ハッセルで切りとる12ピース「デザイナー越田剛史の解」

高画質で撮れるスマホ、SNSの普及により、綺麗な写真で溢れる昨今。
しかし簡単に撮れるということは簡単に消せる。失敗した写真もスマホを変える時もメモリーがいっぱいになった時も。

「そんな時代にモノとして残せるフィルムの尊さ、面白さを味わってもらいたい。」というのが思いの始まりです。

音楽の世界ではCDが売れず、今やレコードの売り上げの方が多くなっており、ストリーミングとアナログの二極化が進んでいます。カメラ業界でも「写るんです」ブームの再来や一部オシャレ女子の間ではフィルムカメラに注目が集まっています。

そこで選んだカメラはロバート・メイプルソープの愛機であり、月面着陸の時にも使用された中判フィルムカメラの王道、ハッセルブラッド。

誰しもが憧れるカメラではありますが、自分で手に入れるには操作が難しそうというハードルも。実際に重さを実感し、クランチレバーを回し、露出を考え、ピントを合わせ、シャコッというなんとも言えない音でシャッターを切る。
この所作を体感してもらいたい。

そこで大分のセンス溢れる人物にハッセルブラッド500C/Mを渡し、セルフポートレートと自分の大事なモノ、大切なヒト、思い出の場所など自分を形造る12ピースを撮影してもらおう、というのがこの企画『ハッセルで切りとる12ピース』です。

 

第一回目は「デザイナー越田剛史の解」。

 

この企画を投げてから撮影までの数週間にA4両面にびっしりと書かれたメモ。このメモこそ越田君の思考が詰まったモノであり、非常に面白いモノだったのだが、それを12枚の写真からも感じ取ってもらえると思います。

今回使用したフィルム
【Kodak プロフェッショナル リバーサルフィルム エクタクローム E100 120 ブローニー】

 

【トッテ】F4、1/15(Makro Planar 120mm F4 CF)

トッテは自分の職業。と言っても取っ手をデザインしているわけではなくて。真っ平らな板とか金属板だったらただの板で終わってしまうけれども、そこに何か取っ手のような掴めるようなものとかフック的なものが付くだけで、それに対して無意識に掴める、とか真っ平らではなかった時の人の行動を誘発できるのが取っ手だと思っていて、無意識のうちにアクションを起こさせるデザインをしたい。そういうデザインを目指してるので社名でもある事務所のトッテを撮りました。

 

【コマンドキー】F4、1/250(Makro Planar 120mm F4 CF)

Macって言うよりもコマンドキーのところかな。基本Macの何を使ってるかって言うとイラストレーターが1番多くてショートカットキーをめちゃくちゃ使う。そうするとめちゃくちゃそこだけはげてきてる。このMacは2年ぐらい使ってるけど1年位でもうこうなってました。親指は常にそこにある、みたいな。

──越田くんのデザインにはそういう部分あるよね。そのもの自体は撮ってないんだけどそこに何か感じさせるっていう。この写真だったら親指の存在を。そういうことって意識してデザインしてる?

ありがとう。一応、基本的に自分自身は出さないですね。2タイプ、デザイナーもいると思っていて、これはあの人の作品だってすぐわかる人と、そうではなくてそれぞれの案件ごとに最適解を出していく。僕は後者の方で、でもやっぱり癖みたいなのが絶対出てくる。そこはわかる人にはわかると思います。

 

【多視点】F4、1/30(Makro Planar 120mm F4 CF)

仕事もプライベートもそうなんだけど、多視点というのと多中心という思考を大事にしていて、いろんなことをいろんな角度から見るっていう表現をしたくて合わせ鏡のような撮り方をしました。客観性をすごく大事にしていて、いろんな立場に立って考えてみる。それが1番最初にやることかな。

──プライベートもだと疲れない?

自然?それが。撮影は疲れたけど。90度横向いて撮ったりしたから。上下左右もよくわかんなくなってこれが一番不安だった。笑

 

【お尻の相棒】F8、1/500(Makro Planar 120mm F4 CF)

これはねー潰瘍性大腸炎の。

──やっぱ疲れてるんじゃない?ストレスたまってるやん。笑

笑。もうでもね19の時からちょうど20年、体調が悪い時だけだけど。飲み薬もあるんだけど、これはお尻から入れるやつ。

──究極の形状してるよね。

直に入れるためのね。これは慣れないと3秒も持たずにリバースですよ。これをね1時間は入れといてって言われるんやけど、普通の人は無理だと思う。

──熟練の技が必要なんだね。

この子とは付き合いが長いので調子が悪い時はお世話になってます。無駄にかっこよく撮れてる。笑

 

【オフィス】F5.6、1/500(Planar 80mm F2.8 C)

職場ですね。環境的なものも撮っておこうと思って。俗に言うパソコンデスクみたいなのも二台あるんですけどそれとは別に僕はここに座っていつも仕事をしてる。この机は福岡の大川に知り合いのディレクターの方がいて、その方の実家が家具屋さんなので表面図と側面図を送ったら図面を起こしてくれて作ってくれました。

 

【境界線】F2.8、1/500(Planar 80mm F2.8 C)

これは高架下なんですけど住まいと職場の境界線。駅の北側に住まいがあって南側にオフィスがあって。

──北と南に分けたのはモードを切り替えるために?

それはね、高いから南側は。笑。ここは毎日通る場所なんだけど家を出てこの下を自転車でくぐる時に心の中で、最近は無意識的だと思うんだけど、ここを過ぎてからその日のことをしっかり考えます。もうちょっとルーティーン的なことで言うとこの先でモンスターを買います。笑

──帰る時もやっぱりここを通ったらスイッチが切れる感じ?

事務所出るときにはもう切れてるかも。日によっては切れずに家に持ち帰るし。そっか、これは始まりのスイッチでしかないかもなぁ。

 

【通勤車】F4、1/250(Planar 80mm F2.8 C)

これはドイツのフェルトっていうメーカーなんですけど。2011年モデルかな。だからもう長いですね。高校時代からずっとこのロードタイプで当時は2ヶ月に1回はパンクしてて。でも最近は進化したんだね、一切パンクしない。サイクルショップ児玉府内店で買いました。メンテナンスもタイヤ交換以外は自分でしてます。

 

【行きつけ】F8、1/500(Planar 80mm F2.8 C)

考えたんですよ、生活の中で特に常連というかお抱えみたいなお店あるかなぁって。でも何もなくて唯一ここだっていうのが近くのファミリーマートっていう。一番お金を落としてる場所。

──確かにコンビニに一番お金使ってる人、多いかも。

でもハッセルを向けて構えるといつも行ってるファミマなんだけど、スクリーン越しだと何か違う世界。

 

【ポートレート】F11、1/2(Planar 80mm F2.8 C)

ここは生まれ育った場所。左側に家があって今はもう駐車場になってるんですけどその前の通りですね。で実はこの通りのもう1本南側の通りに嫁さんが住んでたんです。

──それは偶然?

中学校時代の同級生なんですけど。当時は知り合ってはいるけどほぼ接点はなくて。ハタチの時の同窓会でベタに再開して。その後に共通の知人の結婚式の余興で集まる機会があってそこで距離が縮まった感じですね。

 

【日曜日】F2.8、1/250(Planar 80mm F2.8 C)

ここは小学校1年生と5歳の息子がいて休みの時にとりあえず時間があったら行く公園ですね。上の子が特に雲梯が好きで。小学校の昼休みもずっと雲梯をしてるらしくって。

──SASUKE目指してるの?笑

雲梯友達がいるみたい。ほとんど喋ったことないらしいけど。黙々と雲梯を。これが唯一プライベートの写真かな。プライベートが子供と遊ぶかアニメを見るしかなくて。笑

 

【ブレーキ】F2.8、1/250(Planar 80mm F2.8 C)

その事業自体をコントロールしていくようなポジションで、いわゆるクリエイティブディレクターという立場で仕事することがあるんですけど、時にそれはやめたほうがいいですよ!ってブレーキを踏まなきゃいけないことがあったりするのでブレーキランプを撮ってみました。

 

【ユニセックス】F2.8、1/30(Planar 80mm F2.8 C)

自分自身のキャラクターの比喩なんですけど。結構ユニセックスが好きで。この靴も男性が好んで履くような靴じゃないかもしれないんですけど。服も背が小さいのもあって結構レディースを買うので、ファッションの面でもそうだし、考え方的にもすごい男性的でもなく女性的というわけでもなく両方の感覚。女性的な服を着てるけどヒゲはガッツリ生えてるみたいな。鏡の写真でもそうなんですけど多視点と多中心っていう考え方はすごく大事にしています。だから女性のクライアントの方も結構多いですね。

──そういう考え方ってもともと?

どうだろう。学生時代かな。デザインの勉強を始めてからだと思う。もともとはなかったかな。

──では最後にハッセルブラッド 500C/Mで撮影してみた感想を。

まず何と言っても緊張感が違う。写りとか言う前に使用する緊張感。1枚を撮るために手順を踏む感じがいいですね。一つ一つのアクションが。撮影するモードに入るというかスイッチが入る。スクリーンを覗いた時の感じと実際に仕上がった写真がかなり近くて、ある意味ミラーレスカメラに近い感じ。ハッセルの存在は知ってたけど実物は触ったことがなかったから、やっぱいいね!フィルムの装填も他と全然違う。一眼もフィルムはあるけど基本オートでしてくれるから自分で巻いてく面白さがいい。そして古さを感じない。500C/Mが出てから50年でしょ?信じられない。去年出ましたって言われてもおかしくないくらい完成されてる。現像を待つまでのワクワク感と明るさとかは不安もあったけど大体狙い通りに撮れてたから良かった!本当に楽しかったです。

 

越田剛史(えちだつよし)
1981年、大分市生まれ。デザイナーとして9年間のフリーランス期間を経て2015年に法人化。現在は広報や体裁のデザインだけではなく、ビジョンや想いを基に事業や戦略を共に考える、「デザイン経営」に力を入れている。県デザイン協会長。

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