映画『世界でいちばん美しい村』石川梵監督トークショー @シネマ5

4月25日にシネマ5で先行上映された映画『世界でいちばん美しい村』の石川梵監督によるトークショー公開!

当日は満席で惜しくも入れなかった人、どうしても来れなかった人、『世界でいちばん美しい村』を観ようと思ってる人はぜひ読んでください!
あ、もちろん映画を観てからでも!!

映画からも伝わってきますが、その口調、声色、しゃべるスピード
終始、優しく、でも現実を突きつけ、問いかけてくるようなトークショーでした。

映画『世界でいちばん美しい村』は4月29日(土)から1週間限定上映です!

 

石川梵監督(以下、石川):今日(2017.04.26)はネパールの大地震があってからちょうど2年目なんです。大分も去年、大きな地震がありましたよね。この映画を大分で上映できることがすごく嬉しくて、この日を心待ちにしてました。一言言いますと『世界でいちばん美しい村』というタイトルですね。多分映画を観る前はなんでネパールの被災地が世界で一番美しいんだろうって思われたかもしれない。でも映画を観た皆さんには意味をわかってもらえてると思います。

岩尾晋作【カモシカ書店】(以下、岩尾):聞き手をさせていただきます、カモシカ書店の岩尾です。私が今日呼ばれたのは3年くらい前にネパールに行ったことがありまして。優しい人が多くて、エベレストが有名ですけど高い山岳に囲まれた美しい国で。私は完全に観光で行ったのでトレッキングしたり、いろんなネパールの人と出会いましたが、ガイドをしてくれた人がラプラック村と同じグルン族の人で2週間くらい一緒にいたんですけど、息子がカトマンズで勉強して観光の仕事に就きたいとか家族の話を聞いてて、この『世界でいちばん美しい村』はちょうどグルン族の話だったので地震の被害はとても近く感じましたし、監督がアシュバドルと出会ってその土地の死生観とか幸福感、普段私たちが見ない景色の中で時代を超えて、場所も超えて、民族も超えて、普遍的な美しさがこのように捉えられるんだなぁと、とても感動した映画でした。

石川:ありがとうございます。

岩尾:監督は地震からすぐにカメラマンとして現地に向かって一番最初に出会ったのがアシュバドルですか?

石川:震災の二日後かな、ネパールへ行ったんですね。国際緊急援助隊とね、同じだったんですよ。一番乗利。一番被害が酷かったのが山岳地帯のラプラック村周辺だったんです。でも誰も行かないの。なぜかって言ったら、危険だから。そんな中で僕はフリーランスなんで、なんとかして僕にしかできないことをやろうと思いまして。一日かけてふもとまで行って、そこから山を登って行ったんですよ。10時間くらい。大分て努力遠足ってあるじゃないですか。その効果か10時間ダーっと登って着いたところがラプラック村だったの。そこで出会った子供達がね、素晴らしかった。特にアシュバドルって本当に素敵でしょ?目、キラキラしててね。僕は虜になっちゃって。で、彼が村を案内してくれたんです。案内してくれながら「こんなことがあったんだよ、こんなことがあったんだよ」って。すごくシャイな子なんだけれども、すごく仲良しになって。

本来僕は映画監督じゃないんです。写真家なんですよ。言うのが遅くなりましたけど。写真家は30何年もやってきたの。じゃあなんで映画撮ったんだろうって思いますよね。それはなんとかこの村を助けたいと思ったの。なんで助けたいと思ったかと言うとアシュバドルが本当にいいヤツで。僕は写真を撮った、これで自分の仕事は終わりだ、って帰れなかったんですよ。映画の中でも出てきましたけど、本当に孤立無援でね、誰も助けてくれない。そん中で何ができるだろう?って考えながらアシュバドルと約束しましたよね。このことを世界に伝える、そして必ず戻ってくる。戻ってくるっていうことは救援活動をするってことなんです。最初、お米を3トンふもとから上まで上げました。そしてモンスーンが来るのでなんとかしようってことでベッドを配ったりして。そういうことをやりながらどうやってこの村と付き合えばいいんだろう?助けていくことができるんだろう?って思った時に映画作りが始まったんですよ。説得力ないですよね。そんな簡単じゃないんです、映画を撮るって。

でも実は写真家になったキッカケは映画を撮りたいっていう、、ますますわかりませんよね。笑。映画監督って実はいろんなことを経験して映画を作るんじゃなくて、多くの人たちが映画大好きで、映画いっぱい観て、ベトナム戦争の映画を観てベトナム戦争の映画を作ったりしてるわけ。それはおかしいでしょ。そうじゃなくて自分で体験した方がいい!っていうふうに考えて、いろんなことを体験したかったんで、写真家になったんです。いつか映画監督になろうって思ってたはずなんだけど忘れちゃってたんですよね。あまりにも写真が面白すぎて。でもこの時にとうとう映画を撮る時が来たか!と思いましたね。アシュバドルが本当に素敵だったから。彼の目線を通して映画を作ったらきっと良いものができると思ったんです。主人公ってアシュバドルでしたっけ?

岩尾:アシュバドルだけとは言い難いですね。

石川:言い難いですよね。アシュバドルを食ってしまうスーパースターが現れちゃって。プナムちゃん。アシュバドルもプナムもとっても優しい子なの。最初の頃はテントで一緒に寝てたんですよ。で、夜中に僕がそっとテントから抜け出して、30mくらい離れてるトイレに行くと必ずムクッと起き出して、僕の足元を照らしてくれる人がいるんです。それがアシュバドル。水を流すためにペットボトルを持って外で待っててくれて。どんなにそっとおっきても必ずやってくれる。テントに帰って寝るじゃないですか。そしたらね、毛布を掛けてくれる人がいるんですよ。優しい人がいますね。誰だと思います?

岩尾:天使ですね。

石川:プナムちゃんがね、毛布掛けてくれるんです。この映画っていうのは登場人物がみんな魅力的なの。プナムもそうだし、アシュバドルもそうだし、お父さんも良い感じでしょ?ボーッとしてて。僕、ああいうお父さん大好き。お母さんはどうですか?なんか叫んでましたよね。だけどすごく優しい人で。みんなとっても素敵なんですよ。あと看護師のヤムクマリさん。あの人が入ることによってこの映画に深みが出たんです。ものすごく内面が豊かなんですよ。生き方も素晴らしい。ある時インタビューをしようとして、ちょっとヤムクマリさん、そこにいてくださいって言って、準備してるじゃないですか。でパッと見たらヤムクマリさんが髪の毛をとかしてて。それがすごいオーラなの。まるで大女優が準備を整えてるみたい。僕は神様のキャスティングって言ってるんだけど。僕が作ったって言うよりも神様がキャスティングしたような素晴らしい人たちが登場人物になってくれたんです。

岩尾:神様が作らせた映画かもしれませんね。『世界でいちばん美しい村』、本当にその通りだと思うんですけど、監督がこの映画のタイトルを『世界でいちばん美しい村』だとその言葉が降りてきた時はどこで、誰と、何をしてたんですか?

石川:最初にラプラック村に行った時に、アシュバドルと日向ぼっこしながらキャンプを見てたの。星の写真ありましたよね。星があってその下にテントがいっぱいありました。あれを見るとなんて素敵なとこだ、と思うじゃないですか。でも避難キャンプですよ?登山に行った時のベースキャンプみたいな。アシュバドルと話しながら、「ここは避難キャンプとしてはね、世界で一番美しい避難キャンプだよ」って言ったのね。その言葉をなんか覚えてて、ずーっと頭の中に浮かんでたんですよ。星がいっぱい出てるポスターがあるでしょ?いかに山と言えどもあんなに星が出ることはないんですよ。あれCGじゃないですからね。

なんで見えるかっていうと地震で灯りが全部なくなっちゃったから。山だから灯りがないこともあるでしょって思うでしょ。ところが街の灯りが遠くにあると空に反射するんですよ。そうすると空があんなに真っ暗にならないの。漆黒のように真っ暗になると星があんなに出てくるんですよ。地震で家が無くなってね、本当に大変な時、言って見れば暗黒ですね。そういった中で彼らの生き方が輝いて見えたの。まるで夜空の星のように。言葉にこだわる必要はないんですけども、「世界一美しい村」っていうこともできるんですよ。でもあえて「いちばん」にしたの。それは僕の主観だから。

岩尾:みんな受け取ったと思います。

石川:みなさん、受け取りました?

ー 拍手喝采 ー

石川:素晴らしい!さすが地元ですね。笑

岩尾:どうしても気なるんですが、石川“梵”監督。作中でボン教という宗教が出てきますが、、

石川:良いとこついてきますねぇ。だから言ったじゃないですか、僕は導かれたんだって。ハニーハンティング、はちみつ採りありましたよね。30年くらい前かな、ここに来たくてしょうがなかったの。ネパールではちみつを採ってる人たちがいるっていう写真を見てびっくりして、いつか来たいと思ってたけど、まさかたまたま来た被災地の村がそれをやってるとは思わなかったんですよ。導かれてるでしょ、ね?最後にガトゥーダンスがあって。すごい神秘的な踊りでしょ?あの子供達は一度もダンスをしたことがないんですよ。初めて踊るんだけども催眠状態になるの。

ラマがね、ラマって僧侶みたいなものなんだけど、呪文を唱えて、目を閉じて、グルグル周り出すの。そして踊り出すんですよ。映画の中ではカットしたんだけども、術を解く時はマントラで「アァっ」て言うとね、女の子たちがバァンって倒れて、パッと目を開けて「あれ、何があったのかな?」って感じなの。凄いですよね。神様がいるんですね、あそこにはね。ここにいるかはわからない。でもあそこには間違いなくいると思う。はちみつを採る人たちも蜂の巣を突いてるから大変なんですよ。だけど、刺されないの。僕たちも遠くから撮影してるんですよ。でも全身完全装備。ヒマラヤオオミツバチって凶暴なのよ。怒ったらどこまでも追っかけて来るんですよ。滝壺に飛び込んでもずっと上で待ってるの。あの撮影ってどうやって撮ったと思います?

岩尾:ドローンですか?

石川:ドローンって評判悪いですよね。でもね映画の世界ではすごく役に立ってるの。あの撮影はすごく難しいんです。今まではカメラマンがロープにぶら下がって撮ってたの。アングルも決められちゃうし自由にいかない。だけどドローンがあるとどっからでも撮れちゃう。新しい映像だったでしょ。最初は蜂が興奮するからダメだって言ってたんですよ。でも大丈夫そうだからドローンを飛ばしたんですよ。そしたらドローンの羽の音がヴゥーンっていうんだけど蜂の音にそっくりでみんな逃げ出しちゃったの。蜂が来たーって。そんなこともありました。だからね、ガトゥーダンスにしてもはちみつ採りにしてもシナリオまでね、神様が書いてくれた気がするの。そして最後に来たのがボン教ですよ。運命を感じましたよ、僕は。

岩尾:運命なんですね!?本名なんですね!?

石川:運命なんですよ!本名なんですよ!浜脇小学校に入る時も王子中学にいる時もいつも「ボン、ボン」と呼ばれていました。

岩尾:偶然だったんですか、、

石川:運命なんですよ、やっぱり。

岩尾:完全にチベットかどこかに行かれてボン教徒の修行をして“梵”になって帰って来た大分県民だと思ってました。

石川:前世はね。笑。“梵”ってね、梵語の梵っていう字を書くの。清廉潔白っていう意味があるらしいんです。恐れ多いね。僕はいつも言ってるんですけども、あれは仮の姿で、本当は煩悩のボンだって。

岩尾:地震から時が経って今現在は避難キャンプはどのような状態なんですか?

石川:心配ですよね?あれからどうなったんだろうか。あの時、村の人たちは下の村にいました。で上にキャンプがあってね。上に行こうか下にいようかって揉めてましたよね。でもモンスーンの時期は上に行くんだって。で去年の10月に上映会に行ったんですよ。まだモンスーンの時期だったの。でもみんな下に居たの。やっぱり彼らの暮らしは下にあるんですよ。これは非常に難しい問題で。彼らがあえてそういう道を選んだのか?あるいは習慣の中で選ぶというよりもなんとなく住んじゃったのか?政府のプログラムでグプシキャンプっていう高台には新しい家をどんどん建てていってるんですよ。将来的には上に移住しなさいっていう命令が出てるんです。今年の10月にまた行くつもりなんですけど。

みんなね、プナムはこれからどうなるの?って気になりますよね?そういうリクエストが多くて。僕はこれで一区切りついたから終わりにしようかなって思ってたんですけど、あまりにプナムが可愛いからね。また通いながら続編を第2作を、でも時間がかかりますよ、プナムが成長するまでだから、結婚するまでかもしれないしね。笑。そんなことも考えてます。プナムはすごく頭のいい子なんですよ。ネパールって昔の日本と同じように女の子は勉強しなくていいんだっていう考え方なんですね。もったいないですよね。だからプナムを私立の学校に行かせたいっていう話をして、プナムの里親になりたい人?って募集したんですよ。1年間で3万円、5年間で15万かかるんですけど、SNSで募集したら5分で集まりました。すごいですね、人気が。実はプナムみたいな子は実はたくさんいるんですよ。あるいは地震で働き場所を失った女の子を助けようっていうことを始めました。プナム基金っていう名前で。去年の10月に行った時にお金を配って、今5人の子供達を助けてます。上映会をする毎に募金箱を設置させてもらっているんですけれども、もっともっとたくさんの子供たちを救いたい。

この映画、本来は支援のために作ったんだけども、彼らの魅力が素晴らしかったんで彼らを知ってもらって、やっぱり支援に活かしたいです。最後にこの映画っていろんなことを語りかけてきます。一番考えて欲しいこと。僕はあえてこの映画で何を言いたいかなんてことは絶対に言いませんから。皆さんがそれぞれの想いを大切にしてほしいんだけども、一つだけ言うとしたら、僕らはいろんなものを持ってますよね。携帯があって家電があって、立派なお家があって、車も持ってる人がいる。だけど彼らは何にも持ってない。だけどすごい幸せそうですよね。なんでだろう?幸せってなんだろう?っていうことを考えてもらいたい。皆さんありがとうございました。

 

 

『世界でいちばん美しい村』
プロデューサー|石川梵
監督・撮影|石川梵
ナレーション|倍賞千恵子
音楽|Binod Katuwal *はなおと*
配給|太秦
©世界でいちばん美しい村制作チーム
https://himalaya-laprak.com

【上映期間】
2017.074.29(土) – 2017.05.05(金) 1週間限定上映

【上映時間】
昼12:00 – 13:56

【会場】
シネマ5
大分市府内町2丁目4-8
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp

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