大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5。
メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。
一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。
個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。
そして何より空間が素晴らしい。
そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。
今回の旅は、『ROMA/ローマ』
どうぞ、お楽しみください!
『ROMA/ローマ』
先日、夕食後に食器の洗い片づけをしていたら、つい手が滑って大皿がガチャンと勢い良くシンクに落ちた。よく見ると割れたのは、大皿の下にあった、私の毎日使うご飯茶碗だった。きれいに3つにパッカリと割れた。
この茶碗は、私が高校を卒業して大学に行く引越しの数日前に、一人暮らしを始めるのにと地元の小さい陶器屋で、母に「好きなの選びなさい」と言われて、(一人暮らしが大人になる感じがして)可愛いのではなくいつまでも使える柄にしようと、白地に薄青色の紫陽花が散らばっているオーソドックスな茶碗を選んだものだった。
あれから30年以上、よく使ってきたものだ。うれしい時も苦しい時も、泣きながらご飯をほうばった時も、このお茶碗だった。
「ついに割れたか、、」とよく見ると、私がずっと紫陽花だと思っていた花柄は、薄青色の桔梗か槿のような花だった。
いつもそばにあって、なんとなく自分と一緒に過ごしてきたのに、空気のように気にも留めず、でも安心できる、そんな存在にハッと気づかされることがある。
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さて、今回、ご案内するのは、今年のアカデミー賞でも話題だったネット配信でしか見られない映画『ROMA/ローマ』です。
舞台は1970年代、メキシコシティの中にあるローマ地区。中流階級の住宅地らしい(イタリアのローマではない)。
ある家族が暮らす家の住み込み家政婦クレオ。
旦那様は仕事で留守がち、奥様も仕事を持ち忙しい。中学生の長男と小学生の次男と長女、まだ学校に上がらない三男(たぶん…映画の中では説明はない)。
この家族の生活を、もう1人の家政婦と一緒に、細々と忙しくこなしていく家政婦クレオの日常が描き出されている。
何気ない会話、何気ない日常の音、時代の空気、風、光。
次々とスクリーンに映し出されるモノクロの景色に、観客が脳内で色をつけていく。
それは、クレオをめぐる、この家族と彼女の人生を、一緒に追体験させる。
この映画は、監督アルフォンソ・キュアロンの子供時代が下敷きになっているという(たぶん小学生の次男かな)。彼は子供時代、家政婦のクレオが大好きだったんだなぁ。
そして、そこで起こったことを子どもながらに体験したことと、大人になってから感じ直したことが、ないまぜになって、この映画に昇華されたように思います。
素晴らしい傑作。
……………
ふとした思い出の品から、あの頃が、空気までよみがえる。
そんな、愛おしくなる作品です。
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さて、ここで「あれ?」と思っている方も。。。
ネット配信の映画をなぜ紹介してるかというと、
GW中、シネマ5bisのスクリーンで見れるからです。
ネット配信で見た人たちの中に、スクリーンで見たいという声が上がったからなのだそう。
そして、
見ていただけると本当に実感するのですが、皮肉にも、映画館のスクリーンと音響で見るべき作品に作り上げられています。
何よりも映画館の空間がこんなにも作品の良さを感じさせてくれます。
ぜひ、劇場で見て欲しい!
『ROMA/ローマ』
監督|アルフォンソ・キュアロン
出演|ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、マルコ・グラフ、ダニエラ・デメサ、カルロス・ペラルタ
2018年 / メキシコ・アメリカ合作 / 135分
https://www.netflix.com/jp/title/80240715
【上映期間】
2019.04.27(土) – 2019.05.10(金)
【上映時間】
4月27日(土)〜5月2日(木)の上映時間
昼2:50 夜8:10
5月3日(金)〜5月10日(金)の上映時間
朝10:00 夜8:30
※5月6日(月)夜8:30の回、休映
【会場】
シネマ5bis
大分市府内町3丁目7−7
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp