8月1日までシネマ5で上映されていた「マドモアゼルC ~ファッションに愛されたミューズ~」。
皆さん、ご覧になりましたか?
いやぁ、カリーヌ、すごい人です。御年60にもなろうかという年齢でフランス版VOGUE編集長の王冠を脱ぎ捨て、周りから潰されることも覚悟で新たな夢へと尽き進む。いくつになっても衰えを知らないバイタリティーとクリエイティビティーには驚きと感嘆と刺激と影響を受けまくりました!
という訳で早速、ウェブマガジンYadorigiでもファッション企画が着々と進んでいます!
大分のファッション好きの皆さん、楽しみにお待ちください!
さて今回は「マドモアゼルC ~ファッションに愛されたミューズ~」上映初日に行なわれた、シネマ5支配人の田井肇氏と大分のハイファッションを牽引するセレクトショップのひとつ、cromagnon代表兼バイヤーの石田武司氏のトークをお届けします。
主人公であるカリーヌ・ロワトフェルドやファッション、映画についてはもちろんのこと、ネットやSNSでモノや情報が何でも手に入るこの時代。
映画館やショップが存在する価値についても熱く語ってくれました!
トーク中に出てくる「her 世界でひとつの彼女」は8月2日より、シネマ5で上映開始です。
こんなふうに人を好きになるんだったっけ。と思い出させてくれるような映画です。
長年、恋愛から遠ざかっている人。今、気になってる異性がいるっていう人。ぜひシネマ5に観に行ってみてください!
以下、トークショー
シネマ5支配人、田井肇(以下、田井):まずはcromagnonというお店についてちょっとだけ説明頂けますか?
cromagnon代表兼バイヤー石田武司(以下、石田):はい。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、府内五番街のちょっと奥でメンズとレディースの洋服をパリのブランドから日本のブランドまで一通りセレクトしているお店です。
田井:石田さんの普段のお仕事はどういう?
石田:僕は一応、頑張って社長業をやりつつ、いわゆるバイイングという買い付けですね。
田井:いつもお店にいらっしゃるわけではないですよね。
石田:そうですね。海外も含めて東京と、出張はかなり多いので。
田井:今回も実はなかなか石田さんのスケジュールが合わない、、
石田:すみません、以前も声掛けて頂いたのに、、
田井:ようやく実現できて良かったです。一番最近、海外に行ってらっしゃったのは?
石田:えっと、6月の終わりから7月ですね。パリのメンズのファッションウィークになるので行ってきました。
田井:ファッションショーみたいなものがあるんですか?
石田:そうです、そうです。映画にも出てたと思うんですけども、各ブランドのファッションショーがあり、その後に展示会っていう、、
田井:いわゆるパリコレとかいうのがそう?
石田:まさにそうです。パリコレもメンズ、レディース、その後はオートクチュールと3回あるんですね。
田井:1年間の間に?
石田:1シーズンに3回なんで、年間でいうと6回。
田井:なるほど。春夏、秋冬とかですか?
石田:そうですね。それぞれ3回ずつ。
田井:ほとんど全部いらっしゃる?
石田:いやいや、さすがにオートクチュールまでは難しいんですけど。基本的に2回から4回ですね。
田井:それをご覧になって、「これがいいな」って思って買って来るってこと?
石田:そうですね、ファッションショーっていうのは位置づけとして、そのデザイナーさんのブランドのシーズンのテーマ性を打ち出す場なんですね。1個1個、洋服がちゃんと観れるような環境ではなくて、、
田井:触ったりするわけじゃないですもんね。
石田:座って観ながら何がやりたいのか?とかどういうコンセプトなのかを感じるっていうんですかね。そういう役割でその後にブランドのショールームに行って1つ1つ洋服を観るっていう感じですね。
田井:方向性みたいなものに応じた、それぞれ売れるようなものがあるってことですか?
石田:ウチ(cromagnon)の話になるんですが、実際はショーピース、ショーで使う洋服とコマーシャルピース、いわゆる着やすく落とし込んでような構成にはなってますね。
田井:そりゃそうですよね!大分にファッションモデルのような人がズラズラいる訳ではないだろうからねぇ。モデルの人が着てるものをそのまんまってことはないですよね。
石田:そうですね、、でもブランドやデザイナーによってはショーで出す服はショーだけで一切、販売はしないというスタンスを取ってる方もいますよ。
田井:なるほど。今日ご覧頂いたのは、カリーヌ・ロワトフェルドですか?彼女もほとんどのショーに顔を出してる訳ですか?
石田:そうですね。彼女なんかは本当にVIPで世界の大御所なので。先日、僕もジバンシィというブランドがあるんですけど、cromagnonでも扱ってる。そこのショーでも見掛けたので、出来たら追いかけて2ショットの写真でも撮ろうかと思ったんですけど、速攻ボディガードに連れられて居なくなりましたね。笑
田井:あぁ、なるほど。僕はこの映画でカリーヌのことを初めて知ったんですけども、ファッション界の人なら誰でも知ってるような人なんですか?
石田:そうですね、有名だと思います。
田井:映画で観るととんでもなく偉大な人っていう感じ。
石田:そうですね。こちらでも上映されたと思うんですけど、アナ・ウィンター、米国版VOGUEの現在の編集長ですけれども、彼女とライバル視される位置づけで。
田井:アナ・ウィンターのドキュメンタリー映画「ファッションがおしえてくれること」がありましたよね。ファッションデザイナーのカール・ラガーフェルドや今度シネマ5でも上映されるけれどもイヴ・サンローラン、ココ・シャネルとかは色々あるんですけれども。アナ・ウィンターとかカリーヌみたいな人のもなかなか面白いもんだなぁと。
石田:いわゆるファッションディレクターっていう、スタイリストでもなくて、その雑誌を統括してイメージをまとめていくような仕事ですよね。
田井:ファッションショーっていうのがあるじゃないですか、先ほどおっしゃったようなトレンドというか今年のテイストを表すような服そのものを見せる。それはわかるんですけども彼女たちがやるような雑誌っていうのは重きとしてはかなり大きいんですか?
石田:んーと、雑誌っていうのは商業的な部分が特に大きく関わってくるんですね。いわゆる広告収入でビジネスが成り立ってるので。だから、ぶっちゃけて広告主の影響力云々っていうのが、その雑誌の紙面の中にも、、
田井:広告主っていうのはブランドのことですか?
石田:そうです。純広(告)っていうんですけど、例えばプラダとか色々出てると思うんです。たぶん彼女がCR(カリーヌが創刊した雑誌)でやろうとしたのは、広告は入ってるんですけれども、ちょっとしがらみみたいなものを除いて、よりクリエイティブなものを作りたいっていう意思で、、
田井:映画のパンフレットには「良い映画でした」とかしか載らない。でも映画雑誌ではつまんないっていうのも含めて批評っていうのがあって。色々な視点から観て良いとか悪いとかあるじゃないですか?そういう意味においてファッション雑誌っていうのはあるわけですか?
石田:いや、そうではないですね。否定的な事はほぼ無いと思いますね。やっぱりそのシーズンのお洋服のテーマに沿ってより良く見せようっていう意味合いでしかないですね。ファッションの世界において雑誌で批評とかなんとかっていうのはニューヨークポストだったり、そういうジャーナリズムの強いものになってきますね。
田井:ファッション評論家みたいな人もいますよね?
石田;います、います。おすぎさんとかはファッション評論家とは呼べないと思いますけど。笑
田井:そういうのとはまた違うポジションにいる訳ですね。
石田:そうですね。
田井:雑誌はいろんなブランドを扱っていきながら、現在のファッションの方向性を示していくっていう感じなんですか?
石田:雑誌の方向性によると思いますが、各号でどういうテーマでやろう、というところからモデルを選び、フォトグラファーを選び、、
田井:その影響力っていうのはかなり大きいですか?
石田:そうですねぇ、、今はぶっちゃけて言うとカリーヌが元在籍してたVOGUEとかは、あまりにもコンセプチュアルというかテーマ性が強くて、ちょっとリアルとはかけ離れてるんですよね。
田井:そうですね、こういう洋服着て街角歩いてるっていう写真はないですよね。
石田:そういった意味では今はよりリアルなものの方がというか、リアルな作り込み?つまりリアルな表現の仕方の方が影響力があるかもわからないですね。
田井:雑誌と同じようなことを現実では行なえないような部分があるじゃないですか?そういうのよりは現実的に真似しやすいもののほうが良いと、、
石田:どっちかっていうと、そういうものの方が求められてるような気がします。
田井:石田さん自身はCRとかVOGUEとかお読みになったりするでしょうけれども、どのくらいの重きを置いてるんですか?
石田:それを観て、具体的にこのブランドはどうだとか、このお洋服がどうだっていう風に考えることはまず無いですね。イメージとして、インスピレーションの一つとして、感じるというか、そういった使い方をしてますね、雑誌に関しては。
田井:自分の店の作り方とか何とかに影響を与えるインスピレーションを受けることもある?
石田:ありますね。
田井:そういった部分はファッションショーではないですよね?
石田:そうですね。ファッションショーはどっちかっていうと、そのシーズンのブランドの方向性だったり世界感だったりっていうのが重要なので、より洋服の方にフォーカスしてるんですね。雑誌はテーマ性だったり、もう少しファッションとしてだったりするので、括りとしてはちょっと大きくなりますね。
田井:ということは、それに対して好きとか嫌いとかもあるんですね。
石田:もちろん、ありますね。個人的な意見になりますが。
田井:嫌いだとしてもある種のインスピレーションを受けることも、、
石田:それはもちろんありますね。
田井:僕が知ってるのは、、この映画で初めて知ったんですが。CRとVOGUEくらいしか知らないんですけど、こういう雑誌って他にもいっぱいあるんですか?
石田:ありますね。今は雑誌が売れないっていう時代なんですけど、その中でも彼女達みたいに試行錯誤して何か新しいものを目指そうっていう人がたくさんいるので。これが映画で出てきてたCRの創刊号なんですけど。
田井:表と裏がひっくり返ってるんですね。
石田:はい。いわゆるVOGUEとかいうような既製のファッション雑誌ではなくて、写真集とファッションマガジンの中間のような位置づけを。こういう雑誌が増えてるような気がしますね。
田井:これはいくらくらいなんですか?
石田:CRに関しては、外に置いとくので後でもし良かったらご覧になってもらって構わないんですけど、やっぱり紙質とかプリントの技術がすごいので、、
田井:ちょっとびっくりしたのが、つや消しというか、テラテラしてない、シックなというかねぇ。
石田:そうなんです。雑誌としてはかなり高額で、、7~8千円くらいするんですよね。
田井:これは一般の人も買うの?日本では売ってないよね?日本版CRっていうのは無いよね?
石田:ないですね。これは海外で買いましたから。日本では取り扱いが無いのかな??ま、でも一般の人でも買えますよね。今の時代。
田井:これは半期に1回だっけ?
石田:そうですね、1年に2回。
田井:それを戦争のようにして作っていくんだろうけれど。ま、この映画はあんまりその辺は描かれてないんだけれども、、やっぱり写真家の選択とか、そういうことによって全然違ってくるんでしょうね?
石田:そうですね。それもたぶん、いわゆるファッションディレクターっていう仕事の手腕によって変わってくると思うんですよね。
田井:そういう意味合いにおいての雑誌とファッションショーと、あとどういうものが影響力を持ってるんですか?
石田:今はやっぱりSNSですかね。Facebook、Instagramだったり。いわゆる雑誌が売れなくなってるっていうのはそこで。SNSを使ったスピード感とさっきも言ったリアルさですね。
田井:スピード感っていうのは雑誌というか、トレンドが早く動くということですか?
石田:早く動く訳ではないんですが、SNSの情報は早いですよね。CRの場合は半年かけて、やっとこの形になる訳ですから。
田井:半年前に撮った写真かもしれないですもんね。
石田:そうなんですよ。それがSNSでは瞬時に世界中に情報が広がるので、、
田井:確かに。Facebookとかタダで見られますもんね。」
石田:個人が発信していて広告とかスポンサーがいる訳ではないので、やっぱりよりリアルっていうところもあるかなと。
田井:本音みたいな。
石田:そうです。だから読者モデルが人気なのも本当のモデルさんよりは、自分達に近いリアルさがキーワードだと思いますね。
田井:そっちの方が求める人が多いということですか?
石田:そういう傾向にある気はしますね。
田井:そうするとファッションっていうのが、僕なんかは疎いけれども何かこうちょっと敷居が高いというか、そういうような部分ってあるじゃないですか?それが無くなってくる訳ですかね?
石田:そうですね。敷居が高いですか?ファッションって。笑
田井:いや~どうかなぁ。敷居が高いのかお値段が高いのかわかんないけども。笑。でもオシャレしろって言われた時に、きちんとしようとかはあるけれども、それが自分の表現になるとかね。そういうことになるとたどたどしくなるかなぁ。
石田:なるほどですね。
田井:服に着られるっていう表現があるじゃない?あぁなりやすいっていうのがあるですね、僕らなんかは。そういうとこから敷居が高いっていうイメージはどこか持ってしまいますね。お隣がマルジェラだから、たまに見せて頂くけれども自分が着ない範囲でいえば、すごく目の保養になるなと思います。でもそれがね、自分が着るなんてことになると全然イメージ出来ない、、
石田:そうですかぁ。僕なんかはこの仕事に関わってるのであれですけど、まぁちょっと頑張って買って、その洋服を着たと。それだけで気分が高揚したり、街の風景が変わって見えたり、人生が豊かになると思います。
田井:そういうのは大事ですよね。情報もネットで入るし、検索したらもっと安いのがあるかもしれないし、平場へどんどん降りて行ってしまうと、自分のテンションを上げるとか、ある意味、自分でない、しかしながら自分が目指してる人間の方向へ押し上げるというか、そういうことが無くなってしまいますよね。そういう意味ではあってもいいなって思うんですよね。一方、シネマ5ではしち面倒くさげな映画があるけれども、、
石田:あるんですか?笑
田井:僕が言うのもなんだけれども。笑。でもすごい良い映画があるわけ。よくわかんなかったりする映画ってあるじゃない?僕もわかんないんだけれども、そのわかんなさに触れてるってことの格好良さというかさぁ。とりあえず、触れてみる。で、それが「そっか、こういうことかもしれないな」ってわかるのはずっと先かもしれないけれども、その時に触れてみることの意味というか大切さってあると思うんですよね。今わかんないからもう観ない、わかるものだけ観てしまうと自分を押し上げられない。そういう意味合いにおいて映画ではわかる部分があるんですけれども、ファッションとなるとなかなかねぇ。
石田:感覚的にはそれに近いと思うんですけどね。洋服を身に纏うことによって、何かわからないけど高揚してテンションが上がってっていう。
田井:石田さんたちのお仕事っていうのは、ちょっと自分を押し上げてみたいし、チャレンジもしてみたいんだけれども、どのようにすればいいのかわからない人たちと洋服とを結びつけていくようなお仕事でもあるんですね?
石田:そうですね。そういう要素はあると思います。
田井:僕なんかも映画に関していえば、そういう役割というか、、「いやいや俺もわかわんけど、この画面だけはすごい綺麗だったろ?」とか、そういう結びつけ方があるじゃないですか?その映画に描いてるのは日常じゃないけれども時折、自分の中で死んでしまいたいようなのを感じることがあったり。「そんなことをちらっと感じることがあるよね?この映画で。」とかさ。そういうようなことと同じなのかな?
石田:近しいところはあると思いますね。
田井:でもファッションのもう1つの敷居の高さの話をするとコーディネーションというか、全てが揃わないとダメじゃないかなっていう気がしちゃうわけ。つまり、「このシャツいいですよね!」ってお金とも相談して買っても、それじゃあ持っている服とのバランスを欠いてダメじゃないの?っていうイメージが湧いてしまう訳です。とは言え、「靴はこれで、パンツはこれで、髪型はこれです!」って言われると全然違うことになって自分らしさはどこに行くの?っていう。
石田:なるほど。だけど、そういう体験の中から、本来の自分らしさっていうのは出てくると思うんですよ。そういうことの積み重ねの中から。
田井:なるほど。じゃあそういうことに、ちょっとずつチャレンジしていけばいいわけ?
石田:そうですね。田井さんがおっしゃったように、例えばシャツだけを買ってもどうやって着たらいいかわからないっていう人はたくさんいると思うんですけど、そういったことのお手伝いをするのがcromagnonっていうお店だったり、そこで働いてくれてる子たちの仕事なので気軽に相談してもらえれば。
田井:なかなか気軽にっていうのも難しいんですよね。「お前の感性はこんな程度か!」って見られちまうんじゃないかって、、
石田:いやいやいや。笑。それはないですよ!
田井:その人その人の個性というか、、
石田:と、いろんな洋服を見てきた中で、「こういうものがオススメです!」と。「あなたにはこういうものが似合いそうです。」とか。まずは、いつもの着ているコーディネートにも似合うアイテムでしっかり提案をしていきます。
田井:鏡見るのが嫌いだからなぁ。笑
石田:そうなんですか。笑
田井:まぁ私のところも映画館をしているけれども実際、映画ってDVDでもBlu-rayでも観られるじゃない。でも、お金払って、時間も合わせて映画館まで行かなきゃいけないのに、どう打ち勝っていくかっていうテーマがあったりするんですけど、、
石田:僕らも同じですね。
田井:その辺はどういう風にお考えですか?
石田:使い分けてると思うんですよね、皆さん。その流れっていうのは止めようがないし、映画もDVDやBlu-ray、今やネットでクリック1コでレンタル出来るようになってて。僕らの世界も海外のサイトでも買えるし、朝の5時にハッと思っても、いつでもどこでも買える時代なんですね。昔と違って。それはそれで抗えない流れだと思うし、進化の過程だと思うんですよ。だからより僕らがやってるお店にしてもそことは違うリアル。現実としての人と人との繋がりだったり、、
田井:リアルだけれども、異空間みたいな感じ?
石田:ひょっとしたら映画でありましたように夢を見てもらうような空間だったり、演出も必要なのかもわからないなと思います。
田井:お互い店を構えてね、近所でやってるわけだけれども。映画でいうと体験してもらったらわかるっていうのがあるんですよね。でも体験してない人にそれを伝えるのは大変、難しい。
石田:難しいですね。
田井:だからファッションは敷居が高いと言ってるけど、実際シャツを着るとかパンツを履くとかって、やってってみると「あっこんなウキウキするのか!?」とか体験するとわかるのかもしれないね。それを「こんな風にウキウキするよ!」ってどんなに口で説明しても、体験する以前に伝えづらくないですか?
石田:それが一番難しい仕事ですよね。
田井:石田さんとかは単純に格好良いじゃない?だから、「こういうのお似合いですよ!」とか言われてもさ、「あなたなら大丈夫だけどさ」っていうイメージになりやすいわけ。
石田:それはたまに叱られますね。笑
田井:笑。格好悪くなれって言ってるんじゃないよ。
石田:ただ、格好良いとか悪いとかは主観であるから、僕は田井さん十分、格好良いと思いますよ。
田井:何を言うか!?笑
石田:煽てあってもしょうがないんですけど。笑
田井:映画の話に戻るけど、この映画の中でね、石田さんが「あっこれって今まで知らなかったな」とかね、興味深いなって思った部分てありましたか?
石田:知らなかったな、、
田井:それはない?
石田:興味深かった点っていうのは、この映画は完璧にCRっていう雑誌の立ち上げから制作に至る過程に密着してたじゃないですか。物を作っていくことに対するパッションとかに触れられたことは良い刺激になったし。あとはやっぱりカリーヌ。59歳ですよ!孫も生まれてお婆ちゃんなんですよね。その彼女が12cmのピンヒールを履いて今だ現役で新しいことにチャレンジしている姿はとても興味深いし、刺激を受けましたね。
田井:僕はねぇ、映画として考えると作り手はもうちょい、意地悪というか、もっと突っ込んでってほしいなっていうイメージを抱きましたね。
石田:ある意味プロパガンダ的な要素が強い映画だなとは思いますけど。
田井:ふっと、たまたま撮れちゃったなっていうショットが割と無くて、一度カリーヌに見せて全部OKを戴いた映像みたいな、、
石田:それは否めないですね。
田井:感じがちょっとあったじゃない。我々としてはそうじゃない、ちょっと違うところが観れたらな、と映画としては思いましたけどね。
石田:ただ彼女個人を何か感じてもらうドキュメンタリーとしては面白かったかなぁと。
田井:こういうデザイナーとか裏にいる人たちが脚光を浴びてくるっていうのは、1つはファッション全体も疲弊しつつあることの裏返しかなと思うんですよ。表にファッションそのものがあれば平気なわけじゃない?
石田:そうですね。
田井:映画で言っても、映画があれば十分なのに、それ上映してる映画館の支配人の話が付いてるとか、そんなしょうもないことでもバックアップしなければならなくなっちゃった映画はね、そもそも疲弊してる状況の裏返しになってるような気がするんです。
石田:まぁより複雑化してるんだろうなとは思いますね。
田井:映画の場合はそうなんだけど、お尋ねしたいのは、ファッションっていうのは王道っていうのがあるじゃないですか?メインストリート。メインストリートっていうのがあって、それに対する、カルチャーに対するカウンターカルチャーみたいな、そういう位置づけがあると思うんですけれども。映画はね、今や王道を失いつつありますね。王道を失って、いわゆる異端というかカウンターカルチャーにあたるようなものが時として王道のように見えたりというようなことが起き始めている。
石田:例えば、カウンターカルチャーの方が王道に飲み込まれてるようなっていうことでは?
田井:映画の場合はちょっと違うかなぁ。映画は王道の方がやっぱり疲弊してますね。ファッションっていうのはメインストリームがしっかりあるという感じですか?
石田:ありますね。ただやっぱり、それに対してカウンターカルチャーだったり、いろんな物が出てきてるっていう状況ですね。
田井:じゃあ豊かになってきてると言えば豊かなんですか?
石田:豊かという言葉を使えばそうですけど。さっきも言いましたけど、より複雑になってきてるっていう捉え方、、
田井:細分化されてきてるということ?
石田:そうですね。
田井:それに全般的に対応していくのも大変じゃないですか?
石田:大変ですよ。笑
田井:映画は完全に王道を失ってるので、いっぱい個別に存在してるわけです。それを束ねてみる羅針盤みたいな物。いわゆる雑誌でもいんですけど、そういう束ねてくれる物がだんだん無くなってきちゃってる感じになってるんですね。非常に細分化してて、例えばアニメを観る人はアニメのことにすごく精通してて、めちゃくちゃ知ってるんだけど、その他の物は全然知りません!とか。オールラウンドがなかなか出来ない感じなんですね。
石田:よりコアになってるというか、、
田井:おっしゃってたようなSNSとかも関係してる、、
石田:してますね。僕らの世代でもそうなんですよ。結局、SNSの世界っていうのは好きな物だけをずっと追い続けられるんですよね。でも雑誌っていうのは広告もあるし、ファッションにしか興味ないのに食べ物のページがあったり、いろいろあるじゃないですか。SNSの中では、こういうファッションが好きっていうのがあればそこだけをずっと追っていける。その代わり、すごく視野が狭くなっていく部分もあるかもしれないですね。
田井:映画館もお店もそうかもしれないけど、要するにSNSは今おっしゃったようにコアなとこをどんどん掘っていける、しかし今のところ自分にとって興味のない物に全然、出会えない。興味のある方向にしか出会えない。お店とかだと興味のある物を目指して行ったとしても、たまたま目に入ったこっち、みたいな偶然の出会いがある。興味がなかったのに何となく目に入った物であったり、店員さんに「こっちはどうですか?」と声を掛けてもらうことによって初めて拓かれる可能性があるけれども、そういうのがSNSでは割と閉ざされていて。興味っていうのは、生まれてからずっと興味があるわけじゃなくて、どっかで何らかの偶然の出会いから興味に発展していったと思うんです。今後もその可能性はいくらでもあるはずなのに、あるところばかり掘っていくと、それに出会えなくなりますよね。
石田:その危険は十分、孕んでますよね。「好きな物しか食べません!」みたいな。
田井:好きな物しか食べなくて、好きな物の良い意味の情報しか取りませんっていうことも出来るわけですよね。
石田:そうですね。そういった意味で映画館であったり僕らのお店であったりっていうのは大事な、、
田井:お互いちょっと褒め合ってるけど。笑
石田:機能しなきゃいけないんだろうなって思いますね。幅が広がったり。
田井:今日、お見えになってる方で、ファッションファンというわけではなくて普通の映画ファンという人でも、石田さんの話を聞いてファッションに興味を持ってくれたりね。いろんな広がり方っていうのが、映画館やお店だったら、そういう偶然の出会いがあり得るんではないかと。逆に石田さんがお店でお客さんに、『「her 世界でひとつの彼女」(8月2日(土)より上映開始)っていう映画を今度シネマ5でやるらしいけど、パリから帰る時の飛行機の中で観たよ!』とか言ってくれたりさ。つまり映画に興味がある人は映画しかなくて、ファッションに興味のある人はファッションしかないっていうわけじゃない。いろんなことに興味があったり、社会問題に興味がある人もいるかもしれない。そういうのをある意味、担ってなきゃいけないなというのがあるんです。映画のことは知ってるけど、あとは全然知りませんっていう訳にはいかないじゃない。そういうことが我々に課せられてるのかなぁとは思いますね。石田さんがこんなところに出てきて喋るなんてことはそうそうないでしょ?
石田:ないです、ないです。人前で喋るのは何年ぶりだろう?っていうくらい。笑
田井:こういう気さくな方なのでcromagnonに立ち寄って頂いて、ねぇ。「あたし、どんなのがいいかしら?」って聞いてみるのもよろしいんじゃないかと。
石田:はい、ぜひ。
田井:cromagnonと、うちのお隣のマルジェラもやってらっしゃる、、
石田:はい、そうです。たくさんお客さんもご紹介頂いてる、、
田井:いや、紹介と言っても場所を言えるくらいで。笑。我々にとってはリアルな体験を通して、もっとみんなが日常からちょっと離れた楽しさというか、Happyな気持ちになれるようにやっていきたいなと思ってます。今日は本当にお忙しい中を、ありがとうございました! さっき石田さんのノートを見たらすっごいメモが書いてあって、そんなに一生懸命になって頂いて申し訳ない、、
石田:いえいえいえ。
田井:ということで、これにてトークショーを終わりたいと思います。今日は大変、ありがとうございました!
石田:ありがとうございました!
【上映期間】
2014.08.02(土) ~
*8月9日(土)より上映時間変更
【上映時間】
朝10:20~12:35 昼3:30~5:45 夜6:00~8:15
【会場】
大分市府内町2丁目4-8
TEL 097-536-4512 / FAX 097-536-4536
【オフィシャルサイト】
【営業時間】
12:00 – 20:00
【住所】
大分県大分市府内町3−7−29 1F&2F
【お問い合わせ】
097-513-3607
【オフィシャルサイト】