Pickup対談。阿南維也×吉川緑の場合。

現在アートプラザで開催されているPickup Artist Exhibition vol.3。 参加作家である阿南維也さん(陶芸家)と展覧会のコーディネーターである吉川緑さんによる対談。
陶芸作家になる前の意外な過去!?や作家としての喜びの瞬間を語ってくれました。

 

吉川緑(以下、吉川):阿南さん、今回は花という事で、、今までの陶芸家の方々の作品は器を見せる事が主で器を並べるというのが多かったんですけど、まさかこう来るとは!?

阿南維也(以下、阿南):ですよねぇ。

吉川:ですよねぇ、って!笑

阿南・yadorigi編集長一尾(以下、一尾):あははは

阿南:凄い考えて、ちょっと考え過ぎたかなっていうとこもあるんですけど、最初の方に1個だけって思いついたのをそのまんま。

吉川:あ、最初に思いついた?

阿南:最初にポッと思いついたのは、この空間に1個、何かを置くっていう。そこから考えて、とりあえず展示台が無いってことから鉄板を探して回って、、で、良い細さのがあったので、それに足を付けてもらって。そこで何か全部固まったような。展示の内容というか。

一尾:このサイズ感も決めてたんですか?

阿南:何となく、ぼんやりとは、、決めてたんです。1個に対して台が凄い大きいっていう。

吉川:お花はどういう基準で?

阿南:花は、無機質なのでそこに差し色というか、ただ有機的な物がほしいなっていう。

吉川:お花っていう変化していく作品って、わざと腐らせたりとか、枯れさせたりすることもあるんですけど、そういう風な考えは無かったんですか?

阿南:それもあったんですけど、思いの外、白い花が元気だった。。

吉川・一尾:あははは

吉川:そうですね。偶然、同じ時期に私も最初の白いお花をラナンキュラスっていうんですけど、家にあって、うちのはもう土曜日くらいに枯れて、、でも阿南さんのはずっと元気でしたよね?

阿南:どうしようって思って。笑

吉川:じゃあ最初はそういう考えもあったんですね。

阿南:ありましたね。それはもうなるようになればいいかなって。

吉川:昨日、突然来てくださって、お花をいっぱい抱えて。

一尾:いっぱい抱えてきたんですね。笑

阿南:そうそう。笑

吉川:で、お花を変えられたので、、

阿南:一応、赤にはしたかったんですね、最終日だけ。それで何本か赤い花を。別に意味は無いんですけど。何となく、思いついたので。白ってちょっとこう冷たいというか、雰囲気になって。それが好きなんですけど、何かそれだけでもダメかなっていう。

吉川:ここで観ても綺麗ですけど、遠くから観た時に赤がこう、ポゥっと浮かび上がってて、とても綺麗です。結構何回も来てくださるお客様が多いので、今日も最終日だから来てくれて。皆さん、気付いてました。お花が違うって。

阿南・一尾:あははは

一尾:これは気付くよね!

阿南:赤いんだもん、だって。笑

吉川:二度見してましたよ。最初に阿南さんにお話を聞いた時に、器を作る時に小さい空間を作るっていう意識を、、その辺の話をもう少し詳しく聞きたいなって思っていたんですが。

阿南:ま、空間ですよね、こういう。空間を作るっていうのはキャンバスを作るっていうかそういうのに近い。感覚としては。その上に誰かが何かを盛るとか。空間でこう頭の中で考えるので、こういうとこ来ても空間で見て、例えばどういう配置にしようかとか。そういう何かをワーって作るっていう時もあったんですけど、今はもう全然、そういうのが無くて、、

吉川:器って、お料理が乗ったりとか、ほぼそうだと思うんですけど。そういうのは意識して作られますか?

阿南:まぁ後付けですけどね。作ってる最中はあんまり何にも考えてないです。

一尾:あの配置は計算ですか?

阿南:色々まぁ考えて、コンクリの繫ぎ目の上に棒が来るように置いたら収まって。

一尾:あの器の位置も?

阿南:あの器の位置も好きなとこ。自分の。

一尾:でもこの壁の縦のラインと台のラインのちょうど真ん中くらいに来てますよね?

吉川:あ、本当ですね。

阿南:何となくこう、地味に合わせた。こうやって。(器をつつく素振りを見せる)何で俺、こんな細かいんやろうって。笑

吉川・一尾:あははは

吉川:作る時って、1個1個に拘ってこう、、

阿南:今は何かもう、とにかく作ってるっていう。

吉川:ろくろでしたっけ?

阿南:ろくろです。

吉川:手捻りとかでは作られないんですか?

阿南:作んないです。ろくろだけ。

吉川:新井真之さんもろくろで坂本和歌子さんも、、

阿南:ろくろですね。真砂さんは手捻り、、

吉川:そういうのってどうやって決めていくんですか?

阿南:自分のこう、合う合わない、、作業自体も。

吉川:手捻りの方が時間がかかりますよね?

阿南:かかるけど、指跡も残ったりとか。本当に人それぞれ。ペースもあるやろうし。

吉川:陶芸を始めたキッカケとかって?

阿南:とりあえず、職人さんになりたいなっていう。で、大学2年くらいの時に「職人になる」っていう本がTSUTAYAにあって。

一尾:いろんな職人が載ってる?

阿南:そうそう。で、パラパラって見てたら佐賀に陶芸の研修が出来るっていうのがあって。あ、ここ行こう!って。陶芸とか知らないけど。それで行ったんです、卒業してから。

吉川:何で職人に?どこが魅力ですか?

阿南:その頃、夜勤で和菓子製造会社みたいな所で働いてて、ずっと同じ作業してて凄い楽だなって。

吉川・一尾:あははは

阿南:向いてるんだろうなぁと思って。でもこれじゃ格好悪いから。職人さんになろうかって。笑

一尾:ずいぶん違いますもんね、響きが。

阿南:同じようなことしてるんやけど。

吉川:大学は確か体育大、、

阿南:あぁ日体大なんです。

吉川:ですよね?日体大では何をされてたんですか?

阿南:スーパーフットボールっていう、ラグビーとアメフトを半々で割ったような。ちょっとマニアックな。

吉川:体育の方には進まなかったんですね。

阿南:体育はもう向いてないなって。まぁ体育か図工が好きで。高校の時って僕らの時代は美術とかってオタクっぽい感じだったんです。今みたいな恰好良いもんじゃなくて。今も結構、オタクが多いですけどね。笑

吉川・一尾:あははは

阿南:現代美術!みたいなのじゃないから、全然。で、横目でチラチラ見ながらスポーツしてて、憧れはあったんだけど。最初は体育に行って、、で、違うと思って図工の方に行ったと。

吉川:ずっとそこ疑問だったんですよ。日体大出てらっしゃるので、何で陶芸なんだろうって思って。

阿南:あははは

一尾:しかも、あんな可愛い作品を!笑

阿南・吉川:あははは

阿南:全然、活かされてない。笑

 

一尾:でも陶芸は結構、力要りますもんね?土捏ねて、空気抜くとこから。

阿南:そうそう。

吉川:阿南さんの知り合いが来たらビックリするんですよ。恒例なんですけど。最初、気付かなくて「どこにあるんですか?」って聞かれて、「ここです。」って言ったら、すっごいビックリする。笑

阿南:大橋さん、会いました?

吉川:私、会ってないんですよ。

阿南:すぐ電話かかってきたもん。大橋さん、凄いツボにハマってましたね。笑

吉川:阿南さんこれ?って。笑

一尾:前にもここで展示した事あるんでしたっけ?

阿南:いや、ここでは初めて。凄いビクビクしましたけどね。吉川さんに怒られそうで。笑

吉川:怒んないですよ!笑。グループ展のいい所って、皆がどんな作品で来るのか。こっちはずっとハラハラして待ってて。で、たまに準備期間に「こういう感じってどうですかね?」とかって連絡があったりすると、そこでちょっと掻き乱されるんですよ。「えっ何、何するつもりなの?」って。

阿南:「やめて~!」みたいな。笑

吉川:でも結局、最初やっぱりオファーする時に過去の作品とか観て、この人の作品はこういうのが多いから、こういう感じの事をしてくれるんじゃないかって思ってオファーをするんですけど、だいたい裏切られる感じで。それがまた凄い良いんですよ。

阿南:作る人って裏切る楽しみみたいなのもありますよね、きっと。

吉川:そうですね。勝さんも言ってたんですけど、期待通りな事じゃなくて「あえて」の事とか。

阿南:今回たまたま場所が入口やったし、森くんの作品が横だったから、絶対シンプルなのがいいなって。

吉川:森さんは大きい作品が多いから。でも本当、ここは良い空間になりました。

阿南:うん、なんかここが広い玄関みたいな。

吉川:そうですね、なんか妙に緊張感がある、、

一尾:あそこだけ空気がピンッとしてて、、

阿南:そうそう。

吉川:会場全体がワイワイっていう感じだったので、そこで締まってて。なんかとても、、ありがとうございました。

阿南:なんか日本刀を置いてる雰囲気みたいな、、

吉川・一尾:あぁ~、そうですね!

阿南:、、なのもあるのかなぁっていう。

一尾:確かに。

阿南:そういうのが好きなんでしょうね。あとは多分、シャイな目立ちたがり屋みたいな。笑

吉川・一尾:あははは

阿南:恥ずかしい屋なのに、、

一尾:最終日だけ赤い花にするあたり。

阿南・吉川:あははは

阿南:作家って多分、そういう性格の方多いと思いますよ。

吉川:あ、そうですね。目だちたがり屋なんだけど、、

阿南:後ろに下がりながらも目立ちたいって。笑

吉川:逆に私なんかはあまり、、

阿南:自分で何か制作はしてない?

吉川:してはいるんですけど、発表は、、したくないっていうか。こう注目されると何か頭が真っ白になるタイプで。。

阿南:大胆そうですけど。

吉川:大胆な時は大胆なんですよ。

一尾:振り切った時が凄い事になりそう。笑

阿南:ねぇ。けん玉の仕方とか。笑

吉川:でも3回も乗ったんですよ!なんか作品を作ると自分をさらけ出すじゃないですか?そういうのがたまに怖くなったりするんですけど、そういうのってどうですか?

阿南:ありますよ、凄い。

吉川:やっぱり、あるんですね。

阿南:今頃あれ観て、すっごい怒ってる人とかいるかなぁって、、

吉川:思うんですねぇ。

阿南:思いますよ、それは。多分みんな。どうでもいいって事はないから、絶対。

吉川:やっぱり反応って気になりますか?

阿南:なります、なります。でも100人ダメって言っても1人が良いって言えば、それで結構、救われる。

吉川:そうですね。

一尾:1人がもの凄い気に入ってくれたら、救われますよね?

阿南:そうそうそう。今回は大橋さんからの電話で、、

吉川・一尾:あははは

阿南:あぁ良かった!って。笑

吉川:なんかそういう風に参加者の皆さんが考えてくれてて、凄い嬉しいです。

阿南:いえいえ。仕事があんまり捗ってません。。

吉川:えー、それは申し訳ありません。

阿南:嘘です。笑。でも3、4年くらい、こういう展示はしてなかったので。仕事ばっかり注文とか個展だと数作んなきゃいけないし。スランプ気味だった事もあって。ちょうど何か良いキッカケになりましたね。

吉川:そうですかぁ、嬉しいです!ポストカードみたい、、

一尾:絵画みたいだよね?

吉川:赤い絵の具を垂らしたみたいな。普段はずっと工房に籠もりっきりですか?

阿南:ほぼ。

吉川:お電話した時にお家の方が出て、家の番号だったんですかね?で、お父様が出て、でも阿南さんだと思ってずっと喋ってて、、笑

一尾:似てたんだね。笑

阿南:違うの!?って?声似てるし。

一尾:外部の情報を作品に活かしたりっていうのはないんですか?

阿南:でも影響は受けますね。

一尾:陶芸作家に限らず?

阿南:あぁそれは色々ですね。どうでもいいような事から、人が何かボソッて言った言葉とか。多分なんでも。そのどれがどの作品に出てるっていうのはわかんないけど。

吉川:じゃあ、逆に小野愛さんのように内的な感情を陶芸に託す事ってありますか?

阿南:最近、そういうのが無かったんですよね。ただ追われて作ってるっていうか。それで粘土触るのも気持ち悪いくらい、、ここ3年とか。

吉川:最初、オファーしたとき迷われてましたよね。

阿南:あぁ迷ってましたね。

吉川:ですよね。で、もうダメかもしれないって思ったんですけど、受けてくださって。

阿南:踏み止まって。ちょっと待てよ、と思って。そうなんです。良かったです。ここも展示した事なかったし。

吉川:良かったと思ってもらえて良かったです!

一尾:それはある程度、予感があったんですか?ここで何かする事によって変化があるかもしれないと?

阿南:何かはしないといけないんだろうなっていうのは。自分にとって起爆剤というか刺激というか。そういのは中々、人からもらえるものでもないし、こういう機会とかって。

吉川:今後はどうしようとかってありますか?

阿南:また現実にとりあえず戻って、、

吉川・一尾:あははは

阿南:いつ何か、こういうことが器に反映していければいいかなって。

吉川:勉強になりました!ありがとうございました!

阿南:ありがとうございました!お互いに良かったです!

阿南維也 Anan Koreya

1972年 大分県豊後大野出身

1998年 有田窯業大学校絵付科修了

有田・宮崎の窯元で修行する。

2003年 大分市野田にて独立し「阿南陶磁器工房」開窯。

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