7月5日からwakako ceramics exhibition「あの、夏の日」が始まります。
場所は7月4日、湯布院の湯の坪街道に新しくオープンしたLINGON cookiesに併設されているギャラリー。
クッキーの甘い香りに誘われてお店に近づくと、、そこには地中海を思わせる真っ白な空間にずらりと並ぶブルーの器たち。
新作は沖縄の海からインスピレーションを受けて制作されたという透き通るような青やクリームがかった優しい黄色、定番の白い器がティーカップやお皿、一輪挿しなど様々に形を変え、約250点が展示されています。
今回は陶芸作家の坂本和歌子さんに器の制作において意識していることや陶芸家としてやっていけるキッカケとなった出逢いや選択とタイミングの大切さを語って頂きました!
展示会は7月31日まで開催されていますので、少しでも陶芸に興味を持たれた方はぜひ、湯布院まで足を運んでください!
気に入った器があれば、その場で購入もできます。
お帰りの際はお土産にLINGONの美味しい手作りクッキーもどうぞ!もちろん自分のも忘れずに。
以下、インタビュー
Yadorigi編集長 一尾(以下、一尾):テーマになっている「あの、夏の日」というのは、いつかの夏の思い出がそのままテーマになっているんですか?
坂本和歌子(以下、wakako):夏の思い出は湯布院とは関係ないんだけど、沖縄が好きでよく行っていて、沖縄の海が好きで。凄く人が好きで、場所も好きで。西表島とか波照間島とか行くと時間がゆーっくりなのが好きで。沖縄が好きな人にはそう言う理由の人が多いとは思うんですけど。2週間とか行ってたのはもう10年以上前とかかなぁ。その夏の思い出がすごく大切で。秋に展示会をする事が多くて、夏に湯布院で展示会するっていうのは初めてだったので沖縄に行った時のことを思い出して、うみいろをメインに作ろうと思ったので「あの、夏の日」というテーマにしました。
一尾:いつも展覧会に向けて作品制作する時は、いつかの思い出がテーマになってるんですか?
wakako:そんなこともないのですが、今回は夏=海っていう感じで。どこの海が好きかって言ったら、沖縄の海が好きだなぁって。
一尾:沖縄にはまだ行ったことないんですけど、オススメの場所はありますか?
wakako:波照間島に行ってほしいです!なーんにも無くって、海だけ、、
一尾:日本最南端の島でしたっけ?
wakako:そう。
一尾:大分からだと、、
wakako:大分からだと福岡に行って福岡から石垣島に行って、石垣島から行けたかな?ちっちゃいフェリーに乗って。
一尾:波照間島かぁ。
wakako:自転車で1周、1時間か2時間で出来る。海がずーっと真っ白で。
一尾:砂浜が??
wakako:海が綺麗すぎて、ずーっと海の底が見えるの。ずーっと先まで。
一尾:あぁ、それだけ透明だから。そんな海、見たことない。
wakako:ぜひ!もう1回見たい!
一尾:笑。それだけ綺麗な海だからこそ白い砂浜の色と相まって今回のあの綺麗な淡い青色が表現できてるんですね。
wakako:できてると思います。
一尾:あの青い色はどういう風に付けられてるんですか?
wakako:一尾くんも見たと思うのですが、かけたらうみいろでも濃いものと薄いものとかあるんです。釉薬はかけるのが難しくって。良い色を出す為に濃くかけすぎるとブツブツが出たり、釉薬が垂れ過ぎて溶けて棚板にくっついてしまったりする事があります。
一尾:段階としてはどういう風に作られていくんですか?
wakako:形を作って、それを削り出して、マグカップだったら把手を付けて。半乾きの時に。それをよく乾かして800度で窯で一度、素焼きをして。それを何日か窯の中でゆっくりと冷ましてから取り出して、処理をして、釉薬をかけて今度は1250度で焼くと出来上がりです。
一尾:温度によって色が変わったりもするんですか?
wakako:そういう釉薬もあります。結構気が長くなる作業です。笑。この器、どのくらいの期間で出来るんですか?とか何個くらい一気に出来るんですか?とかよく聞かれるんですけど。窯の大きさにもよるし、梅雨時期だと雨で乾くのが遅かったり。反対に夏は早く乾いたり。例えば10個作ったら、その10個は1ヶ月同じ経過で出来ていくので、1個がどのくらいの期間でできるとかではないのです。
形成から出来上がりまでがだいたい1ヶ月~2ヶ月くらいかかります。
一尾:今回の展覧会の製作期間も2か月くらいですか?
wakako:そうですね。
一尾:2ヶ月であれだけの数の器を作れるんですね。
wakako:今回、すごい展示会をするにあたって自分がしたい事が結構決まっていました。夏らしい涼しげな感じにしたいっていうのと青い器をメインにしたいっていう事と、どういう風に飾ろうとかも考えながら作ったので、いつもより搬入が早く終わりました。笑
一尾:展示会場のLINGONは前から決まってたんですか?
wakako:今回リニューアルオープンでLINGONになったけど、前の時も同じ会場でやらせてもらっていて。今回でもう4回か、5回くらいさせてもらってるから想像出来てて。上手くまとまりました。今回はやりたい事が定まって目標に向かったのでたくさん器が出来たんだと思います。
一尾:いつもテーマが先?それとも制作してから?
wakako:テーマが先。展示会の名前も器の名前を考えるのもすごい好きで。今回はこれでいこう!って考えて、そこから制作が始まります。
一尾:一つ一つ名前が付いてるのも、こういう名前にしたからっていうので形を作っていくんですか?
wakako:それは出来上がったのを見て、この名前が良いな。感じで名前を付けるうつわが多いです
一尾:「ふじかき」(富士山の形をした一輪挿し)も?
wakako:「ふじかき」は「ふじかき」にしようと思って作りました。
一尾:あれ可愛いですね。
wakako:あれはキャラクターっていう感じかな。器の中で。
一尾:たかもん的な?
wakako:そうそうそう。笑。キャラが立ってる感じです。
一尾:突然ありきたりな質問ですけど陶芸家を目指したのはいつからですか?
wakako:笑。えっとね、陶芸家を目指したというか、気付いたらなってたというか。最初は普通に事務員をしてて、事務員をしながら陶芸をしてた時期があって、、
一尾:それは陶芸教室みたいなとこで?
wakako:じゃなくて、大学で芸術文化短期大学で陶芸を習ってて、そこで2年、その後事務員をしながら陶芸の工房をしていました。
一尾:今、陶芸科って無い、、
wakako:今年、無くなったんです。泣。すごい寂しい、、それは本当に寂しいです。2年の上に1年専攻科っていうのがあって、そこまで行くくらい陶芸が好きで。3年陶芸していましたけど、絶対に陶芸家なんかなれるわけない、陶芸でやっていけるわけがないって、自分も思っていました。卒業した後、事務職員をしてて。その時、大学の先生から「工房はあるけど陶芸をする人が居ないから、しないか?」っていう手紙が来たんです。私だけじゃなくて、陶芸が好きだった人、みんなに送っていて。で、私と友達と3人で工房始めて。事務をしながら陶芸をしていました。午前中はお仕事をして、午後から陶芸して、日曜日は陶芸だけしてっていう感じで両立していたけど、26歳くらいの時にもう陶芸一本で独立してやっていこうって。自分で事務に向いてないなぁって思ったのと。座って患者さんを待ってると、この時間があったら陶芸できるのに!とか思ったり、、
一尾:笑
wakako:(陶芸が)好きすぎて、ウズウズしてて。その時に陶芸だけでやっていこうかなって思って。父にも言わずに仕事を辞めて。でも母にはね、1年で結果を出すから何も言わないで、、
一尾:言い切るところがカッコいい!
wakako:わかいからね。笑。26ですからね。笑。「何も言わずに辞めさして!」って親にお願いして。で、陶芸だけにして今があるっていう感じ。
一尾:一番最初の展覧会は仕事を辞めてからどのくらいかかったんですか?
wakako:辞めてからすぐにウフカフェさんっていう別府のカフェで、そこがスリランカティーを出すところで。なので、お茶のカップ&ソーサーとティーポットを置いたりして「tea time」展覧会をしたのが一番最初。2007年かな。
一尾:そこから、今や東京でも何度も展覧会に参加できるようになっていったんですね。
wakako:なんとか奇跡的に。笑
一尾:東京で展示会に参加できようになるまでの繋がっていき方を、ぜひ大分で頑張ってる若い作家の為に教えてください。
wakako:私は大分の人だけじゃなくて、東京の人にも知ってほしいと思って。若かったっていうのもあるんだけど、営業に行ったの、東京に。自分の好きなお店に。でも何もわからなくて急に行ったから受け入れてもらえないの。無名の作家だし。あぁわかりました、っていう感じで名刺だけ貰ってくれて。その時の対応で「あぁ、ダメだ。」と思って。そこで見つけてもらえる自分にならないと、作家にならないとダメやって思って。それで大分に帰ってきて自分を知ってもらう為にホームページを作ったりしたらクラスカさんから「ホームページ見たんですけど、作品を置いてくれませんか?」っていう連絡が来たんです。クラスカさんもその時がこけら落としで、一県に一つずつ何かを探してて、大分県ではなぜか私を見つけてくれて。他の県は特産物だったりもするんですけど、大分は作家の私を見つけてくれて。
一尾:じゃあ、47都道府県、それぞれで器の作家を捜してた訳じゃなくて?
wakako:ただ一県に一個、何か代表するモノを探してた時に、、それが「47」っていう展示会でした。「47」っていうクラスカさんのこけら落としイベント、、
一尾:に大分代表として選ばれたんですね。凄い!
wakako:その時は本当にうれしかったですね。とても素敵なお店でクラスカさんがどんどん有名になっていくので、私も幸せなことにだいたいの店舗に器を置かしてもらってるので、本当にクラスカさんのお陰なんですよね。
一尾:見つける力と見つけられる力が本当タイミング良く、、
wakako:タイミングがね、本当に、、私が工房をオープンして東京行って、帰ってきてホームページ作った頃にクラスカさんもオープンだったので同じ時間を歩んでる感じがして。
一尾:共に。それは運命を感じますね。
wakako:本当にそうなんです。
一尾:それはなかなか真似しようと思っても真似できない、、
wakako:本当に運が良かったんだと思いますね、それは。
一尾:wakakoさんはホームページを作ることで全国の人の目に触れる機会を得た。大切なのはより多くの人に見てもらうことなんですね。
wakako:本当にその瞬間は「ありがとう、見つけてくれて」って思った。大分でも何回か展覧会をさせてもらってるんですけど、私が医療事務を辞める時に「1年で結果を出すから。」って言ったはいいけど、自分に才能がある訳でもなく、つてがある訳でもなく、どうしようって思ってた時に、みんなに「仕事辞めます。」「陶芸一本でやります。」って営業して、陶芸に関することがあったらって言ってたら、そのうちの一人が「陶芸教室をしたいって言ってるところがあるから、やってみる?」って言ってくれて、そのお陰で医療事務を辞めてそのまま陶芸教室の先生になることができたんです。その時にmogu2っていうフリーペーパーに出させてもらって生徒さんも集まってくれて。
一尾:東京にいる友達の親戚に陶芸家の方がいて窯を持ってるからっていうので一回やらせてもらったんですけど、そこでちょっと挫折してしまって、、
wakako:えっ、もう?笑。早っ。1回で?
一尾:最初の土から空気を抜くところから、、
wakako:菊練りね。うちもやりますよ。笑
一尾:そう。で、ろくろで形を作っていくんですけど、センターを取るのがすごい難しくって。全然、自分が思ってる形にならなくて。結構、手先の器用さには自信があっただけに。
wakako:普通1回じゃ出来ないからね。
一尾:でもそれでもう、自分のセンスの無さに愕然としてしまって。笑
wakako:でも、どんな形でも焼いたら形になるって言うのが、陶芸の素晴らしいところだから、、
一尾:ところが、そうはならなかったんですよ。笑。数週間後に焼き上がった作品を送ってもらったんですけど、それを見てさらに落ち込みました。笑
wakako:縮むしね。10が9になるから。
一尾:難しい、奥が深いなって。
wakako:でも、やり続けることの大切さかな。ずーっと作り続けないと下手になるし。
一尾:仕事で一日中、パソコンとか無機質なものを触ってると土を触りたくなるんですよね。
wakako:うわぁ、原点。笑。原点というか幼少期の、、
一尾:粘土遊びみたいな。
wakako:たしかに粘土触ると癒されるってみんな言いますね。
一尾:冷たくて気持ちいいし。最近は土の上を歩くことすら、あまりないですもんね。また粘土遊びしたくなったらwakakoさんの陶芸教室に行きます。笑
wakako:ぜひ、癒されに来てください。笑
一尾:はい。なんか一昔前は陶芸=頑固親父のイメージがあって、器もいかにも、これが湯のみだ!これが茶碗だ!っていう作品が多かったと思うんですけど、近年では若手陶芸家の青木良太さんとかが出てきて、すごくモダンでオシャレな器を作ってたり、大分だと阿南維也さんが見た目に似合わず?可愛らしい作品を作ったりもしているんですけど、形がシャープだったり手触りがやっぱり男性的で。まだ陶芸=男性のイメージが強いんですが、wakakoさんの作品は女性ならではの繊細さや丸みから優しさを感じます。制作において意識していること、気をつけていることはありますか?
wakako:まず女性が使いやすいっていうのを結構考えていて。把手を大きくしたり、滑り止めのようなフォルムにしてみたりとか。持った時にたっぷり飲めるけど軽い、、
一尾:あ、そこ女性は重要ですよね。
wakako:女性はたっぷり飲むのが好きな人が多いので。私もそうやって飲むのが好きで。だから大ぶりな軽い器を作ろうかなとかって。あとは彩りが鮮やかなもの。白が定番で多いんですけど。デザインに関しては使っても可愛いけど、ただそこに置いてても可愛い形の器を作りたいなって思ってて。見た目のデザインとかラインが綺麗なものがいいなぁと思ってます。色とか形は自然の花とか、それこそ海とかに、、
一尾:インスパイアされて、、
wakako:うん。されて作ってます。
一尾:その影響されて出そう思った色、今回の展覧会では青ですが、自分の思い描いてる青を出すのは苦労しますか?
wakako:色を作る時は配合を10種類くらい薄いのから濃いのまで作って、その中から一番近い色を使うっていう感じですかね。今回は黄色のも薄いのから濃いのまでバーって作って、その中から選びました。でも毎回作ると、色がどうしてもちょっとずつ変わってくるんですけど、それはもうそれで違いを楽しんでもらうっていうのが手作りの良さかなって思ってます。形も含めて。今回は真っ白い空間の中の青い色っていうのに、すごくこだわった展示会なのでそれをみなさんにぜひ、観に来て頂けたらなって思います。
一尾:今日はありがとうございました。wakakoさんのお陰でもう一度、陶芸にチャレンジしてみようかと思える勇気が湧きました。笑
wakako:笑。ありがとうございました。
坂本和歌子
大分県出身。
大分杵築で繊細で美しく、
使いやすいうつわを日々、
追求しながら制作しています。
メール:info@wakako-ceramics.eek.jp
サイト:http://wakako-ceramics.eek.jp
【主な活動歴】
2014.8.29–9.15
大分・上野 kamomeにて『おはなとうつわ展3』を開催
2014.4.21–5.18
湯布院・LINGON にて展覧会『『あの、夏の日』を開催
2014.4.21–5.18
東京・丸の内STITCH TOKYOにて『手しごと展Vol.3大分のくらふと』に参加
2014.2.26–3.02
東京・青山SPIRAL にて『手から手へ くらしの中の道具たちVol.2』に参加
2014.1.31–2.13
東京・青山SPIRAL にて『うつわのレシピ展』に参加
2013.11.2–12.1
湯布院・blueballenにて展覧会『あなたとのうつわ展』を開催
2013.8.29–9.15
大分・上野 kamomeにて『おはなとうつわ展2』を開催
2013.6.12–6.18
東京・新宿伊勢丹 にて『contemporary japanと過ごす夏の家』に参加
2013.2.27–3.03
東京・青山SPIRAL にて『手から手へ くらしの中の道具たち』に参加
2013.2.1–2.23
東京・渋谷CLASKA Gallery & Shop “DO“渋谷ヒカリエ ShinQs店にて 『大分からの便り good thing from OITA』を開催
2012.8.29–9.16
大分・上野 kamomeにて『おはなとうつわ展』を開催
2012.6.1–6.13
東京・渋谷ヒカリエS hinQs 1Fにて『SoupStock Tokyoの家で食べる提案』に参加
2012.5.12–5.20
東京・恵比寿(広尾) l’Outil(るてぃ)にて、『坂本和歌子 器展『ときをかざる』を開催
2011.11.2–11.30
湯布院・blueballenにて展覧会『ひととき。』を開催
2010.5.18–6.28
福岡・博多阪急「ART CUBE」でうつわ『umihana』を展示
2010.10.15–11.21
東京・中目黒CLASKA Gallery & Shop”Doで” 開催された「ドーのクラフト展」に参加
2010.10.2–11.24
湯布院artegio shopにて、展覧会「まほうのじかん」を開催
2010.5.1–5.30
湯布院gallery blue ballenにてwakako ceramics個展「かざるうつわ」を開催
2010.4.29–5.5
大分・ART PLAZAアートホールにてwakako ceramicsとceramic art schoolの合同展覧会「はなすうつわVol.2」を開催
2009.12.1–12.7
横浜市にて開催された、社会福祉法人「杜の会」の陶芸展に招待作家として参加
2009.8.5–8.25
東京・新宿 伊勢丹新宿店にて開催された「北欧×日本 モダンクラフト&デザイン展」に参加
2009.4
エイ出版社『Discover Japan 4』にて紹介される
2008.4.30–5.6
大分・ART PLAZA アートホールにて春の展覧会 +ceramic art school発表会「はなすうつわ」を開催
2008.3.29–5.18
CLASKA Gallery & Shop”Do 第” 1回企画展「47」に出品
2007.1.28
杵築市新町にwakako ceramicsを開設
【school】
手びねりで毎月一種類ずつ日々のうつわをつくる教室です。
詳細はこちら http://wakako-ceramics.eek.jp/school.html
ー wakako ceramics exhibition「あの、夏の日」ー
【開催期間】
2014.07.05(土) – 07.31(木)
毎週水曜日は定休日です。
【時間】
10:00 – 17:00
【会場】
LINGON cookies & gallery
〒879-5102
大分県由布市湯布院町川上1510-7
TEL:0977-84-4968
URL:http://lingoncookies.jp