現在アートプラザで開催されているPickup Artist Exhibition vol.3。
参加作家である川崎泰史さん(アーティスト)と展覧会のコーディネーターである吉川緑さんによる対談。
アーティストとして日常をどう生きるべきか?内面を表面に写し出す作品はどのように作られるのか?
吉川緑(以下、吉川):今は深川番所で個展もされてて、どうでしたか?やってみて?
川崎泰史(以下、川崎):やってみて、難しいですね。なかなか思ったよりは売れてくれないですけども。
吉川:アートプラザで販売するのはアートマーケットでしか出来ないんですけど、販売するのは大変ですか?
川崎:大変ですね。やっぱりこれだけでやろうと思ったら、それ必要なんで。今年はそれをよく考えながらやってるんですけども、まぁ自分から売ってるんですけど。今までは自分から売らなかったけど、ちゃんと売ろうと思って。
吉川:今までは違ったんですか?
川崎:ギャラリーの人に全部任せてて。今年は個人的にも売って行こうかな、と。
吉川:今、別府を拠点としてやってますけど、別府に来たキッカケは?
川崎:キッカケはコストが安くて作れるからですね、やっぱり。清島アパートがあって、、
吉川:月1万円でしたっけ?
川崎:光熱費だけ1万円で大丈夫なんで。一番重要な事なんで最初は。そういう場所があるっていうのは嬉しいですよね。アーティストである時間が増えてくれば増えてくるだけ違ってきますからね。だから濃度はだいぶ濃くなりましたね。
吉川:別府に住んでみてどうですか?
川崎:全く問題は無いですよ。
吉川:楽しいですか?
川崎:全然、外に出て行けてなかったんですけど、ちゃんと生活してるというか、朝起きて自分でご飯作って、この時間からこの時間はアトリエに居るっていう。アーティストって適当な感じがするかもしれないですけど、それを決めないと自分がアーティストであるっていうのを忘れちゃうんで。しっかり決めてゆとりを持って生活出来たのは嬉しい事でした。
吉川:川崎さんはアートマーケットでもピックアップアーティストで今回も思ったんですけど、搬入とかがちゃんとシステム化されてるというか、、効率が良くてビックリしました!
川崎:笑。普段は自分でやらないから、なるべく皆が出来るような搬入方法とか、ちゃんと指示書も書きますけど。壊れてたら面倒くさい事が色々起こるので。笑
吉川:壊れてた事ありますか?
川崎:ありますね、過去に。ちょっと梱包が雑だったりすると。ガックリきますね。
吉川:う~ん。ギャラリーさんとの付き合いとか全然想像つかないんですけど、どういう距離感でお付き合いされてるんですか?
川崎:友達感覚的な感じもありますよ。仲良くしなきゃいけませんよ。笑
吉川:笑。でも、どの程度、仲良いんですか?
川崎:飲みに行ったりもしますよ。普通にご飯行ったりもしますし。会社の営業マンが取引先と付き合ってる感覚とそんなに変わらないと思いますよ。
吉川:アーティストって普通の人と違うって思われたりとか、さっきの日常生活じゃないですけど、凄い特別視されてるように感じる時があって、、以外と普通。。
川崎:ちゃんとするべき所は普通にしなきゃいけないですね。もちろん、社会と関わらなきゃいけないんで。なんだかんだ言って、家に籠って作ってる物は沢山あるんですけれども。誰かに観てほしい!誰かと繋がりたい!っていう想いはやっぱりあるので、その分、ちゃんとあるんですね。そこは。
吉川:そうですね。たまに人と全然違う事ばかりやればアーティストだって、、
川崎:あぁ、そういう時期もありましたね。今は礼儀正しいですよ、皆さん。
Yadorigi編集長一尾(以下、一尾):時代に沿って変わってきたと。
吉川:今回、川崎さんの作品大人気でして。じゃあ、買ってくれって感じだと思うんですけど。何でこんなに魅力があるんだろう?って言う人が多くて。彫刻って女性のフォルムの美しい所がフューチャーされがちですけど、川崎さんは内面から、、
川崎:内面が大切だけど、最後は表面ですね。だって私たちが見る情報って全部、表面じゃないですか?僕も表面を作ってますよ。内面とか言いながら。
吉川:最初は内面から入る?
川崎:というか、表面から得られる情報が作る手段になるんですね。今やってる仕事が自分の目にどう映るか?人の目にどう映るか?っていうのって内面を作る事になるじゃないですか?何か伝える為に。それを一番、重点に置いてるのかな。で表面を作ってます。
吉川:だから共感するのかなぁ。
川崎:、、を感じてくれてるんじゃないかなって。
吉川:うちのスタッフがポートフォリオを観た時に「いつもそばにいるね。」の下に説明を書いてたんですけど、それを読んで凄い感動してました。
川崎:あぁ、本当ですか!?良かった。そういう事を考えてた時期だったので。
一尾:ポートフォリオ観るとその人形の感情が下向きに出てる物が多いんですけど上向き、下向きっていうのはその時の感情によるもの?
川崎:そうですね。上を向いてる最近のは明るくなってきてるんですけど、そういう時期があるんじゃないですか?自分の生活が大切なので、、僕が感じてること、、そういう状態だったっていうのもあるし。例えば新しい土地に来たら、誰でも不安な面はあるでしょ?そういう時に作った物はそういう物しかできなかったりするんですよね。でもそれが一番大切だと思ってますね。
吉川:ちょっと話した事があるんですけど、大分で販売されてる作家さんに比べて安かったんですよ、値段が。値段付けるのはアーティストの皆さんとっても迷う事だっていう話を聞いてて。中には売るとかじゃなくて好きな物を作りたいとか。そういう風に考えて長年やってる方もいるじゃないですか。でも、これ一本でやるという意思に変わりはなくて。川崎さんはこれだけでやっていく為に売れる事、自分から売っていくっていう事をしてて。最初からそういう意思はありました?
川崎:もちろんそうでしたよ。お金に換えるべきだって。っていうか、完成したら自分の手を離れるべきだ!っていうのはありますね。作品は。
吉川:それはなぜ?
川崎:だって、そっちの方が楽なんですよ。何か生み出すと責任が出てくるので。作品に責任があったらダメなんですね。でもその分、僕が責任を取らなければいけない。でも買って頂いたら、所有者の手に渡るという事は僕の責任がちょっとだけ楽になるんですよ。
吉川:そっか。
川崎:所有するっていう責任も無くなるし。楽になるほどもっと作れるから。ただそれだけです。自分が気持ち良くなるために売ってるだけです。笑
吉川・一尾:あははは
吉川:へー、そうなんだ、そういう意見は初めてです。結構、手元を離したくないっていう方はよく居ますけど。
川崎:自分の手元から無くなれば無くなる程、新しい物が出来ますね。
吉川:何が制作意欲を突き動かしますか?
川崎:何が突き動かすか、、
吉川:楽しいからですか?
川崎:もちろんそれもあるんでしょうけど、それが必ずしも作る行為には結びつかないですね。う~ん、どうなんだろう。でも今は出来る事がこれしか無くなってるんで。これを選んでしまったんで。
吉川:もう今、辞めるわけにはいかない?
川崎:その責任は自分で取らなきゃいけないじゃないですか。だからかな。。でももちろん、好きですよ。
吉川:それは他の方もおっしゃってて。ここまで来たら辞められないって。
川崎:でしょ?まぁいつでも辞められますけどね。
吉川:そうですね、辞めるのはいつでも出来る、、
川崎:いつでも辞めてますけどね。作る為の責任は無い方がいいと思ってるから。そしたら作品が重くなるじゃないですか?だから、いつでも辞めて作ってます。笑
吉川・一尾:あははは
川崎:作る時は、凄い矛盾してるけど。でも自分と作品の関係ってそれくらい別のものですね。どんどん作品は軽くなってほしいので。その分、自分は重くなりますけどね。
吉川:初めて聞く意見です。
川崎:でも皆、そうだと思いますよ。やってる人は。わかんないですけどね。人のことは。そういう事が大切だと思ってやってます。
吉川:わかりました。
一尾:ほんとにわかった?
吉川:わかったかなぁ、、笑。わかってないかも、、これから咀嚼して。
川崎:ありがとうございます!僕もわかりませんもん。
吉川:でしょうね。わかってる人いるんですかね?
川崎:いや、いないんじゃないですか?
一尾:わかったら作る事を辞めるんじゃない?
川崎・吉川:そうですね。
一尾:こういうの作りたいって思うイマジネーションはどこから来てるんですか?
川崎:それは誰かと会った時だったり、美味しい物食べた時だったり。何かした時。日常の生活からですね。で、こういうの作ろうと思って。今日はこういう感じだなぁと思って作るけど、やっぱその通りいかないじゃないですか?でも作っていったら、僕は最初、粘土で作るんですけど。粘土付けていくと、その時の痕跡が残るんですね。全部、手から伝わって形になるじゃないですか。そしたら、粘土付けた僕の痕跡がこうなりたいんじゃないかなぁって意思とは別に身体が教えてくれる時があるんですね。「身体が教えてくれる情報」って僕は呼んでるんですけど。で、こうなりたいって身体が言ってるのに僕がこうしたいって言っても、やっぱり身体が作ってる方が優先になるんですね。こうなりたいんだったら、僕もこうしてあげようかなぁって。笑
吉川・一尾:あははは
川崎:で、そっからは自分の意志でこうなりたいんだったら、じゃあ、こうしたらどうかなぁってうのがあるんですよね。
一尾:じゃあ、粘土と対話っていうよりは、自分の意志と身体との対話?
川崎:そう、身体の方が正直だと思ってるんですよ。何よりも。それを大切にする事が一番だと思いますね。言葉とかでは上手く表現出来なかったり。でも実は身体は知ってるんじゃないかなって。そこまで行かない事もありますよ、作ってて。そういう時の方が良い物が出来る事もありますね。それが面白いとこでもありますけど。
吉川:作品は最初から立体ですか?
川崎:最初から立体です。立体ですけど、変わってきますね、常に。過去の作品と。作り方とか。
吉川:面白いなぁ。金沢でしたっけ?
川崎:はい、金沢です。
吉川:小さい頃から美術とか、、
川崎:いや、してないですよ。高校出てからです。
吉川:小さい頃は何して遊んでました?
川崎:小さい頃、何してたかな、、普通の子どもでした。秘密基地とかは作ってた。笑
一尾:必ずやるね、男は。
吉川:やりますね。笑。以外と皆さん、大学出てからとか、、阿南さんもそうだし。
川崎:へー、そうなんですか?
吉川:体育大学出てらっしゃって。今後も大分でやっていきたいですか?
川崎:出来る限りは参加したいですよ。何でも!
吉川:今、別府のデイリーヤマザキ別府駅前通り店に置いてますよね?これ終わったら観に行きます!
川崎:お願いします!
川崎泰史 Kawasaki Yasuhito
1983年 佐賀県出身
2010年 金沢美術工芸大学大学院鋳金専攻卒業
2010年 ART AWARD TOKYO入選
2012年 個展をFukagawa Bansho gallery(東京)にて開催
2013年 グループ展「スナックJIKKA」(東京/JIKKA)
2013年 5月 NPO法人BEPPU PROJECT運営の清島アパートにアトリエを移す。
人間の身体におけるかたちへの興味や、その美しさ追求で人物像を造形するのではなく、自我・人格・人柄など内面情報から着想し人物像を造形していくことをコンセプトにしている。