Pickup対談。森貴也×吉川緑の場合。

現在アートプラザで開催されているPickup Artist Exhibition vol.3。 参加作家である森貴也さん(美術家)と展覧会のコーディネーターである吉川緑さんによる対談。

どこから創作アイディアが生まれるのか?これからやりたい事など熱い思いを語ってくれました!

 

吉川緑(以下、吉川):作品について教えてください。

森貴也(以下、森):大小2つ展示してるんですけど、ショートケーキを作りました。大きい方は現在進行形で小さい方は僕が普段から使ってるステンレスとシリコンで作ってて、ステンレス部分は鏡面の様に磨いてて周りに写り込むのがデコレーションされるっていうイメージで作ってます。大きい方のショートケーキに関しては吉川さんに「Pickup Artist展をするから是非、参加してください!」って言われた時に、どうせ参加するなら既に作った物を持ってきて展示するだけじゃなくて、ここでしか出来ない事でここに来る人たちと関わりながら何か作れないかな、と。

可動式の壁がただ展示用のパネルとしてだけではなくて、別の事で使えると面白いなって思って、これをVの字にしてあと塞いだら、これもショートケーキの形にできるんじゃないかと思って。しかもこんな巨大なショートケーキがあったら子どもたちもワクワクするだろうなと思ったところがキッカケで作りました。で実際どういう材料で作ろうかと思った時にここにある壁を使うんであればトッピング材料もなるべくここにある物を使っていこうと思って新聞紙とか期間の過ぎたフライヤーとかを利用させてもらって花を作ったり鎖を作ったりしてます。内側に関しては普段ショートケーキの中に入る事なんてないので入れるようにしたくて、せっかく別府羽室台高校で非常勤講師もやってて美術を教えてますので、その子達にもお手伝いをしてもらって、内側の絵は主に美術部の子を中心にでっかいイラストを書いてもらってます。上の部分は川島さんと素材が被るんですけど竹でさりげなくイチゴを。

Yadorigi編集長一尾(以下、一尾):一見、竹とは思わないですね。

吉川:思わないですよ。

森:普段は展示パネルとして使われてる物なので遠巻きに全体を観ようとはしないし、梁があるのでショートケーキと気付く人がなかなかいないんですよ。でも今回、一緒にやるからにはショートケーキという事を気付いてもらいたいので、「ショートケーキなんです!」って言って。

吉川・一尾:あははは

吉川:もう言うしかない!

森・一尾:あははは

吉川:参加した人がこれを観たら小さい作品の写ったところがデコレーションっていうのが、わかってくれてましたよ。「あ、そういうことね」って。

森:あ、本当に!?それちょっと嬉しい!

吉川:私もそれで何か「あれ?」と思った。

森・一尾:あははは

吉川:「あ、もしかして!」と思って。普段森さんが作ってる物とすごい違うから。

森:大きいっていう点では似てて、それこそ今回参加してる阿南さんとかも今まで作ってきてる作品を知ってるんで「またデカいね!」って言ってました。笑

吉川・一尾:あははは

森:今まで作ってきた作品はどちらかと言えば人に手伝ってもらってというよりは自分一人で作った物を展示する方が多かったですけど、大学出た後、ワークショップとかに呼ばれることがあって、佐賀とか鹿児島とかある地域に呼ばれて、現地に滞在して何かやってくれって言われた時に地元人たちと関わったりとか情報を仕入れたりしながら作ることが凄く楽しかったし、それによってその場所が活性化出来るんだなって思ったし、人と繋がっていろんな事をやる事に、自分が一人でやる事以上の何かを生み出す事も時と場合によって出来るんだなって言うのを凄い感じた。こういう活動は今後も続けていきたいなって。単純に一人でやって、ある一定のクオリティーを追求する事は出来るけれども、例えば子どもの純粋な発想というのは、なかなか大人になった自分じゃ出せないと思うし、そういう時には子どもから学ぶ部分もあるし。

吉川:そうですね、ワークショップしてたら、その連続ですよね。

森:ある制限を与えたとしても、それを遥かに超える、、

吉川・一尾:あははは

森:こう斜めにする発想とかは凄い面白い!

吉川:あー、そうきたかー!って。

一尾:さっきも小さい子が長ーいの作ってたもんね。

森・吉川:そうそうそう。

森:まさか、そうくるとは!?ってね、しかも一番端っこを花に刺すし。笑

吉川・一尾:あははは

吉川:この展覧会のテーマは「大分にゆかりのある方を紹介する」っていうことなんですけど、やっぱり参加出来るものにしたい。

森:ちなみに吉川さんは作家として、今回はプロデュース側でしょ。とは別の作家としての何かこう刺激されたりしないんですか?

吉川:今、3年目なんですよ、アートプラザ。社会に出て3年目なんですけど、ず~と小さい頃から作る方だったから、すっごい最初は戸惑いがあって今でも戸惑ってる部分があるんですけど。そうですね、1回作品を燃やしました。この間。過去のもの。もう観てたらダメなんですよ。だから1回燃やしてリセットしようと思って。でも燃やす事で全部帳消しにする訳じゃなくて残ってるから。自分から出たものだし。今はちょっとすっきりして、ちょっと創作意欲も出てきて不思議な心境なんです。

森:まぁでも自分のキャパっていうのがね、ある一定の制限みたいなのがあると仮定すると何かを燃やしてそこにスペースを空けるのも吸収しやすくなるかもしれない。

吉川:そう思います。何か本当にちょっと描くのが辛くて、画家の方にそれは危険だって言われて、描くのがワクワクしたりしないんですよって、辛い時に描いちゃうんですよって言う話を去年したんですよ。それって観てる方はその絵を観て絶対辛くなるよね、楽しくはならないよねって言われて、そこから1年間は何も出来ず、、でこの間、燃やしてまた戻ってきました。

森:ちなみに燃やして灰はどうしたんですか?

吉川:家を引っ越したんですよ。引っ越したところに色々あったんですけど、そこに置いてきました。

森:ちなみに俺も作品を燃やした事があって意図的に表面を炭化させて内側から何か引き出せるんじゃないかって。あと実はショップの方に器置いてて、普段は器作らないんですけど、あれ実は燃やした灰の廃油を薬に使っていて。何でかって言うと2010年に佐賀の有田町で有田ガーデンプレイス2010かな。アートプロジェクトに参加させてもらった場所が富江文釜跡地。十一代まで続いてた窯元の一つで8年前に潰れてたですけど、そのスペースに何か展示してほしいって言われて。1ヶ月半くらいのイベントだったけど期間限定で十二代目として器を作ってやろうって。

吉川・一尾:おぉー

森:でもね、伝統とかそういうのって勝手に外から来た人が土足で入ってきて作っても良くないかなと思ったんで今まで自分でやってきた事のエキスを少しでも込めようと思って、大分から作品を運べるものは運んでどんど焼きみたいに田んぼで燃やして、灰とかを元々、使われていた釉薬に混ぜて一緒に焼いて、中にはステンレスとかも突っ込んで燃え残った炭とかもあったんだけど。作品が嫌になって燃やした事は一度もないかな。笑

吉川:私の中であの家はもう、そういうものなので。笑

森:ちなみに家ごと燃やしたいと思わなかったの?

一尾:あ、思った、本当はそうしたかったんじゃないかって。

吉川:本当はね。笑

森・一尾: あははは

森:実は壊れていく家を作りたくて。鉄とステンレスで結構作品を作ったりしてるんだけど、月日とともに壊れていく時間差を利用して鉄の方は茶色くなって錆びていくんだけどステンレスは長く保つので、その差を利用して作りたい。建物って基本壁から壊れていって骨の部分を剥き出しにした状態で、普通は壊れていく建物には入れないから、外から観る壊れていく家を作ろうかなと。骨組みを鉄で作って壁の部分をステンレスでちゃんと窓とかも作って、それが10年後、20年後、30年後って経っていくと鉄骨部分が勝手に変化していって外観は変化しないけど中は変化していくっていう作品を作りたいなって。

吉川:凄い、プロジェクトになりそう!どういうキッカケで案が浮かんできますか?

森:こういう時ですね。

吉川・一尾:あははは

森:人と話してたりとか、子どもが何かやってた時もそうだし、ふとトイレに行きたくなってっていう時もそうだし、日頃からアンテナを2、3本立ててる感覚。スタートは人と違う視点で、2つ以上の視点で物事を観るように意識してたけど今はそれが当たり前になって、いつでもポッと浮かんでくるというか。

吉川:なんか意識してネタ帳を前にして考えると浮かばなくないですか?

森:学生の時とかは忘れないように書き留めるように持ち歩いてたけど、いつの間にか持ち歩かなくなってて意外とそっち方が思いつく事があるなって。ただ忘れる事もあるけど。笑。本当に実現したものだけ書き留めて。

吉川:寝る前とか凄い思い浮かんだり、こうしたら面白そうとか。

一尾:森くんのショートケーキへの思いは何なの?

森:俺のショートケーキへの思い!?

吉川:なんでショートケーキなんですか?

森:先に作ったのは小さい方の作品で、鉄とステンレスのシリーズがあるんですけど、ただ自分のコンセプトだけじゃなくて単純に素材で面白い事がやりたいって思って。食べ物が食べられないもので作られてるっていう。

吉川:小さい方は指紋着けたくなりますよね。笑

森・一尾:あははは

森:それが大事。触っちゃダメそうなものを触りたくなるって思わせるような作品が出来てたら嬉しい。

吉川・一尾:触りたくなりますよねー!

森:だから俺の今、野外に展示されてる作品は触られまくってる。笑

吉川・一尾:あははは

一尾:指紋で柄作ってみたくなる。

森:それも面白いですね!

吉川:皆の指紋だらけになりますね。笑

森:ホールサイズで全部違う素材で作ってみても面白いかも。純粋に楽しむっていうことをやりたいなって思う。

一尾:普段ケーキを買う時はショートケーキが多いんですか?

森:いや、どっちかと言えばプリンとかシュークリーム。笑

吉川・一尾:あははは

森:先に小さいケーキがあって、可動式の壁を見た時に大きいのが作れそうって思って。素材もここにあるもの意外も使わないと出来ないなって思った時に、実は上のイチゴもコトブキヤっていう画材屋さんが持っていっていいよって言ってくれた竹で作ってるんですよ。

吉川:みんなで配置考えてた時にいろいろアイディアが生まれたのはビックリしました。川島さんも動かして会場を作ってる時に思いついたっていうのもあったし。

森:これ作るのにいろんな人たちと関われたのが凄い良かった。うちの生徒も凄い関わってくれて。

吉川:搬入は大変でしたね。

森:いやいや、ありがとうございました。

y:そう言えば、いろいろ起きたんでしょ?

森・吉川:いろいろ起きたんですよ。笑

森:スタート前日に「さぁ取り付けよう!」としたら天井より高い壁を作ってしまっててガツッて。笑

吉川:もう19時だった。。

森:22時までに撤収しなきゃいけないのに「どうしよう、どうしよう」って。そしたら吉川さんが親戚の方に電動丸鋸を借りてきてくれて。

吉川:本当、間に合って良かった。

森:あとで考えたら、そういうのも良い思い出になる。一人じゃなければ実現出来る事っていっぱいあるなって。笑

吉川・一尾:あははは

森:もっともっと色々やりたい!

森貴也 Mori Takaya

1981年 熊本出身。2005年 大分大学大学院 教育学研究科 教科教育専攻 美術教育専修 修了

主な展覧会・受賞

2010年 BEPPUAWARD2010グランプリ受賞(大分/Platform02)。

2012年 第11回大分アジア彫刻展 大賞受賞。第67回行動展 新人賞(東京/国立新美術館)。

2013年 大分合同新聞賞受賞。第25回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)宇部マテリアルズ賞受賞。第68回行動展 奨励賞 会友推挙(東京/国立新美術館)。

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