大分の中心市街地、五番街にひっそりと佇む小さな老舗映画館、シネマ5。
メジャーな映画ではなく、いわゆるミニシアター系の映画を上映している映画館だが、その映画選びは個性的。
一時期東京でも流行った、ファッション的要素の強いミニシアターではなく、どこか日本の奥ゆかしさを秘めている。
個性的な映画選びだが、ちゃんと幅広い層が楽しめるようにもてなしてくれる。
そして何より空間が素晴らしい。
そのシネマ5副支配人である大西さんにシネマ5&シネマ5bisで上映される映画の中で超個人的にオススメな映画を紹介して頂く、映画の一刻(ひととき) ~日常とシネマの旅~。
今回の旅は、「プロミスト・ランド」
どうぞ、お楽しみください!
第二便「プロミスト・ランド」
さて、第二回目。
1998年、私はシネマ5に働き始めてまだ半年かそこらでした。映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が大ヒットしていました。私自身もこの映画にすごく感動していたし、ものすごく影響を受けたのは確かです。でも、実は私、未だに心から大好きな映画と言えないみたいなんです。
あの頃、私にはちょっとだけ気になる人がいました。彼には彼女がいたし、何をどうしようということは私の中にはなかったけれど、でもちょっとだけ気になる…。ある日、その人が聞いているCDが目にとまりました。そのCDは映画の中で使われている曲を歌ったグループのアルバムでした。みんながこの『グッド・ウィル・ハンティング』に夢中になっている時です。その人ももちろんこの映画に感動していたので、持っていてもおかしくはないけれど、サントラではないCDっていうのが私には引っかかっていて、いや引っかかっているのは彼の彼女が音楽に詳しくって、きっとそのCDは彼女にプレゼントしてもらったにちがいない、ってこと。もらったことが気になったのではなく、”そうか、こんなやり取りがあって、そのやり取りがなんてセンスがいいんだろう”ってことで、そんなことに全然気がつかない自分のセンスの悪さに落ち込んだだけ、ですっ。そんでもって、なんか悔しくって、そのグループのアルバムを探しだして買いました。映画は、そのCDのその曲も手伝って感動的なシーンで終わります。でも、私の気持ちはハッピーになれない(笑)。そんな気持ちをひきずったまま今に至ります。そして、そのCDを聞きながらこの原稿書いてます。
つまらない前置きが長くなりましたが、その映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のスタッフが集結して完成したのがこの『プロミスト・ランド』です。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』と同じ、マット・デイモン主演、ガス・バン・サント監督です。今回も『グッド・ウィル~』のようにマット・デイモンと今回の共演者ジョン・クラシンスキーが脚本を共同執筆しています。(『グッド・ウィル~』の時は、共演したベン・アフレックが脚本を共同執筆しました)ハーバード大学に在学中のデイモンが書いた脚本(当時は本当に若い)『グッド・ウィル~』がその頃のかれらの等身大の物語であったこと、それが今も名作として多くの人に観られている理由の一つだと私は思います。そして今回の『プロミスト・ランド』は40代になった彼の等身大の物語だと言えます。
大手エネルギー会社の幹部候補である主人公(マット・デイモン)が、良質のシェールガスを地下に埋蔵する田舎町に出向き、採掘権を得るために町ごと買収しようとします。近年の不況でどこの田舎の財政も苦しい。そこへやってきて、農家を一軒づつまわり高額のお金を提示して契約を結んでいきます。主人公は、そのことが財政難に苦しむ人々の人生の手助けになると信じています。そこへ採掘に反対する高校の科学教師と環境保護活動家(ジョン・クラシンスキー)が現れ、順調に進むはずの交渉は、市民投票で決められることになっていきます。
自分の生き方、仕事に対する信念、そして人と人との信頼関係。現代社会が今、一番問題だと思っていることを、この作品は考えさせてくれます。お金がたっぷりあって、好きなことができて、好きな人と一緒で、自分自身がいい人間で、そして地球にも環境にも、さらに未来にも”いい”。その全てを望み、全てが叶うことがあるでしょうか?40代になった私は、自分だけが良ければいいと思う生き方を、もう選べない気がします。子供たちの未来や、老いていく親に何ができるのか、未来に何をつなげて行けば良いのか・・・考えました。自分が間違っているときに正しく修正する勇気を持ち合わせていないかもしれない。私自身、そのことにまっすぐに立ち向かえる大人であるかは不安です。でも少なくともこの『プロミスト・ ランド』は、その勇気も元気も、感動も届けてくれました。とってもいいです。ぜひ、観てください。
最後に余談ですが、『グッド・ウィル~』で、心理学者を演じたロビン・ウィリアムズが先日亡くなったのは本当にショックです。残念です。そう、『グッド・ウィル~』から時間は過ぎました。けれど、私たちは変わらずスクリーンの前でちょっと立ち止まって考える時間をもらっていると思います。あの頃の自分を懐かしみながら、まだまだ時間は残っています。あきらめずに成長していきましょう。その先を信じて。
【上映期間】
2014.10.11(土) – 10.24(金)
【上映時間】
2014.10.11(土) – 10.17(金)は
12:05 ~ 14:00、14:15 ~ 16:10、16:15~18:08
10.18(土) – 10.24(金)は
14:20 ~ 16:15、20:50~22:45
【会場】
シネマ5
大分市府内町2丁目4-8
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
オフィシャルサイト http://www.cinema5.gr.jp