映画の一刻 ~日常とシネマの旅~ 第16便『マジカル・ガール』2016.04.30sat – 05.13fri @シネマ5bis

大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5
メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。
一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。
個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。

そして何より空間が素晴らしい。
そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。

今回の旅は、『マジカル・ガール』
どうぞ、お楽しみください!

大西明美さんへのインタビュー記事はこちら。

 

第十六便『マジカル・ガール』

「映画の一刻」第16便、スペイン行き。
今回、案内する『マジカル・ガール』を、見終わって思った。
タイトル(原題MAGICAL GIRL)に、観客をすでに裏切ろうと魔法、いや「ガール」だけに〈妖術〉がはたらいている!笑

心に闇を持つ人妻バルバラと、余命わずかな無垢な少女アリシア。その周りでなぜか彼女たちの願いを叶えようとする男たち。それが複雑に絡まったとき、全てが思いもよらない方向へ転がりだす物語です。

白血病を患っている少女アリシアが欲しいのは、日本の魔法少女アニメのコスプレ用ドレス。
高価すぎて失業中の父ルイスにはとても買えない値段だった。
なんとか娘の願いを叶えたいルイスは、真夜中に宝石店のショーウィンドウを割ろうと石を手に、振り上げた瞬間、
上から嘔吐物が落ちてきた。
それは上の階に住む女バルバラがベランダから吐いたものだった。
ルイスを呼びとめ、自宅へ誘うバルバラ。。。
…………………………

人生の希望を女たちに捧げてしまったのか、気弱で疲れた男たちが登場し、
(と言って、決して女たちが上位なわけでもない)
映画全体が冷たく薄っすらと闇を孕んでいる、この映画。

スペインは情熱の国ではなかったか。。。
まるで北欧の映画のような雰囲気を持ち、
それでいて陽炎のようにムッとした熱気が背後に揺らめいている感じです。

映画の冒頭、教師は言う。
「覚えておきなさい。完全な真実というのは、常に答えが同じであり、つまり2+2=4なのだ」
どんなに情熱的で熱い国民性があると言っても
(これは日本人がスペインに対しての一般的なイメージかな??)、
闇を内包しているのが人間だと、冒頭から言っているようにも聞こえる。

さらに、
ある日、アリシアが父親に質問する。
「もし魔法が使えたら何がいい」
「私は、誰にでも変身できる。王様になって演説するの・・・・・」

と、映画が始まって10分ほどで私はこの映画の毒に犯され始め、
その濃度が濃いことに、ちょっとびっくり。
さらに物語が進むと、アリシアが主人公だと思っていたのが、
誰が主人公か特定できなくなり、
登場人物に共感するたびに、中心人物が移り変わる不思議な作品です。

スペイン人が日本のアニメをどんな感覚で受け止めているのか、
全然わからないけれど、
魔法少女の異様なキラキラ感が、逆にブラックユーモアを盛り上げています。

異国で味わう日本に、一瞬トリップする一本です。
エンディングロールにかかる美輪明宏作詞作曲の「黒蜥蜴の唄」を、
ピンク・マルティーニ(アメリカのジャズアンサンブル)が
日本語で歌っているエンディング曲は、
なんとも余韻があるので、ぜひ、ここまでは席を立たずに、
じわじわ闇に侵食される気分を味わってください!

 

『マジカル・ガール』
監督|カルロス・ベルムト
出演|ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ルシア・ポジャン
配給|ビターズ・エンド
©Gordon Mühle/ bombero international.
2014年/スペイン/127分
http://bitters.co.jp/magicalgirl/

【上映期間】
2016.04.30(土) – 2016.05.13(金) 2週間上映

【上映時間】
4月30日(土)〜5月6日(金)の上映時間
昼11:50  夕4:20  夜9:05
※5月6日(金)夜9:05の回は休映
5月7日(土)〜5月13日(金)の上映時間
昼1:45  夜8:15
*5月8日(日)夜9:05の回は休映

【会場】
シネマ5bis
大分市府内町3丁目7−7
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp

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