下、児玉):建築の設計をしてたんですけど、もっと自由に感じた事を表現できる場所が欲しいという思いがあって。それから海外の建築を見る目的で一年間海外留学に行ったんですけど、こっちに戻ってきて彼と出会いました。そんな時にいつもお世話になっている美容師さんから「アクセサリーを作ってほしい」とお願いされたんです。もともとその美容室の名刺や什器を作る手伝いはしてたんですけど、アクセサリーを作るのは初めてで。いろんな素材で作ってたんです。木を使ってみたりガラスを使ってみたり。アクセサリーってどこにでもあるじゃないですか。絶対どこかで差別化しないといけないなって思ってて。そんな時に彼が“COPACO”で使ってた紙をくれて作ってみたんです。そしたら思いのほか可愛くできて、紙の可能性をもの凄く感じたんです。それで一緒に作ってみようかって言ってくれて。
樋口:一般的に紙っていうとメモ帳だったりノートに使われてるような薄い紙を想像される方が多いと思うんですけど。紙は紙でも特殊紙というジャンルもあって、この特殊紙はそれぞれ特徴があって、その種類も何千とあるんです。僕もこっちに帰ってくるまで紙に特別思い入れとかなかったんですが、今の会社に入ってからそれを知って。板みたいに固い紙なんかもあって、こんなに色んな種類があるなら、紙でなんでも出来ちゃうんじゃないかと思って。児玉からアクセサリーを作ると聞いた時も「できるな!」と思い“ilocami”を立ち上げました。ブランド名の由来は、数多くある個性豊かな紙の種類を“色”という言葉に例えて、その個性を活かし、際立たせ、新たなカタチにしていくという意味で“ilocami”と名づけました。
一尾:東京でアパレルの仕事を続けたい!とは思わなかったですか?
樋口:長男なんで、いずれは継がなきゃっていう思いはあったんですけど、、本当、東京が楽しすぎて。笑。刺激的な街なので。そういう感性なんかも向こうにいるのとこっちにいるのと磨かれ方が変わるというか、、そういうのからなかなか離れられずにこっちに帰ってくる決心ができなかったんですけど、父が長期の入院をすることになった時に、母から「もうすぐ30になるから、そろそろ腹くくって帰ってきてもいいんじゃない?」っていう話をされて。確かに東京生活は楽しかったんですけど夢というかコレのために頑張ろうってモノが向こうでは持ててなくて。なんとなく楽しく友達と遊びに行ったり仕事しながらっていう生活をしてて。こっちに帰ってくる=のちのち会社を自分が引っ張っていかなきゃいけないっていうのもあるので。決心というか悩んだところもあったんですけど。今は前向きに今までやってきたどの仕事よりも楽しんでやれてます。
一尾:紙の魅力や紙への情熱みたいなものはありますか?
樋口:アパレルをやっていた事もあってファブリック系のものにはよく触れていたんですが、服を作る時もやっぱり素材選びから始めるんですよ。いろんな生地を見て、この生地使ってこういうの作りたいな、とかイメージを膨らませていくんです。“ilocami”のアクセサリーを作る時も何千種類ってある紙の中から自分の好みの紙を探す事から始まるんですが、それが洋服の生地を選ぶ感覚と似てたんですよ。パッケージ屋とアパレルって全く異業種なんですけど。その経験だとか感覚を活かして何かできるんじゃないかって想いが“COPACO”を立ち上げた時くらいから芽生えてきて。パッケージ自体、商品に着せる服のようなものですから。だから自分の今までの経験が無駄じゃなかったなって。
一尾:一番好きな紙は?
樋口:こいつです!(たくさんの紙の束から指を差す)GAファイルっていう紙なんですけど。こんなに厚くて強度のある紙が、、普通、名刺を作る紙がだいたい180kgくらいなんですけど、900kgっていうそんな紙があるんだっていうのをこの紙で初めて知って。色合いとか表面の風合いとかもすごく紙らしい、ざらっとしたような風合いもありつつ、紙とは思えない強度を持ってるところがすごく好きで、まずはこれを使って作りたいなと。商品のGAシリーズはこの紙を使っています。すごく高い紙なんですよ、実は。笑。アクセサリーを作るって話を聞いた時もこの紙を使おうと決めてて彼女に一番最初に見せました。今後発売する新シリーズもGAファイルの上に紙を貼合(貼り合わせ)して作っていこうと思ってます。
一尾:商品はどんなものがあるんですか?
児玉:ピアスとイヤリング、バングル、ネックレス、それとリングがあります。価格帯は3,000円〜です。素材は全部GAファイルを使っていて上に乗せる箔の色を変えています。今はソフトウーペシリーズも製作中です。パッケージも同じGAファイルを使って彼が作ってくれていて、私がアクセサリー製作を担当しています。もともと好みが似てたので、意見を言い合っても最終的にはうまくまとまることが多くてやりやすいんです。GAシリーズは金属と紙っていうコンセプトで、今後はいろんな素材と紙の組み合わせを楽しめたらなって。紙にこんなに可能性があるって知らなかったので今後もっと面白いものが作れそうだなって思ってます。20~30代のおしゃれを楽しんでいる方にはもちろんですが、普段アクセサリーをつけられない方にも、雑貨やステーショナリーを手に取る感覚で身に着けてもらえるものを目指しています。
一尾:パッケージもすごく可愛いですね。樋口さんがパッケージ担当ということですが、自分の作品を作りたい!って思うことはないですか?“COPACO”の時のように!
樋口・児玉:笑
樋口:もちろんそういう気持ちもあるんですが、女性の感覚的なものは自分がうまく掴めない部分でもあるので。まぁ彼女のセンスが良かったのでそこは任せようと。笑。自分はパッケージデザインを担当する事になりました。“ilocami”ではアクセサリーというジャンル限定でやることも考えたんですけど、他のアクセサリーブランドにはできない試みというか、紙だからこそできる別の提案もしていきたいなっていう想いがあるので、今後アクセサリー以外のプロダクトを展開する可能性もあると思います。アクセサリーに関しても今は紙と金属を組み合わせてますが、今後、紙を「なに」と融合させていこうかを考えていて。やっぱり組み合わせるモノによって同じ紙でも見え方が違ったりするので。今は資金もないですし、樋口紙器にある設備だけで商品を作ろうとしてるんですけど、例えば3Dプリンターだったり、レーザーカッターのようなものがあれば組み合わせる素材の幅が広がっていくと思うので、少しづつでも揃えていければいいなと思います。
一尾:商品を買う側からすると紙ってすぐ劣化したり、汚れたりするかも?っていう心配があるんですけど工夫してることはありますか?
樋口:他のアクセサリーブランドさんが使っているような素材と比べると、紙は耐久性の面でデメリットの方が多かったりするんですけど、GAシリーズに関して言えば、GAファイル自体、水には強い紙でさらに防水加工して水や汗には強くしてるんです。それでも他の素材と比べて弱さがあるのも事実なので、そこは自分たちもまだまだ工夫のしようがあるなって。ただデメリットもあるけど、他の素材では出せない紙ならではの良さもあって。自然な風合いだったり触感っていうメリットの方をどんどん前に出していきたいです。紙の価値を変えていきたい!っていうのが自分たちの一番の想いなので、個性豊かな紙がたくさんのがある事や、それを使って新たなプロダクトが生まれる事を伝えていきたいです。僕みたいな仕事でもしてないと、なかなかこんなにたくさんの紙と出会うことなんかないと思うので、自分たちの商品やブランドを通して世の中に紙の楽しさや可能性を発信できたらいいなと思ってます。
児玉:あとは紙が弱いっていうデメリットの部分に関しては、ちょっとでもカバーしたいっていう想いもあるので紙のパーツの交換を無料でやっています。まだあまり打ち出せてはいないんですけど。笑。購入していただいた方へのお手紙には必ず書くようにしています。
一尾:もともと樋口さんは東京で働かれていましたが、最初から東京で販売しようとは思わなかったですか?大分から発信しようと思った意味は?
樋口:東京でのやり残した感はずーっと残ってて、、何かやり遂げた感覚もなくこっちに帰ってきて。ただ、帰ってきてから大分のような地方からでも東京に届くものを作れると証明したいと思ったんです。樋口紙器というバックボーンがある事で自分たちが表現できる事の幅も広がると思いましたし。こっちに帰ってきて思ったのは大分ならではの良いモノがたくさんあるんですけど、今の自分たちの世代がそれを欲しがるかっていうと何かが足りない気がしたんですよ。食べたらすごく美味しいし、手に持ってみたらすごく使いやすかったり、確かに品として良いモノっていうのがあるんですけど、見せ方や伝え方、発信の仕方だったり、要はブランディングの部分だと思うのですが、それがすごく勿体なく感じて。僕らだってまだ上手くブランディング出来ているとは到底言えないのですが、、、
大分県内でいえば〝佐藤防水店″ さんはすごいスピードで県外へ広まってますよね。以前、トートバッグを作ってもらおうとした時、2〜3ヶ月待ちと言われて驚きました。笑。“佐藤防水店”さんは一つの目標です。僕らも“ilocami”というブランドを全国に普及させる事が出来れば、そこで得た知識や経験を活かして、同じように地方から何かを発信しようとしている方のお手伝いが出来るんじゃないかと思いまして。
一尾:全国展開に向けて展覧会もあるようですが、これからの“ilocami”は?
児玉:近々、展示会が行われるんですけど資金がなくて。このままだと展示会にも出展することができなくて、展示会に出展しないと全国への販路も広がらなくて。今までに何件か飛び込みで、アクセサリーを扱って頂けるお店を東京・大阪・福岡とまわってきたんですけど。やっぱり展示会でうちの商品のラインナップだったり、競合店や外部からの反応を見てから決めたいっていうショップさんがほとんどだったので展示会への資金を集めるためにクラウドファンディングを始めました。展示会には他のブランドの商品もたくさん並んでいるのでショップのバイヤーさんの目に留まるようなブース作りだったり、商品だったりを作るのもお金がかかるのでクラウドファンディングで資金を募って展示会に出して、販路が広がってくれればって。
樋口:新しいシリーズも打ち出していきたいんですけど、新しい商品を作るにも必要になるものが色々出てくるんです。それに費やせるだけの利益を生み出せてないのでもっとこうしたいのに手が出ないっていうところが結構あります。利益を生むには全国に販路を広げていかなきゃいけないんだけど、販路を広げるためには展示会に出展しないといけない、、、でも展示会に出展するには膨大な費用がかかる、、、正に負のスパイラルです。笑。そこでクラウドファンディングで支援を募る事にしたんです。ここをクリアしないと次の展開にいけないので、、、展示会ではGAシリーズとソフトウーペシリーズ、それから春夏に向けた商品も発表したいので、その制作費に関してもクラウドファンディングで募る資金に入れ込んでます。“ilocami”を始めた時には児玉は児玉で仕事があって本業が終わった後に“ilocami”の製作をするっていうスタイルでやってました。ただブランドの宣伝をしていく内に反響が大きくなってきて本業との両立が厳しくなってきたので、児玉が本業をやめて“ilocami”一本でやる事になりました。
一尾:樋口さんはまだ樋口紙器工業所で働いた後に“ilocami”のことをやってるんですよね?定時で仕事を終えて、“ilocami”の製作をすることに樋口紙器工業所のスタッフから反発はなかったですか?
樋口:相当な反発を覚悟してました。自分が社長でスタッフが他のことをし出したら絶対反対すると思いますし。笑。でも樋口紙器で催しをやる時なんかにアクセサリーを並べているとダーっと駆け寄ってきて「紙でこんな素敵なモノが作れるんだ!?」と喜んでもらえる事が多くて。その様子を見てスタッフの皆も“ilocami”の商品が樋口紙器工業所で作られることを誇らしく思ってくれてます。それが何より嬉しいですね。
一尾:現在はクラウドファンディングで支援者を募っているようですが、応援したい!って思ってくれた支援者にはどんなリターンがあるんですか?
児玉:支援の金額を3,000円からに設定しています。オンラインショップでは3,000円のものなら+送料で販売してるんですけど、お礼のメッセージカードとGAシリーズから好きな商品を1つ選べますっていうちょっとお得な内容にしているので、紙に対する不信感がある人でも気軽に手に取って頂きたいなって想いがありこの3,000円の枠をつくりました。金額によって展示会への招待状だったり、オリジナルのアクセサリーが作れるものもあります。
樋口:大分県を盛り上げて町に還元できるようなリターンを作れたらいいなと思ったんですけど、今自分たちでできることはアクセサリーを作る事位しかないし、それが一番力を注いでやってきた事なので!これが今できる一番のお返しかなって。
一尾:最後にこれを読んでくれている方へメッセージを!
樋口:紙が持つ魅力や楽しさ、可能性に僕らなりの味付けをして、より生活に身近な形にして伝えていくことが僕らの使命だと感じています。皆さんの紙に対する価値観を変えていきたいです。自分たちにできる事はそれくらいしかないと思うので。
一尾:楽しいですか?
樋口・児玉:楽しいです!!
<ilocami>
樋口太希・児玉春佳
HP www.ilocami.com
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