映画の一刻 ~日常とシネマの旅~ 第5便『やさしい人』2015.1.17sat – 1.23fri @シネマ5bis

大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5

メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。

一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。

個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。

そして何より空間が素晴らしい。

そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。

今回の旅は、「やさしい人」

どうぞ、お楽しみください!

大西明美さんへのインタビュー記事はこちら。

 

第五便「やさしい人」

 

2014年が終わります。(今日は31日)
今年は何回、日常から逸脱して異世界の旅をすることができましたか?

さて今回紹介する映画『やさしい人』は、2015年の映画初めとしておすすめするのはどうなんでしょうか?迷います。「 今年の映画の2本目はコレ!」がいいかもしれません。

いい映画なんです。

けれども、見る人を選ぶ映画でもあります。

なんでこんなことを書くかというと、映画の紹介をしていると、「いつも[いい]としか言わないし、いつも[面白い]という映画しか紹介しないですね。

「本当に面白いんですか?」と言われることがあります。

不思議なものです。一方では多くの人が、いい映画・面白い映画を見たい、けっしてハズレは引きたくない。だから面白い映画のみをいつも薦めて欲しいと思っているのに、です。

ついでに言うと、面白いだろうと思って見たのに、ハズレだった、ということがたまにあるのも良いと私は思っています。いいものを見て、そうでもないものを見て、いつの間にか自分の好みとセンスが育っていて、いい作品を嗅ぎ分けられるよういになっていく過程は、とても楽しいことではないでしょうか。

そういう意味でも今回紹介する『やさしい人』は、それにとても適した映画です。

こんな映画があるの?聞いたことも無い全然知らないなぁなどという方には、一見、面白さがうまく理解できないかもしれません(突然、ものすごく良いと感じてびっくりする方もいるとは思うのですが)。

この『やさしい人』のポイントは途中からガラリと流れが変わる、見事なまでのストーリー運びにあります。
後半の緊張感に目が離せません。と同時に、やるせなさに心が“ぎゅん”とします。

フランスのブルゴーニュ地方の小さな町トネール。そこに住む父親の家に、ミュージシャンのマクシムは戻ってきています。若い頃はパリで人気のロックミュージシャンでしたが、最近はスランプで曲が書けず、都会の喧騒を避けて一時的に田舎に居候をしています。そんな彼を、地元新聞が取材に来ました。やってきたのは若くて美しい女性記者。マクシムの目には、彼女が女神のように映るのです。彼の人生でもう一度やってくるとは思っていなかった昂ぶる気持ち。その気持ちを素直に行動に移すマクシムを彼女は照れくさそうに受け入れてくれるのですが、ある日突然、彼女との連絡が取れなくなります…。

この映画、私はこんな風に感じながら見ました。
人はふと気がつくと、夢を追っていた時期がすぎ、もやの中にぼんやりとしか未来が思い描けなくなることがあります。そんな時にもう一度素晴らしい胸ときめく出来事がほんの一瞬、やってきたとしたら、ただそれだけで幸せになるでしょう。でもいい歳をしたロマンチストな中年には当然のように手痛いリスクが待っていたように思います。そして何もかもわからなくなってしまう焦燥感が心を支配してしまいます。その時、人はどのようにそれを回避すれば良いのでしょう。でも、それを乗り越える「何か」とさらに再び出会うのです。そして、また光が差してくる、そうであって欲しい。

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あら、こうしてみると、これは新年の最初の映画でも良いかもしれないですね。
ではみなさま、ぜひぜひ『やさしい人』をご覧ください!!

さて、質問です。
なぜタイトルが『やさしい人』なのでしょう。
ちなみに原題は「Tonnerre  トネール」、この映画の舞台の地名です。
(フランス語で雷という意味もあるらしいのですが映画との関係はわかりません)

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2014年、私のたどたどしい文章におつきあいいただき、本当にありがとうございました。そして、2015年、もう少しがんばりますので、おつきあいのほどよろしくお願いいたします。

私にこのような映画の旅を見つめ直すきっかけをつくっていただいたYadorigi、一尾さんに感謝。

 

 

『やさしい人』

【上映期間】
2015.1.17(土) – 1.23(金)

【上映時間】
20:10〜21:55 のみ

【会場】
シネマ5bis
大分市府内町3丁目7−7
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp

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